「スーパー耐久」第1戦(鈴鹿サーキット)を徹底取材。カーボンニュートラル燃料で挑む各選手の意気込みや今シーズンの見どころ、さらにはライバルチームにも突撃!
スーパー耐久ST-Qクラスに2台が参戦
耐久レースの国内トップシリーズ、スーパー耐久は今年は全7戦が予定されている。走るのは市販車ベースのクルマで、排気量や改造範囲などを基準にクラス分けされているが、注目はメーカー開発車両が参加する「ST-Q」のクラスだ。
ST-Qクラスに参戦するトヨタ車は、ORC ROOKIE Racingの2台。昨年に続くカローラスポーツをベースとした水素エンジン車両と、バイオマスを由来とした合成燃料を使用する新型GR86で、どちらもカーボンニュートラルの未来に向けた技術開発に貢献している。
番組では、鈴鹿サーキットで行われた第1戦を森田キャスターが現地取材。ピットからドライバーたちの生の声を届けたり、意外な人が後ろに映り込んだりと、臨場感たっぷりのリポートが届けられた。スタジオでも、各ドライバーのキャッチフレーズなどを紹介した。
2年目の水素エンジン、進化を担う4選手
昨年5月にデビューして4戦を走った水素エンジンカローラ(32号車)は、2022年さらに進化。昨シーズンの良いところを使いつつ、航続距離を延ばす方向にアップデートを続けている。
ドライバーはA~Dの順に4人。Aドライバーの佐々木雅弘選手は、自分のクルマにカスタマイズを重ねるなど、こだわりが強く「妥協しないエース」とチームメイトに評される。
Bドライバーはモリゾウ選手こと豊田社長。昨年はCドライバーだったが、速さに磨きをかけて予選アタッカーを任される立場に。今回の予選では、佐々木選手のアドバイスを受けて、ベストラップからタイムを縮めた。
Cドライバーの石浦宏明選手は、2015年と17年のスーパーフォーミュラのチャンピオンで、40歳だが4人の中で最年少。Dドライバーの小倉康宏選手は小倉クラッチの社長で、モリゾウ選手とは“永遠のライバル”として競い合っている。
カーボンニュートラル燃料で挑むGR86
今年から参戦するGR86(28号車)は、片岡龍也監督が車両とドライバーを紹介。燃料には、CO2の排出量がプラスマイナスゼロになると考えられているカーボンニュートラル燃料(CO2と水素、バイオマスなどに由来する成分から合成)を使用する。
ドライバーは個性豊かな4人。Aドライバーの蒲生尚弥選手は寡黙な性格だが、繊細なドライビングで実績も豊富。Bドライバーの豊田大輔選手は「プロドライバーが言っていることと、トヨタ自動車の評価ドライバーが言っていることと、若干のコミュニケーションの言語が違ったりする部分があります。通訳というとおこがましいですけど、そういったことを伝えるのが自分の役割の一つ」と話す。
また、「短い走行時間の中で的確なフィードバックをチームにしていきたい」と話すCドライバーの大嶋和也選手。Dドライバーには普段はユーザーを想定した車両の総合評価をしているトヨタ自動車の社員、鵜飼龍太選手がいる。
ライバルチームには、あのドライバー?
GR86にはライバルがいる。スバルのBRZ(61号車)で参戦するTeam SDA Engineeringだ。GR86と同じくカーボンニュートラル燃料を使っているが、スバルのBRZ(61号車)は市販車両と同じ2.4リットル自然吸気エンジンであるのに対して、トヨタのGR86は1.4リットルターボエンジンに載せ替えてる。つまり、エンジンとクルマの差で競うガチンコ勝負だ。こちらのピットにも「森田カメラ」が潜入した。
ドライバーは、昨年のスーパーGTのGT300クラスでチャンピオンの井口卓人・山内英輝の両選手と、社員ドライバーの廣田光一選手。昨年までROOKIE Racingでスーパー耐久に出場していた井口選手は「ライバルと切磋琢磨することで、よりいいクルマができて、未来につながっていくという挑戦なので、ワクワクしています」と、GR86への対抗心を見せた。
さらに、「僕たちの目標は、BRZをいいクルマに仕上げて、後半戦でモリゾウさんにぜひ乗っていただきたい!」と井口選手。この発言を聞いたモリゾウ選手は喜んでいたそうだ。
初戦の鈴鹿は2位、5位と健闘
鈴鹿の耐久5時間のレースの結果は、2位がGR86、3位がBRZ。周回数が同じ115周で、その差はわずか63秒と白熱した争いとなった。レース後のインタビューでは、両チームのドライバーたちがお互いの健闘を称えあう様子も見られた。
豊田大輔選手は「同じところにいる2台で戦うというのがドキドキで、モータースポーツってこういうものだったなと改めて思い出すし、ここからさらにカーボンニュートラルと技術開発とを加速できるといいなと思います」と語った。
水素カローラは5位で97周。昨年9月の鈴鹿戦よりも7周多い周回数を記録した。11月の最終戦も同じ鈴鹿で5時間走るため、どこまで航続距離を延ばしていくのかが注目される。
モリゾウ選手は「周回を重ねるごとに気持ちいい走りができた。去年の24時間レースに比べると(今はしっかり)レースができている」とコメント。佐々木選手は「モリゾウさんが速く進化しているので、クルマも僕らも進化していかなきゃいけない」と話していた。
6月は富士24時間耐久レース
スーパー耐久の次戦は、いよいよ24時間の大一番。6月3日から5日まで、富士スピードウェイで開催される。水素カローラは登場から1年でどこまで進化したのか? GR86とライバルの対決がどんな展開を見せるのか? そして放送部の24時間密着取材は実現するのか? ますます目が離せそうにない。
毎週水曜日12:00からYouTubeで生配信しているトヨタイムズ放送部。次回(2022年3月30日)は、新リーグの開幕戦を28日に迎える女子ソフトボールを特集する。ゲストに五輪で2度の金メダリストとなった峰幸代さんが出演の予定。ぜひ、お見逃しなく!