カーボンニュートラルの実現に向けて挑むスーパー耐久シリーズ。参戦2季目の水素エンジン技術の"進化"と仲間づくりの"深化"を総括する。
2022年スーパー耐久シリーズ(S耐)最終戦(第7戦)が11月26~27日に鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で行われた。ROOKIE Racingの2台の車両、水素エンジンを積んだGRカローラ(水素カローラ)とカーボンニュートラル燃料で走るGR86は無事完走を果たし、2022シーズンは幕を閉じた。
カーボンニュートラル社会実現に向けた取り組みをレースで加速させるS耐参戦。「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」と「仲間づくり」について、トヨタイムズでは、2回に分けて総括する。
1本目は水素カローラについて。
2シーズン目を終えた未来をつくるためのレース
ルーキーレーシングのチームオーナー、モリゾウこと豊田章男は最終戦の朝礼で、このようにチームに声をかけた。
豊田チームオーナー
このチームは、クルマ好き、運転好き、クルマづくり好きがカーボンニュートラルに取り組むとこういう形になるということを行動と発言で示してきてくれたと思っています。
この戦いはまだまだ続いていきますが、この6戦だけを見ても、一戦一戦重ねる度に仲間が増えてきたし、ずっとやってくれているメンバーも自分の技能を高めてくれた。一人ひとりが貢献してくれたと思っています。
今シーズン、水素カローラは出力が7%、トルクで5%、航続距離は15%のアップ。昨年のデビュー戦と比較すると出力は24%、航続距離は30%向上。異常燃焼(プレイグニッション)抑制技術も着実に向上させ、決勝レース中のプレイグ発生頻度は、開幕戦から半分以下に抑えられるようになった。
GAZOO Racingカンパニーの佐藤恒治プレジデントは「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」についてこう話した。
佐藤プレジデント
クルマを限界の状態で使うことで課題を早く出す。そして、その対策を(次のレースに間に合わせるため)アジャイルに進める。
機能で分かれている通常の組織からすると、モータースポーツの現場はチームとして、ひとつにならないと何も動かないので、仕事の仕方も圧倒的に変わります。そういう働き方の変革や課題を出して対策するので、スピード感は大きく上がっています。
(カーボンニュートラルという)大きな目標に向かって、流れを一気につくり出したいタイミングなので、そういう意味では大きな効果を挙げていると思います。
単純なクルマの技術開発であれば、ラボ(研究室)でもできますが、(S耐で)水素社会実現に向けた大きな実証実験が進んでいます。
「つくる」とか「はこぶ」についても、モータースポーツの現場で連携が生まれて、リアルなテーマが投げ込まれないと進みません。これは研究室の中ではできません。
実証実験が大きく進んでいるのは、モータースポーツを起点とした取り組みがあったからだと思っています。
このS耐での取り組みにより、通常3~4年かけて行うモデルチェンジクラスの開発が1シーズンでできているという。水素カローラの開発は、モータースポーツの現場で、驚異的な速さで進んでいる。