東京モーターショー 豊田自工会会長の想い

2019.10.18

「100年に一度の変革期」の中で、業界の"協調"は一段と必要になり、自工会の果たす役割も大きくなってきている。先日、自工会会長の定例会見で、豊田自身の口で、東京モーターショーについての想いが語られた。

豊田章男はトヨタ自動車の社長を務めながら、日本自動車工業会の会長も務めている。

日本自動車工業会(通称 自工会)は、いわゆる業界団体といわれるもので、約50年の歴史がある。 発足当時、排ガス規制や貿易摩擦など大きな課題に直面していた自動車メーカー各社が、競争だけではなく、協調しながら課題を乗り越えていこうと自工会を立ち上げた。

「100年に一度と言われる自動車の変革」
このフレーズは、今の自動車産業を表す言葉としてトヨタイムズでも何度も出てきている。
この「100年に一度」に向けて、業界の“協調”は一段と必要になってきており、自工会の果たす役割は、今までにも増して大きくなってきている。

自工会は、東京モーターショーの主催者でもある。先日、自工会の豊田会長の定例会見が行われた中で、豊田自身の口からも、東京モーターショーについての想いが語られていた。今回のトヨタイムズでは、その内容をお伝えしたい。

東京モーターショーはこのままでは終わっていってしまう

豊田が最初に語ったのは、回を追うごとに出展者、来場者が減っていくという東京モーターショーの現状と、なぜそうなってきたのか?であった。

東京モーターショーはこのままでは終わっていってしまう

東京モーターショーは残念ながら、出展ブランド数も、来場者数も、回を追うごとに減少してまいりました。来場者は、2013年が90万人、15年が80万人、一昨年は80万人を下回る実績でした。出展者数も、前回は34ブランドだったものが、今回、輸入車不参加のニュースもございましたが、23に留まっております。ただ、我々日本メーカーも、海外でのモーターショー出展を減らしているのも事実でございます。私自身も“イチ”メーカーの目線で考えれば、デジタルが発達し、お客様に、じかに情報をお届けできるようになった今、クルマを展示して、見に来ていただくというスタイルは、どこまで効率的なのかと考えてしまうのも事実であります。販売促進の手段としてのモーターショーの意味合いは、かなり薄れてきたのだと思います。

そして、アメリカでの事例も紹介しながら、100年に一度を迎える中での、モーターショーのあり方について触れた。

一方で、アメリカで行われております、コンシューマー・エレクトロニクス・ショー“CES”は、出展メーカーも増え、新型発表もその場で行われるようになってまいりました。クルマが、今までの延長線上にない未来に向かっていく中、我々は、その未来の姿を多くの方々に知っていただきたいと考えるようになりました。しかし、それをモーターショーというクルマ単体の場で伝えていくことは大変難しく、CESのように「生活全体の未来が示される場」で「一緒に未来を作ろうという様々な産業」と共に伝えていくという、やり方に変わってきているのだということだと思います。東京モーターショーも、そういった場にモデルチェンジしていかないといけません。そうでなければ、いわゆる“ジリ貧”のまま、東京モーターショー自体が終わっていってしまうのではないかとさえ感じております。

東京モーターショーを変えていく

東京モーターショーは、このまま消滅してしまうかも…とまで語る豊田会長は、次に、今回のモーターショーを、どのように変えていこうとしたのか?を語った。

今回まずは、クルマに限らなくとも「みんながワクワクするような未来の生活」を見せられるようにしたいと考えました。

私がオリンピック・パラリンピック等経済界協議会の会長をさせていただいているご縁もあり、様々な産業の方々にお声がけをさせていただきました。それにより実現した新しい企画が、FUTURE EXPOというブースです。未来の生活を体感でき、お子様も含めて、単純に楽しめるコンテンツが詰まったブースになるかと考えております。

他にも、今回メイン会場が2か所に分かれてしまいますが、その2か所を結ぶ遊歩道には、自工会メーカーのものに限らず、様々な小型モビリティを体感いただけるようなエリアも設置してまいります。

いま「体感できる」、「お子様も楽しめる」ということを申し上げましたが、これらの言葉は、今回のモーターショーを企画する上で、大切なキーワードでした。とにかく一人でも多くのお客様にご来場いただきたいというのが、私の心からの願いです。

自ら掲げた来場目標「100万人」

自らの口で掲げた来場目標「100万人」

「“とにかく”一人でも多くのお客様にご来場いただきたいというのが“心からの”願い」と語っている。
この“とにかく”と“心からの”という2つの言葉には、豊田会長の強い想いと切実さが感じられる。

そして、豊田会長は来場者数の目標を掲げた。
トヨタ自動車の社長としての豊田が、数値目標を口に出すことは稀である。自身が数値目標を掲げることによって、そのことが社内で絶対的なゴールとなってしまう。そうなると、なぜそれを成し遂げなければいけないか?といった大切な想いの部分が忘れさられてしまうリスクが伴ってしまうからだ。
しかし、今回、豊田会長はあえて数値を掲げた。

あえて目標を申し上げれば、100万人です。100万人という数字に緻密な理屈はございませんが、箱根駅伝、甲子園、高知のよさこい、徳島の阿波踊り、こうした誰もが知るイベントは、いずれも100万人規模となっております。誰もが知るという、一つの目安が「100万人」なのかなとも思います。自動車をはじめ、日本の様々な産業が集まり、楽しい未来をつくろうというのが、今回のお祭りです。ですから、誰もが知るお祭りになって欲しいと我々は願っております。

日本をもっと笑顔にしていくチカラになると信じて

日本をもっと笑顔にしていくチカラになると信じて

最後に、今回のキーワードとして掲げた「体感できる」、「お子様も楽しめる」の具体策を挙げ、それが、日本の笑顔に繋がっていってほしいという想いで締めくくった。

以前、来場者200万人超えという時もありました。その時は、市場も700万台を超えておりましたが、台数の減少と共に来場者も減ってまいりました。かつてのモーターショーは、少し極端な言い方をすれば、「新しいクルマを置いておくので、どうぞ見に来てください」そんな感じだったかもしれません。クルマを買いたいと思ってくださるお客様がたくさんいらっしゃった時は、それでも多くの方にご来場いただけておりました。残念ながら今は違います。昔ほど、クルマを買いたいと思ってくださるお客様はいらっしゃいません。今までのやり方を踏襲していたのでは、来場者が減っていくのは当たり前だと思います。どうしたら「行ってみたい」と思えるものになるのか。今まで来ていただけていなかったお客様に、どうしたら来ていただけるのか。我々も凝り固まった頭ではなく、今回は、柔軟に考えられる各社の若手に集まってもらい、色々と考えてもらうようにしてきました。お客様に来ていただく、話題にしていただく、共有したくなる、そのためには、ただ見てもらうだけでなく、なるべく体験してもらおうということになりました。また、未来をテーマにするならば、未来の主役であるお子様達に来てもらいたい。そうして、今までにはなかったお子様やご家族連れに本当に楽しんでいただける企画を考えるようになりました。キッザニアとのコラボや、高校生以下無料などは、そうして実現に至った企画だと思います。実は、まだまだ本当に実現できるか、というアイデアも出てきており、今現在も各所へ調整中というものもございます。ただ、それもきっと多くの方に喜んでいただけるものと思っておりますので、残り1か月、最後まで実現に向けて調整を続けてまいりたいと思います。

過ごしやすい秋の良い季節に、少しでも多くの方々に、このモビリティのテーマパークに来ていただき、未来を楽しんでいただければと思っております。そして、100万人の方々に、「未来っていいな」と思っていただければ、それは、日本をもっと笑顔にしていくチカラになると信じております。

あいさつを終えた後、記者からの質問で、もう一度、東京モーターショーの話題になった。 そこで、豊田は、もう一度、数値目標について語った。

東京モーターショーの開催は12日間、100万人を日当たりに換算すると9万人となる。9万人は、東京ディズニーランド(東京ディズニーリゾート)と同じレベルであり、今回のモーターショーをテーマパークにしたいという想いを語った。その回答の模様は、ぜひ動画(2分12秒)で、ご覧いただきたい。

東京モーターショー 豊田自工会会長の想い

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