2019.06.24

連載企画:『継承者』〜創業の原点を考える〜 その1

豊田喜一郎と創業メンバーの名前が掲載されたボード

「この自動車が今日ここまでになるには一技師の単なる道楽ではできません。幾多の人々の苦心研究と各方面の知識の集合と長年月に亘る努力と幾多の失敗から生まれ出たのであります。」

このメッセージは、豊田喜一郎と創業メンバーの名前を掲載したボード(上記写真)に記されたものだ。2018年8月、喜一郎の米国自動車殿堂入りを報告する式典で掲げられた。



「トヨタらしさを取り戻すための闘い」。ここ数年、社長の豊田が繰り返す言葉だ。

ある懇談会で、豊田に対して、株主の方からこのような質問があった。
「私たちから見れば、トヨタさんは、トヨタらしい会社だと思うのですが、豊田社長が『取り戻す』と言われるのは何故ですか?」

今年の株主総会。豊田はこのように述べている。

 モビリティ・カンパニーに向けたフルモデルチェンジは、私の在任期間中にできるものではないと思っております。しかし、トヨタらしさを取り戻すこと、トヨタらしい企業風土・文化の再構築については、何としても、私の代でやりきる覚悟でおります。

 今の私の気持ちを正直に申し上げますと、「トヨタらしさ」を取り戻すということはこんなにも難しいことなのか、平時における改革がこんなにも難しいものなのか、ということを痛感する毎日でございます。

 今年の決算発表の場で、「生きるか死ぬかの闘いの中で、トヨタが死ぬのはどういう時か?」というご質問に対し、私は、「トヨタは大丈夫だという意識が社内に蔓延した時」とお答えいたしました。

『危機感をあおりすぎではないか』という声がありますが、私が社内に伝えようとしているのは「危機感」ではなく、「価値観」です。

 喜一郎をはじめ、トヨタのリーダーズは、「お国のために」、「お客様のために」、「自分以外の誰かのために」という気持ちで、もっといいクルマづくりに愚直に取り組んでまいりました。

常に「何のためにやるのか」を考え、「ベターベターの精神」で、やり方を変えていくことは、トヨタ生産方式(TPS)の精神そのものであり、トヨタがずっと大切にしてきた「価値観」です。そもそも、「常にもっとよいやり方がある」と考えている会社に「大丈夫」という概念はないはずです。

この「価値観」を取り戻すことが、私の言う企業風土改革であり、「トヨタは大丈夫」という慢心を取り除くことにもなると考えております。

豊田章男社長

豊田が言う「トヨタらしさ」とは何か。
トヨタは何を取り戻さなければならないのか。
そこに迫りたいと考え、トヨタイムズでは、豊田と関わりの深い方々にお話を伺わせていただいた。インタビュー連載「継承者~創業の原点を考える~」と題し、本日から5回にわたって、その内容をお伝えする。

1回は、豊田が「私の教科書」と語る伊那食品工業株式会社の塚越寛・最高顧問