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仲間がいればカーボンニュートラルも加速する 第4戦オートポリス

2023.08.25

大分県のオートポリスで行われたスーパー耐久選手権第4戦。会場には共にカーボンニュートラル社会の実現を目指す九州の「仲間」たちの姿があった。

7月29日、30日に開催されたENEOSスーパー耐久シリーズ2023 Supported by BRIDGESTONE 第4戦 スーパー耐久レース(S耐) in オートポリス。

九州では、水素の「仲間づくり」がS耐をきっかけに広がりを見せている。このオートポリスで語られたカーボンニュートラルの取り組みを取材した。

産学連携で進めるカーボンニュートラル

レース期間中のオートポリスには九州を中心に進められる水素に関する取り組みの展示がされていた。この水素の取り組みについて、燃料電池、水素関連商品の開発から事業までを一気通貫で担う専任組織として7月に新設された水素ファクトリーの山形光正プレジデントはラウンドテーブルでこのように説明する。

山形プレジデント

九州という地域は、私たちの活動を熱心にサポートいただき、一緒に取り組みを進める仲間のような存在だと思っています。

水素ファクトリーが7月に発足し、直接お話をしたいなとこちらに来させていただきました。

イベント広場でお話をする中で、九州大学が水素にかなり熱心に取り組まれて、技術的にもすごく進んでいるので、我々もいろいろ学ばせていただいているとお聞きしました。

そういう産学連携は東北地方や山梨県などでも行われていますが、九州の一つの強みだと思っています。

また、トヨタ自動車九州で自動車生産もしており、いろいろな関係を持たせてもらっています。志に共感していただいている地域の一つだと思っています。

九州から拡大する水素FCEV

九州では、福岡市の小中学校で給食の配送用トラック、熊本赤十字病院の医療車にFCEV(燃料電池)が使われている。

さらに、中嶋裕樹副社長から、水素を活用した新たな取り組みが発表された。

中嶋副社長

福岡県の添田町から大分県の日田市までを結ぶ鉄道があるのですが、数年前の水害で鉄道を維持するのが困難となり、そこをBRT*にするという計画がJR九州、福岡県で進められていました。
*BRT:バス・ラピッド・トランジット(Bus Rapid Transit)の略。公共車両優先システム、バス専用道、バスレーン等を組み合わせた走行空間の確保を基本とする、速達性、定時性、輸送能力に優れた公共交通システム

それであれば、ぜひここにFCEVのコースターが使えないかと持ちかけました。

私も実際にハンドルを握って、クルマや、道路状況など、最終のチェックを行い無事にクルマが走れることを確認してきました。

線路を外して道をつくるところから、我々も参加させてもらって、コースターの幅に合った形でどう安全を担保するか一緒に議論も行いました。

古いトンネルも有効活用しています。この辺りは山岳地帯なので、標高差が大きく、クルマで行こうとするとつづら折りの道を進まなければならなくなります。ですが、もともと鉄道の線路だった道を活用しているので勾配も決められており、まっすぐ走れるというメリットもあります。

そのため、ドライバーだけではなく、乗っているお客様にとっても安心・安全で利便性の高い乗り物になると考えています。

まだ計画中ではありますが、救急車もFCEVで1台つくり始めています。東京と福島などと合わせて福岡県内の会社と協力しながら、年末に供給できないか検討を進めております。

さらに、水素社会が実現して街中をたくさんのFCEVが走るようになると、渋滞などで水素欠が起こる可能性があります。そういったサポートをするためにJAF(日本自動車連盟)と提携して、ダイレクトに給水素するクルマがつくれないかも検討しています。

B to Gで進める水素活用

中嶋副社長

このように市民生活を支えるクルマをFCEV化する。ポイントはこれらの(働く)クルマは市の中心にあるということです。例えば県庁、市役所などに水素ステーションを1基つくってもらって、給水素ができないか、また、MIRAIに続きFCEVのクラウンが、もうすぐ出てきますので、公用車にも使っていただくこともできます。

これらの乗用車と商用車を合わせてB(Business) to G(Government)でひとつの市とか県という単位でこのようなことができないかと考えており、福岡県、福岡市からスタートさせていただく予定です。

これが上手くいけば、他の県、市などにも展開をしていきたいと考えております。

さまざまな県、市、からもお声がけいただいておりますので、実際にクルマを走らせて水素社会の実現に向けて頑張っていきたいと考えております。

働くクルマ、特に架装しているクルマは、その原理自体をどうするかという大きな問題があります。

BEV(電気自動車)だと長い距離が走れないとか、(働くクルマに架装した機材を動かす)エネルギーで走るためのバッテリーを消費してしまうという課題もありますので、使われ方によっては、FCEVの架装車も十分に可能性があるのではないかと考えています。

CO2削減だけじゃないFCEVゴミ収集車の意外なメリット

そして、イベント広場では、FCEV水素パッカー車(ゴミ収集車)が初展示された。メディア向けに開催されたラウンドテーブルで商用車を担当するCVカンパニーの太田博文チーフエンジニア(CE)はこの車両の特徴について、こう説明した。

CVカンパニー 太田CE

今回FCEVの水素パッカー車、いわゆるゴミ収集車をつくってきました。すべて水素のエネルギーです。水素のエネルギーで走ります。水素のエネルギーでゴミを集めます。水素のエネルギーで回収ができます。

水素エネルギーで「走る」と「つかう」。この両方をひとつのパッケージにしたクルマとして考えました。

水素で街も空気もきれいにしたいと思っています。音も静かです。車両の構造としては、FCEVのトラックに、ゴミ収集の機構をつけています。

基本的には、架装業者様でつかっていただいているパッカー車と同じですが、全て電気で動くようになっています。

今、街中ではディーゼルのゴミ収集車でゴミを集めています。その場合、すべてエンジンの駆動で回していますので、音が大きくなって静かに作業ができないことが、ひとつの課題となります。

福岡市は夜中にゴミ収集をしています。東京などでは、朝に収集したり、広島だと夕方だったり、時間は地域によって異なります。

そのため、静かに回収できるのが重要となります。家の前までゴミを回収にいくとか、街中を走るところのCO2削減だけではなく、静かに回収することで、街のなかに溶け込むことを実現したいと思っています。

なんでもかんでも新しくつくってしまうと普及も難しくなってしまいます。なるべく今あるシステムを活用することで、ゴミを集めた後に持っていく、既存の集積場にも入るようにしています。

自動車メーカーだけじゃなく街の方、今回で言えば架装業者の方たちみんなと段階を踏んで取り組んでいくことが、普及に向けて大事なことだと考えております。

実際にゴミ収集車を街中で見てもらうと、ほうきを入れていたり、スペアタイヤを積んでいたり、スペースが欲しいという方もいらっしゃいます。使い方に合わせて、しっかりとやっていきたいと考えています。

この水素FCEVのパッカー車のベースの部分はすでに発売されているFC小型トラックと共通になっているという。その狙いについて太田CEはこう話す。

CVカンパニー 太田CE

水素タンクの搭載位置などはFC小型水素トラックと共通にしてあります。共通化することで、同じラインでクルマのベアシャシー(車台部分)だけ流して、完成後に上を付ければいいようにしています。

専用のクルマをつくってしまうと高くなってしまうため、なるべく共通にしています。

いろいろな自治体から引き合いも来ています。各県カーボンニュートラルを進めたいという想いがあるので、まずはこの半年でデータを取っていきたいです。

FCEVパッカー車は今年度、福岡市に1台使用してもらい、実証実験が開始される。ゴミ収集車としてこのFCEVパッカー車を走らせることで、頻繁に繰り返されるストップ&ゴーや、ゴミ集積場でゴミを下ろす際のダンプアップによるエネルギー消費、バッテリーなどの検証が進められる。

中嶋副社長

海外でもパッカー車の電動化は進んでいます。まず走るクルマをつくって、各地方自治体、海外のみなさんに見ていただいて、使い勝手を確認してもらう1台です。

CVカンパニー 太田CE

街中に水素を「つかう」環境をつくって、水素ステーションをつくっていく、これが、水素社会を広げるための一歩だと思います。

B to Gというのは、街中で水素の安定巡航を行います。離れた大都市を結ぶFC大型トラックによる幹線物流と合わせて、水素をつくって、ひとつずつ水素を「つかう」都市を増やしていくことを実現していきたいです。

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