BEV戦略強化 スピーチ全文 「未来を予測するよりも変化に対応できることが大切」

2021.12.20

トヨタ自動車は1214日、メガウェブ(東京都江東区)で電気自動車(BEV)戦略についての説明会を開いた。

既にニュースになっている通り、発表会では、2030年のBEV年間販売台数を200万台から350万台に上方修正したこと、レクサスが同年までに欧州、北米、中国でBEV100%、2035年にはグローバルで100%を目指すことなどを発表した。

意欲的な数字が打ち出され、ステージ上に今後投入予定のBEVがずらりと並んだこともあり、「BEVに否定的だったトヨタが方針転換をした」という見方もあるが、ステージに立った豊田章男社長が強調したのは、「選択肢を狭めない」ということ、「自動車産業で働く人たちへの想い」だった。

カーボンニュートラルの有力な選択肢の一つであるBEV。トヨタの向き合い方がわかる豊田社長のスピーチ全文を掲載する。

なお、今回は発表演出もSNSなどで話題になった。披露されたのは5車種かと思いきや、参加者の予想を裏切るサプライズ。

さらに、いまだ明かされてはいないが、オープニングナレーションの声の主はトヨイムズの読者ならお分かりのあの人。記事とあわせて、動画ならではの楽しみも味わってほしい。

カーボンニュートラル実現へトヨタがすべきこと

ナレーション

今日はトヨタの未来へのショールームにお越しいただきありがとうございます。

メガウェブができたのは1999年。来館者数も12700万人に及び、20年以上、トヨタの展示ショールームとしてたくさんの夢と幸せを提案してきました。

だからこそ、今年で閉館するここメガウェブを本日は未来へのショールームと位置づけ、発表会の会場とさせていただきました。

もちろん未来と言っても、そんな夢物語のような未来ではありません。すぐそこにある身近で、手の届く未来です。それではいよいよスタートです。

オープニング映像が終わり、会場が明かりで照らされると、ステージには豊田社長の姿とタイプの異なる5台の新しいクルマが――。

両手を広げてクルマを披露すると、豊田社長は話し始めた。

豊田社長

本日は、カーボンニュートラルの実現に向けたトヨタの戦略、その中で、有力な選択肢であるBEVの戦略について、お話をさせていただきます。

カーボンニュートラル。それは、この地球上に生きるすべての人たちが、幸せに暮らし続ける世界を実現することだと思います。

そのお役に立つことが、これまでも、これからも私たちトヨタの願いであり、グローバル企業としての使命でもあると考えております。

そのために、私たちは、できる限り多く、できる限りすぐに、CO2を減らさなければなりません。

今、私たちは、多様化した世界で、何が正解か分からない時代を生きております。その中では、1つの選択肢だけですべての人を幸せにすることは難しいと思います。

だからこそトヨタは、世界中のお客様に、できるだけ多くの選択肢を準備したいと思っております。

私たちは、すべての電動車は、使うエネルギーによって、2つに分かれると考えております。

一つは、CO2排出を減らす「カーボンリデュースビークル」。クルマを動かすエネルギーがクリーンでなければ、どの電動車も、CO2がゼロにはなりません。

そして、もう一つがクリーンなエネルギーを使ってCO2排出をゼロにする「カーボンニュートラルビークル」です。私たちトヨタは、その実現に向け、全力で取り組んでまいります。

ベールを脱いだ5台のbZ

豊田社長

本日、皆様に、私たちが準備している新型車をご披露させていただきます。トヨタのBEV専用車、bZシリーズです。

beyond ZERO」。「ゼロを超えたその先へ」を意味する“TOYOTA bZ”。すべての人に、移動の自由と運転の楽しさを。

私たちは、CO2排出などのネガティブインパクトをゼロにするだけではなく、その先も目指してまいります。

bZシリーズでは、グローバルでの多様なニーズにお応えするため、BEV専用プラットフォームを開発いたしました。

自身の後ろに並んだbZシリーズに歩み寄ると、ひとつずつ、車両のポイントについて説明し始めた。

豊田社長

そのラインナップの第⼀弾が先日発表したこちらのモデルです。bZ4Xです。SUBARUとの共同開発により、滑らかで思いのままに操ることができる走行性能と、本格SUVとしての走破性を追求いたしました。
撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY

現在、トヨタ元町工場で来年の発売に向けて生産準備の真っ最中です。皆様のお手元にまもなくお届けいたします。

さらにbZシリーズのラインナップを拡充してまいります。まずはこの2台をご覧ください。

BEV新時代を予感させる美しいシルエットをもつミディアムクラスのSUV。一目見ただけで、「乗ってみたい」「走らせてみたい」、そう思えるスタイルを実現しております。
撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY

そして、こちらは、シリーズの中で最もコンパクトなSUV。ヨーロッパや日本を意識した小さくても快適な室内をもつBEVです。

撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY

航続距離を伸ばすために電池を増やせば、クルマは大きく、重く、高くなります。小さいクルマだからこそ、徹底的にこだわること。それは、電費性能です。

大切なことは、いかにクルマ全体のエネルギー効率を高めていくか、いかに少ないエネルギーで走れるか。まさに、トヨタが30年以上、磨いてきた技術です。

そのすべてを注ぎ、このクルマで、1kmあたり必要なエネルギー量が125Whという、コンパクトSUVクラストップの電費を目指しております。

さらに、お客様のファーストカーへのご期待に寄り添うミディアムクラスのセダン。

撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY

そして、家族と豊かな時間を楽しめる3列シートも可能なラージクラスのSUVもご用意しました。

撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY

いかがでしょうか。既存モデルにBEVを追加するだけでなく、bZシリーズのように、リーズナブルなモデルをフルラインナップでご用意して、あらゆるお客様のニーズにお応えしてまいります

これにより、世界中のお客様にBEVならではの個性的で美しいスタイリング、走る楽しさ、BEVのある暮らしをお届けしたいと思っております。

目指すのはBEVでもフルラインナップ

豊田社長

トヨタは世界中のお客様に支えられているグローバル企業です。

トヨタブランドは、170以上の国と地域で、約100車種のエンジン車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、燃料電池自動車を投入してまいりました。

レクサスブランドは、90以上の国と地域で約30車種のエンジン車とハイブリッド車、プラグインハイブリッド車を投入しております。

さらにこれから、BEVでもフルラインナップを実現し、「カーボンニュートラルビークル」の選択肢を広げてまいります。

具体的には、2030年までに30車種のBEVを展開し、グローバルに乗用・商用各セグメントにおいてフルラインでBEVをそろえてまいります

それでは、みなさんご覧ください。さらなる、トヨタのBEVラインナップです。

レクサスの新たなる挑戦

両手を大きく広げた豊田社長。すると、白い壁のように見えていたbZシリーズの後ろに張られた幕が下り、さらに11車種のクルマが登場。自らも拍手をして、総勢16台のBEVをお披露目した。

豊田社長

私たちの未来のショールームへ、ようこそ!

まずは、レクサスブランドです。本物を知る人が最後に選んでいただけるブランドでありたい。ブランドホルダーとして、私はそう思い続けています。

レクサスは、独自のデザインと走りの味を追求し、ハイブリッド技術のパイオニアとして、電動化の技術を磨いてきました。そして今、レクサスは新たな挑戦を始めます。映像をご覧ください。

下山試乗

佐藤恒治 President, Lexus International Chief Branding Officer

レクサスが初めてつくる専用のBEVの車です。RZです。

豊田

Z? ZERO

佐藤

レクサスらしいBEVをつくりたいんですよね。

豊田

「レクサスに乗っているな」「EVなんだ」ということがわかるようにしたいよね。この、四輪接地感が非常にいいね。

佐藤

一貫して、レクサスの味として大事にしていきたいのはそういう感覚なんですよね。それは、けっしてBEVになったからといって、失っていいものではなくて、守っていきたいんですよね。

豊田

四輪の接地感みたいなのは感じるけど、ちょっと重いよね。

豊田

アクセル踏んだらどうなるの?

佐藤

踏んでみてください。

豊田

ええー! 何これ! 別世界!

佐藤

どうでしょうか?

豊田

別の顔が見えた!

豊田

やっぱりマスタードライバーとして乗っていて、いつまでも乗っていたいクルマ。「環境にもいいよ。だけど楽しいんだよ、乗ってよ!」というクルマを是非レクサスのニューチャプターで、Zというブランドでやってほしいですね。

佐藤

やっていきましょう。

豊田

やっていきましょうよ。



佐藤プレジデント

レクサス・エレクトリファイド。レクサスが目指す電動化の取り組みをこのように呼んでいます。電動化技術によりクルマの可能性を最大限引き出すこと、それが、レクサスにとっての電動化です。

モーターが生み出すリニアな加減速、ブレーキのフィーリング、そして、気持ちの良いハンドリング性能を組み合わせることで、運転そのものの楽しさを追求し、レクサスらしい電動車をお届けしてまいります。

中でも、BEVは、電動化がもたらすクルマの進化、その特徴が最もわかりやすく表現されたモデルとして、今後のレクサスの象徴となっていくと考えています。

その最新のモデルがレクサスRZです。BEVであっても、クルマを鍛え、走りの味を追求していくレクサスの姿勢は変わりません。

その終わりのない味の追求は、今後スポーツBEVの開発を通じて、次のステージに向かっていきます。

レクサスならではの走りを示すとともに、スポーツカーにとって大切な低い車高や、挑戦的なプロポーションにこだわる、レクサスの未来を象徴するモデルです。

(時速100kmまでの)加速タイムは2秒前半、航続距離700kmオーバー、全固体電池の搭載も視野に、ハイパフォーマンスBEVの実現を目指します。

レクサスは、クルマ屋だからこそできる性能のつくり込みや、人の感性に響くモノづくりに磨きをかけ、BEVを通じてクルマの多様な体験価値を提供するブランドに進化させてまいります。


映像が終わり、会場が明るくなると、ステージ中央には再び豊田社長の姿。レクサスのブランドホルダーとしてスピーチを続けた。

豊田社長

LFAの開発を通じてつくりこんだ「走りの味」。いわば、「秘伝のタレ」。それを継承する次世代のスポーツカーをBEVで開発いたします。

撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY

そこで磨いた「走りの味」を他のモデルにも展開し、レクサスを、BEVを中心としたブランドへと進化させてまいります

バッテリーとモーターの配置でBEVはもっと自由になります。さまざまな地域のニーズ、お客様のライフスタイル、商用車のラストワンマイルから長距離に至るまで、もっとお客様に寄り添うことができます。

EV for everyone

豊田社長

レクサス・ラインナップの後方に見えるクルマたち。実は、これこそが、トヨタのさまざまなBEVです。では、こちらの映像をご覧ください。

EV for everyone

サイモン・ハンフリーズ デザイン統括部長

世界はますます多様化しています。人々は自らの選択に自信を持ち、自由で楽しいライフスタイルを送ることができるようになっています。

私たちは、本当に良い製品とは、お客様のライフスタイルの方向性を高め、新しい体験を生み出すものだと考えています。

そのためには、専用のプラットフォームだけでなく、既存のモデルに関連したEVも含めて、それぞれがユニークで特別な存在でなければなりません。

例えば、トヨタのオフロードの伝統を生かして、新しいエキサイティングなレクリエーション体験を創造することや、汎用性とダイナミックな走りを両立させるために新しい方法を模索しています。

また、e-Paletteのような商用車は、都市における日常生活の風景を変えるでしょう。

より小さなサイズのセグメントでも、新しいモビリティ・ソリューションに挑戦していきます。コンパクトで超多機能なモデルは、仕事にも若者にも新しいエキサイティングな可能性をもたらします。

また、最小サイズのセグメントでは、ビジネスシーンに応じてさまざまなバリエーションを提供するシェアリングの構築などの新しいアプローチを提案します。

そして最後に、豊田章男さんのようなクルマ好きの方にもぜひ見ていただきたいのです。EVの時代は、もっといろいろな楽しみ方ができるチャンスでもあります。

あなたのためのEV、私のためのEV、みんなのためのEV


長年の蓄積こそ、これからのトヨタの競争力

豊田社長

EV for everyone」。トヨタのBEV、いかがでしたでしょうか。

今日発表した未来は、決してそんな先の未来ではありません。ご紹介したトヨタのBEV、そのほとんどがここ数年で出てくるモデルです。

私たちは2030年にBEVのグローバル販売台数で年間350万台を目指します。

レクサスは、2030年までにすべてのカテゴリーでBEVのフルラインナップを実現し、欧州、北米、中国でBEV100%、グローバルで100万台の販売を目指します。さらに、2035年にはグローバルでBEV100を目指します。

そう言うと豊田社長はBEVにまつわるトヨタの取り組みについて、時間をかけて説明し始めた。

車両や電池の開発の歴史にはじまり、カーボンニュートラルを実現するための資源やエネルギーの確保、さらには製造現場の取り組みに至るまで、内容はあらゆる領域にわたった。

豊田社長

これらを実現するために、私たちは、長い年月をかけて、さまざまな領域で取り組みを進めてまいりました。

車両開発の領域では、トヨタは、1997年に世界初の量産ハイブリッドカー「プリウス」を世に送り出しましたが、実は、その前からBEVの開発は始まっておりました

1992年にEV開発部を設置し、1996年にRAV4 EVを市場に投入。

その後、2000年代には、小型EVコミューター「e-com」の実証も行ってまいりました。

さらに、2012年には、超小型EVCOMS」や小型EVeQ」を導入。BEVの可能性を追求してまいりました。

そして、本年、「C+pod」や「C+walk」を発売。「e-Palette」も含め、さまざまなシーンで移動の自由をお届けするEVの開発を加速しております。

また、1990年代、BEVと同時に開発が始まったのが、水素で走る燃料電池自動車でした。2002年に「トヨタFCHV」を市場導入し、実証を重ねながら、2008年には、「トヨタFCHV-adv」へと改良いたしました。

そして、長年の努力が、2014年の初代「MIRAI」の発売へとつながっていったのです。

その後、バスや大型トラックへも展開を図るなど、燃料電池車も進化を続けております。

電池の領域では、トヨタは長年にわたり、内製で、電池の研究開発と生産を続けてまいりました

1996年に現在のプライムアースEVエナジーを設立。ニッケル水素電池の技術を磨きながら、2003年からは、リチウムイオン電池にも取り組んでまいりました。

さらに、2008年には電池研究部を設立し、全固体電池など、次世代電池の研究も行っております。そして、昨年、電池事業を一貫して行うプライム プラネット エナジー&ソリューションズを設立いたしました。

私たちは、この26年間、1兆円近い投資をし、累計1900万台以上の電池を生産してまいりました。これまでに積み重ねてきた経験こそが、私たちの財産であり、競争力だと思っております。

今後は、電池関連の新規投資を9月に発表いたしました1.5兆円から、2兆円に増額し、さらに先進的で、良品廉価な電池の実現を目指してまいります

資源の面では、豊田通商が2006年から、リチウムなどの調査に着手し、安定的な資源確保を進めております。

また、エネルギーの面でも、豊田通商は、30年以上前から、風力発電や太陽光発電といった再生可能エネルギーの確保に取り組んでまいりました。

さらに、製造現場では、エネルギーの使用量を減らす地道な改善を重ねながら、革新的な生産技術の導入を進め、2035年のカーボンニュートラル達成を目指しております。

正解がわからない時代、多様化の時代においては、市場の動向を見ながら、生産する種類や量をフレキシブルに変えていくことが大切になります。

これまでTPS(トヨタ生産方式)で培ってきたリードタイム短縮や多品種少量生産のやり方、日本のモノづくりの地道な取り組みがこれからの競争力になると考えております。

私たちは、これからも、多くの仲間とともに、あらゆる領域で取り組みを進めてまいります。

「未来はみんなでつくるもの」

25分に上ったスピーチのクライマックス。ここまでBEVへの本気の取り組みを説明してきた豊田社長だったが、最後に改めて、全方位戦略にこだわる理由とカーボンニュートラルに向けてともに戦う自動車産業への想いを訴えた。

豊田社長

カーボンニュートラルのカギを握るのがエネルギーです。現時点では、地域によって、エネルギー事情は大きく異なります。

だからこそトヨタは各国、各地域の、いかなる状況、いかなるニーズにも対応し、カーボンニュートラルの多様な選択肢をご提供したいと思っております。

どれを選ぶか。それを決めるのは、私たちではなく、各地域の市場であり、お客様です。

どうしてここまでして選択肢を残すのか。経営的な話で言うなら、選択と集中をしたほうが効率的かもしれません。

しかし、私は、未来を予測することよりも、変化にすぐ対応できることが大切だと考えております。だからこそ、正解への道筋がはっきりするまで、お客様の選択肢を残し続けたいと考えています。

トヨタが目指すのは、「地球環境への貢献や人々の幸せを願い、行動し、寄り添う企業」です。私たちは、人と社会の「幸せを量産する会社」になりたいのです。

私たちは、今の子供たち、その先に続く人たちに昨日よりも今日、今日よりも明日、少しでも良い未来を残してしていきたいと思っています。

未来は、みんなでつくるものだと思います。自動車産業には、「日本のモノづくり」と「移動」を支えてきた550万人の仲間がおります。世界には、もっと多くの仲間がおります。

みんなが、心を一つにして、意思と情熱を持って行動すれば、次の世代に美しい地球とたくさんの笑顔を残すことができる。私はそう信じております。

そして、必ず、実現してまいります。

続く記事では、メインスピーカーの豊田社長に加え、映像に出演した佐藤CBO、ハンフリーズ統括部長、さらに、技術を担当する前田昌彦Chief Technology Officerが加わった質疑応答の内容について詳報する。

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