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「トヨタ春交渉2019」~本音で話そう~

2019.02.20

組合が訴えたのは、これまで陽が当たりにくかった4つの課題。

組合が訴えたのは、これまで陽が当たりにくかった4つの課題。プロになるための土台となる環境、制度上の悩み。会社は現場の課題解決に向けて、真正面から検討することを約束した。

2月20日、第1回の労使交渉(労使協議会)が実施された。

昨年までは、組合は作業服である一方、会社役員は黒い役員服で参加していたが、本年については、組合員と同じく、普段着用している作業着で参加した。また、組合執行部、会社役員以外の出席者の立候補による発言も相次いだ。

冒頭、昨年からの労使のコミュニケーションの変化に触れつつ、本音での話し合いの意義を確認し合った。

新たな労使コミュニケーション

==労働組合 西野委員長==
「昨年の労使協議会では、組合としても変革を宣言し、以降、職場の声も交えながら、労使でコミュニケーションスタイルを変えてきた。(役員との労使拡大懇談会など)やり方を変える事について、個人的には大きな不安を感じていた。組合の先輩達からは、『会社と組合の間には、一定の距離感、あるいはいい意味での緊張関係が必要であり、それがあるからこそ、組合も会社に対して必要な時に必要な事を言う事ができる』と伺ってきた。しかし、会社のおかれた『生きるか死ぬか』の環境のもとで、労使、本音のコミュニケーションをより職場に近い所で行っていくことが、今こそ必要と考え、労使のコミュニケーションスタイルを変える決断をした」
==会社 豊田社長==
「本年1月、20年ぶりに、基幹職以上の人事制度を見直した。ここに込めた私の想いを一言で申し上げると、『偉くなる』という概念を無くしたいということ。トヨタには、『何かになりたい』と言う人は多いが、『何かをやりたい』という人が少ないと感じている。やりたいことを日々努力し続け、できるようになる人を、お天道様はちゃんと見ている、応援していく、これからは、そういう会社にしていきたい。もっと頑張りたいが、壁がある、こんなことに困っているが、自分達だけではどうにもできない、ということを、率直に、会社にぶつけてほしい。労使それぞれが、『わからないことは、わからない』と言い合えるくらい、本音で話し合うことで、そのもやもやが、『こういうことなんだ!』と、腹落ちできるようになればと考えている」

この後、約1時間半をかけて、トヨタが競争力を強化していく上で直面している大きな課題である、「ホーム&アウェイ」戦略と「プロ人材の育成」について、労使でより踏み込んだ話し合いが持たれた。

オールトヨタで競争力を高めていく『ホーム&アウェイ』とは

昨年の6月1日、広瀬工場を中心とした「トヨタの電子部品事業をデンソーへ集約」することが発表された。

100年に一度の大変革期、CASE(コネクティッド、自動運転、シェア、電動化)などの技術が進化し、異業種も巻き込んだ新たな協調と競争のフェーズに入っている。

こうした大変革の時代を生き抜くために、社長の豊田は、この様にコメントしている。

「私流に申し上げると、『ホーム&アウェイ』の視点で、グループ全体の事業を再構築していくということ。『ホーム』とは、競合と比較しても競争力で勝っている事業や地域。『アウェイ』とは、専門性において、自分たちよりも相手の方が多くの優位性をもっている事業や地域。トヨタ単体で見れば、『アウェイ』と位置づけられる事業であっても、グループで見れば、『ホーム』として、強みにしている会社がある。いかに限られたリソーセスを有効活用し、グループ全体の競争力を向上させるかが、非常に重要になってくる」

いま、会社が置かれている状況について、副社長の寺師が率直な想いを述べた。

==寺師副社長==
「100年に一度の大変革期、勝つか負けるかではなく生きるか死ぬかの緊迫感が、自分事として腹落ちしておらず、組合も会社もどこかで『トヨタは大丈夫ではないか』との思っているのではないか。CASE(という環境下で)、一つの部品をとっても、今は自覚症状がないというところが、私たちにとってウィークポイントではないか。」

「電動化では、20年をかけて150万台のHVを生産、販売をしてきた。
1年程前に、2030年にはEV/FCVが約100万台となると発表した。
EVに必要な電池容量はHVの50倍。つまりHV5,000万台分。
更には、この1年の間に、2030年の数字が、2025年に早まりそうな状況。
そういう状況変化に対応出来るスピード感で進めなくてはいけないということ。」

ホーム&アウェイに対しては、組合員の素直な気持ちも伝えられた。

==西野委員長==
「トヨタのみならず、オールトヨタが生きるか死ぬかの状況の中で、グループの力を結集していくことについては、労使でしっかり取り組んでいきたいと思っているが、組合員の中には『自分を育ててくれたトヨタという会社が大好きだ』との想いから、なかなか気持ちを切り替える事が難しく、葛藤しているメンバーがいるのも事実。会社としても見守っていただきたい」

これまで陽が当たりにくかったメンバーが活躍するための4つの課題

「ホーム&アウェイ」戦略に加えて、トヨタが競争力をつけていくために、社長の豊田は日頃から従業員に対して「プロになろう」と伝えている。

「トヨタの看板が無くても、外で勝負できるプロを目指してほしい。マネジメントは、プロになり、どこでも闘える実力を付けた従業員が、それでもトヨタで働きたいと、心から思ってもらえる環境を作りあげていきます」(2019年豊田社長年頭挨拶より)

副社長の河合は、自らの考えるプロ像についてこう語った。

==河合副社長==
「私がいつも言っているのは、まず『目指す人を超える努力』。自分が超えたら、自分を超える人を育てようと言っている。標準作業は安全と品質を確保した上でなら、『毎日変えていいぞ』と。『標準作業は、今のベストであって、明日のベストじゃないぞ』と。職場を良くするために、地道に謙虚に熱心に自ら動く人。その背中を見て、部下は育つと思う」
==組合==
「まさにそうしたプロになるためには、全員が制約なく活躍できることが大切だと思っている」

ここで組合は、プロを目指す上で「これまで陽が当たりにくかったメンバーが活躍するための課題」として、4つの具体例を伝えた。

==組合==

1.職種によって活躍の幅が限定

「業務職(一般職)は組合員全体からすれば1割弱。こうした労使協の場で、スポットライトは当たりづらい。一方で多くの職場を支えているのは、実業務に精通した業務職。事技職(事務系、技術系)や技能職のように、細かいスパンでキャリアの節目がないため、そこに向けた育成や動機づけが難しい。マネジメントもやりづらいという状況があるのでは。こうした現状により、業務職の仕事やキャリアへのモチベーションにバラつきが出てしまう」

2.職種によって制度適用が異なる

「業務職や技能職は配偶者の異動や出向があった際、キャリアカムバック制度※がない為、せっかく積み上げてきたキャリアを捨てて、仕事を辞めるしか選択がないケースも多い」
※配偶者の転勤や介護により退職する、一定の資格の社員のうち、会社が認めた者に対して、再雇用申請の機会を提供する制度

3.学歴、採用形態による処遇差

「技能系登用者(期間従業員から正社員への登用)の賃金水準について。ひたむきに努力を重ねていて、昇格もしているメンバーが、入社形態の違いによって生じる賃金差がいつまでも埋まらない、といったことは避けたい」
「(横にいる大卒は昇格していくのに、)『高専卒は1個上の先輩が上がらないと、自分の番にはならないのかな』と感じてしまうこともある。こうした様々な『壁』を感じることのない制度にしていただきたい」
「シニア期間従業員の福利厚生について。食堂の費用について、正社員は福利厚生による費用補助があるのに対し、期間従業員にはその制度がなく、日々の負担を感じるとの声が出てきている」

4.介護や家族ケア

「介護と家族ケアをしている組合員の声についても聞いていただきたい。会社だけではなく国や自治体でも様々な制度があるが、全て含んで、個人の事情に対して最適な対処法を相談できる窓口や、サポートいただける体制を作っていただければと思う。休職制度や復職制度などの既存の制度に関しても、本人の障害だけではなく、家族の障害にもサポートを広げていただけるような制度を検討いただければ非常に助かる」

「ミドルマネジメントに理解してほしい」

今回、組合から伝えられた4つの課題について、会社も真正面から検討することを約束した。

==上田執行役員==
「今回の話し合いを通じて、一人ひとりにしっかり目を向けていくことが重要ではないかと感じた。今回、皆さんから、いわゆる、陽の当たりにくい人に対しても意見を真摯に出していただいたことについて、感謝を申し上げる。人事の反省として、昔から『一律でやる』という考え方だったので、一番多い母数のところに焦点が当たるという仕組みになってしまっていた。この問題に対しては社長からも『そういうことでは生き残っていけない』と明確に言われているので、今回、組合員の皆さんから本音の議論を出していただけて良かった。この問題については、一日でも早く見直していく方向で、組合の皆さんと話し合いをしていきたい」
==小林副社長==
「総論じゃなくて、頑張っている人が報われるという会社にしていきましょうよ。元々トヨタってそういう会社ですから」

そして、最後に西野委員長は、この話し合いをしっかりと社内に伝えていくことの大切さを訴えた。

==西野委員長==
「昨年のゆめW(春交渉)中に職場懇談会を開催した際、職場からは『労使協議会の内容を理解していないミドルマネジメントが多い』といった声が多く届いた。改めて、ミドルマネジメントの皆さんに、今回の労使協議会についても、しっかりと理解いただけるよう、会社からも一層の働きかけをお願いしたい」

従来以上に、本音で向き合おうとする労使の話し合いの行方をトヨタイムズでは引き続きレポートしていく。

次回の労使交渉は2月27日(水)を予定している。

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