株主からの直球質問に「BEV(電気自動車)が大好き」と言う新組織のトップが回答。5月に立ち上がったばかりのチームが目指すものとは?
1時間56分にわたった株主総会では、来場者から11の質問が寄せられた。
経営陣との株主の間にどんなやりとりがあったのか? 今回はカーボンニュートラルにまつわる2つの質問をピックアップする。
株主提案に至るまでの議論は?
株主総会前にニュースにもなっていたように、今年、トヨタとしては、2005年以来、18年ぶりに株主提案
*
が寄せられた。
*株主が提出する議案。総株主の1%以上、または300個以上の議決権を6カ月以上前から保有する株主が権利を持つ。複数株主の議決権を合算して要件を満たすことも可能。
デンマークの年金機構をはじめとする欧州の機関投資家からの共同提案で、トヨタのロビー活動と温暖化対策の国際ルール「パリ協定」との整合性を毎年評価し、報告書に織り込むことを定款に記載してほしいというもの。
この提案に対し、トヨタの取締役会では、「開示のあり方も日々変化させていく必要があるため、会社の組織・運営の基本的事項を定める定款には個別具体的な業務執行に関する事項は規定せず、現行の定款を維持したい」として、反対の姿勢を表明していた。
総会の冒頭でも、改めて会社としての意思は伝えられていたが、株主からは「機関投資家との議論について教えてほしい」という質問があった。投資家のもとへ足を運び、対話をしてきた山本正裕 経理本部長が答えた。
山本経理本部長
実は、私からデンマークの年金基金の株主の皆様にお話を伺いに行ってまいりました。共同提案されている方もご一緒でした。
まず感謝申し上げたいのが、毎年毎年、我々が開示している内容にいろいろなご意見を頂戴しています。改善につながり、本当にありがたく思います。
ただ、お互いの想いが異なることがございました。「内燃機関(エンジン)を使い続けることは、本当にカーボンニュートラルにつながるんですか」というご意見でした。
2年前にカーボンニュートラル宣言をしたとき、世の中が「カーボンニュートラルの解決策は電気自動車(BEV)だけだ」となったときと同じ(ご意見)でした。
ただ、当時から会長の豊田(章男)も「カーボンニュートラルはクルマだけではなく、エネルギーがどうやってつくられて、運ばれて、使われていくのか、全体で見ていかなきゃいけない」「BEVももちろん大事だが、いろいろな選択肢を準備していかなければならない」(と言い続けてきました)。
そういった考え方に共感いただける方がだんだんと増えてきて、今では世論はだいぶ変わってきたと思います。
デンマークは再生可能エネルギーがものすごく多くて、BEVが普及しやすい国です。ただ、我々トヨタはグローバルで事業をしている会社です。まだまだ電気が通っていないところ、充電設備が整っていない国や地域が多くございます。
CO2は将来下げればいいのではなく、今日から下げていかなければならない。そうなると、いろいろな選択肢が必要です。
一台一台きめ細かく、多くの電動車を導入していくために、取締役会はもちろん、執行メンバー、それから、37万人の従業員全員が毎日毎日、必死に考えながらやっています。
こういった活動を、ぜひ見守っていただき、その活動を皆様にしっかりお伝えしながら、対応を続けていきたいと思っております。
一通りの質疑応答を終えた後の採決において、この提案は株主の反対多数で否決された。