レースで鍛える液体水素車 5つの進化を2カ月で 第4戦オートポリス

2023.08.24

燃料が気体から液体に変わっても、アジャイルな開発は変わらない。たった2カ月の間に遂げたクルマと水素ステーションの進化をレポートする。

ENEOSスーパー耐久シリーズ(S耐) 20234戦の決勝(5時間レース)が730日、オートポリス(大分県日田市)で行われた。

撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY

液体水素を燃料とするGRカローラ(液体水素カローラ)は、5月に富士スピードウェイ(静岡県小山町)であった第2戦の24時間レース以来の出場となったが、チェッカーまで残り1時間ほどで、エンジンオイル漏れによりリタイヤ。

完走こそ叶わなかったものの、昨年、気体水素では14周だった充填1回あたりの航続距離が19周へと約23km伸びるなど、着実な進化を披露した。

トヨタイムズでは、液体水素カローラが遂げた前戦からの5つの進化をレポートする。

進化Ⅰ:課題のポンプは耐久性が向上

今回、車両の進化は大きく2つ。ひとつは「液体水素ポンプの耐久性向上」。もうひとつが「40kgの軽量化」だ。

富士24時間レースでは、一番の課題がポンプの耐久性だった。

通常、ポンプを駆動するギヤなどには、潤滑油を使用し、部品どうしの摩擦を減らす。しかし、液体水素の場合は、そのオイルがタンクの中に入り込み、-253℃の極低温の燃料に混ざってしまうリスクがあるため、無潤滑でポンプを作動させている。

このため、富士ではレース中に2度、計画的にピットインさせて、摩耗したポンプを交換する大掛かりな作業が必要だった。

今回は、ギヤやベアリング(軸受)の間に摩擦や衝撃を和らげる機構を設け、ポンプの負担を軽減し、耐久時間を30%向上。

その意義をGAZOO Racingカンパニーの高橋智也プレジデントはこう表現した。

「前回、24時間レースで連続6時間走れたので、今回の5時間レースでポンプを交換しないのは当たり前と思われるかもしれません。しかし、レースは決勝だけではありません。レースウィーク期間中にやっていたポンプ交換の回数が劇的に減っているので、そういう意味でも効果が出ていると思います」

レースに臨むエンジニアやメカニックの負担軽減につながっていることに言及した。

進化Ⅱ:液体水素システムを軽量化

このポンプの進化は、もう一つの車両の進化である40kgの軽量化にも効いている。

ポンプが劣化すると、摩擦抵抗が増える。それに打ち勝つトルクを出すためには、モーターに大きな電力をかけなければならず、その分、容量の大きなバッテリーや太い電線などの電装部品が必要だった。

しかし、ポンプの性能が向上し、スムーズに動くようになったことで、それらの部品を小型化、軽量化することができるように。

このほか、テストやレースで収集したデータを分析するなかで、タンクのバルブや水素配管などの部品も、安全度に十分な余裕があることがわかったため、一つひとつ軽量化を実施した。

しかし、未だ、カローラクラスの車両で1910kgGRカローラのベース車両の重量が1470kgであることを踏まえると、まだまだ重い。

水素エンジンプロジェクトを統括するGR車両開発部の伊東直昭主査は「液体水素のシステムは低圧で運用できるので、最終的には高圧気体のシステムより軽くなると思っています。まだそこには達していませんが、1700kg前後だった気体のシステムより軽くするのが目標です」と改良の目線を示した。

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