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次期GR86? 市販モデルの開発最前線 S耐最終戦 鈴鹿

2022.12.28

次期モデルのあるべき姿とカーボンニュートラルへの選択肢を増やすため、スーパー耐久シリーズに参戦するGR86。今シーズンの戦いで見えたその理想形とは?

2022年スーパー耐久シリーズの最終戦を取り上げる総括後編。今回は、カーボンニュートラル燃料で走るGR86に焦点を当て、この1年の進化を伝える。

カーボンニュートラル燃料を“つかう”仲間が良きライバルに

2022年シーズンは、2021年シーズンの最終戦で加わったMAZDA2に加え、開幕戦からSUBARU BRZが参戦。カーボンニュートラルへの選択肢を増やす仲間でありながら、ライバルとしてレースを盛り上げた。

良きライバルとして戦うGR86とSUBARU BRZ 撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY

水素カローラと同じST-Qクラスに参戦するGR86BRZは、単に速さを競うだけではなく、次期市販車モデルのあるべき姿を模索するために参戦を続けている。

GR86はGRヤリスのエンジンをベースに開発した1.4Lのターボ、BRZのエンジンは量産モデルと同様のNA(自然吸気)の2.4Lの水平対向エンジンで参戦した。

ターボは自然吸気エンジンの1.7倍と換算されるため (1.4L x 1.7=2.4L)、これらの2台は同等排気量の対決ということになる。

いじり倒せる最高のモータースポーツ車を目指す

GR86が現行モデルと異なる小排気量ターボでレースに挑む理由について、7月のスポーツランドSUGO(宮城県村田町)で行われた第3戦で、GAZOO Racingカンパニーの佐藤恒治プレジデントはこのように説明していた。

佐藤プレジデント

マスタードライバーである豊田章男は86の一番のファンです。そこで期待していることは、クルマを曲げる、操る楽しさ。次の新型があるとすれば、それを今のモデルよりも、高めたいということです。

そのために、もっとステアリングに対して(車両が)機敏に動くようにしたいと思い、エンジンを小さくし、フロントを軽くしました。

そうするとハンドルを切ったときのクルマの機敏さが全く異なります。そんな86があったらどうだろうと考え28号車のGR86をつくりました。

撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY

しかし、前は軽くはできたものの、大きな諸元を一気に変えたため、ブレーキのコントロール性に課題があり、一部の条件下だけで速いクルマになってしまいました。

GR86はそういうクルマじゃなく、多くの人に楽しく乗ってもらえるクルマにしたいので、いろいろなシチュエーションで、しっかりブレーキをかけて、曲がっていけるようにすべきだと思っています。

僕たちが望んでいるのは、多くの方がいじり倒せる最高のモータースポーツ車。そうすると素性がしっかりとしていなければいけないので、次にモデルチェンジがあるとすれば、素性がすごいしっかりとしたモデルに仕上げたいと思っています。

このレース、GR86は出場を見送っていた。過去2戦、完走こそしていたが、技術的に深掘りが必要なさまざまな課題が出ており、対処療法を施しながらレースに参戦していた。

しかし、この活動の本来の目的は「モータースポーツの現場でクルマと人を鍛える」こと。原因の解析をしっかりとやって、必要な手立てを講じる必要があると判断した。

ライバルと競い、時に原点に立ち返りながら鍛えてきたGR86。シーズンを通して、出力は12%、トルクで17%アップ、ボディ剛性、旋回性能、カーボンニュートラル燃料に対するエンジン改良など、各項目で進化を遂げた。

GR車両開発部の高橋智也部長は2022年シーズンの総括をこのように語った。

高橋部長

我々がこだわっているのが、プロのドライバーとジェントルマンドライバー のラップタイム差を極力、小さくするということです。

*チームオーナーやスポンサーなどの立場でありながら、自らステアリングを握りレースに出場するアマチュアドライバー

撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY

「プロが乗ると速いがジェントルマンには乗りにくい」というクルマではなく、誰が乗っても、タイムが出せるクルマづくりをやっています。

今年の開幕戦の鈴鹿から、先月の岡山で比較すると徐々にタイム差が縮まってきています。

実際に、ジェントルマンドライバーからも「クルマがシーズン初めに比べて乗りやすくなってきている」「扱いやすくなってきている」というコメントが出ています。

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