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2021.03.17
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トヨタ春交渉2021 #4 幸せのリード役へ、成し遂げなければならない2本柱

2021.03.17

550万人の仲間のために、話し合いを重ねて見えてきた、トヨタが本気で行動に移すべき「2本柱」とは。

約1カ月間にわたり話し合われたトヨタの労使協議会が、3月17日、最終回を迎えた。

どうすれば、550万人の仲間から「ありがとう」と言ってもらえる存在になれるのか、というテーマで進められてきた話し合い。まず、河合議長のあいさつから始まった。

河合議長

2月に、組合より申し入れを受けた際、私はこう申し上げました。

「本年の労使協議会では、一年間の総決算の場として、トヨタという会社にとって、そして従業員一人ひとりにとって、『本当に大切なことは何なのか』ということについて、議論を尽くしてまいりたいと思います」

その上で、3回の話し合いを通じて、「自動車産業を支える550万人の皆様にどうやって貢献していくのか」というテーマで議論してまいりました。

それでは、今回の労使協議会を終えるにあたり、豊田社長より、メッセージおよび回答をいただきたいと思います。

申し入れへの回答も含まれる今回は、三角形のレイアウトではなく、労使が向かい合って座る配席に。社長の豊田は、真正面に座る組合の西野執行委員長としっかりと向き合い、丁寧に語り始めた。

確認してきたトヨタの原点と、今後の2本柱

豊田社長

今回の労使協議は、私が社長に就任して以来、初めて、労使ともに「YOUの視点」で話をすることができたのではないかと思っております。

その出発点となったのが、今から2年前、2019年の3月6日だと思います。

ここで、2019年の労使協議会での、あるシーンの映像が流された。

豊田社長が感じた「距離」 春交渉2019 #3

このときから、2年という時間をかけて、「豊田綱領」、「労使宣言」、「円錐形」というトヨタの原点を確認し、現場の声に耳を傾け、労使ともに、悩み、苦しみながら今日という日にたどり着いたと思います。

労使双方が、「会社は従業員の幸せを願い、組合は会社の発展を考える」。この共通の基盤に立ち、「幸せとは何か」、「誰かのためにとはどういうことか」を真摯に、真剣に議論していただいたことに対し、改めて感謝申し上げます。

そして、今、この瞬間も、それぞれの現場で、「今やるべきこと」を地道にコツコツと積み上げ、改善を続けてくれている組合員の皆さんの頑張りに感謝し…

組合員の皆さんの頑張りに感謝し、賃金・賞与については、要求どおりといたします。

今回の労使協議のみならず、普段から、「相手の話に耳を傾ける」、「一緒になって悩み、考える」、そんな家族の会話を続けていってほしいと思います。

豊田は、向かいに座る組合のメンバーをしっかりと見渡すと、「組合員の皆さんの頑張りに感謝し」というフレーズを二度繰り返し、回答した。

そして、話は「デジタル化」と「カーボンニュートラル」という、今後のトヨタの2本柱について。

3年間で、「デジタル化」を世界トップレベルに

まずはデジタル化。豊田は実態を認識した上で、3年間で早急に推し進めると力強く語った。

今回の労使協議でも話がありましたが、「デジタル化」と「カーボンニュートラル」が今後、労使が一体となって取り組む「2本柱」になります。この点について、私の考えをお話しいたします。

まず、「デジタル化」については、この3年間で、世界のトップ企業と肩を並べるレベルまで、一気にもっていきたいと思っております。

今でも、トヨタの中には、「情報を持っている人が偉い」という風潮があり、「情報が共有されず、一部の人だけのものになっている」のが実態だと思います。

100年に一度の大変革の時代、「生きるか死ぬか」の闘いをしている中で、この状況は致命的です。

TPS(トヨタ生産方式)の考え方に当てはめますと、「必要な人が、必要なときに、必要な情報を得ることができる」ということが大切になると思います。

デジタル化を進めることによって、情報格差をなくし、トヨタのみならず、550万人の仲間が、同じ方向を向いて、仕事に打ち込める環境を整備したいと思っております。

「カーボンニュートラル」は、雇用問題でもある

続いて、もう1つの柱。世間の関心も高い「カーボンニュートラル」について。ここでは3月11日の自工会(日本自動車工業会)の会見映像が流された。

自工会 豊田会長のカーボンニュートラル解説

豊田は、ある危機感を持ってカーボンニュートラルに向き合っている。エネルギーのグリーン化が進まなければ、生産拠点が海外に移り、雇用問題にも関係するという点だ。

2015年には「トヨタ環境チャレンジ2050」を公表し、CO2排出削減を進めてきたように、環境問題に徹底して向き合うことは当然、その上で日本のモノづくりを守る闘いでもあるという。

カーボンニュートラルは、地球のため、これから生まれてくる子どもたちのために自動車産業として、全力をあげて、チャレンジしなければならないテーマです。

ただ、皆さんに正しく認識していただきたいのは、日本において、カーボンニュートラルは雇用問題を内包しているということです。

日本のモノづくりの基盤を守り、550万人の雇用を守りながら、カーボンニュートラル社会を実現する。それが、私たちの使命でもあります。

私は、これから、トヨタの労使協議がますます重要な意味をもってくると思っております。

そして、自動車業界の、幸せのリード役に

これからは、「デジタル化」と「カーボンニュートラル」という2本柱を推し進めるという豊田。ここでは近年感じてきた、ある違和感と、550万人の仲間への想いが語られた。

これまでのトヨタの労使協議は、世間から「賃上げのリード役」と言われ、ここ数年は、「トヨタがそのリード役を降りた」と言われてきました。これに対し、私はずっと違和感をもっていました。

今のトヨタには、賃上げ以上に、リード役として求められていることがあると思っています。それは、「自動車産業全体の幸せ」ということです。

「デジタル化」と「カーボンニュートラル」。この2本柱において、トヨタの労使が「自動車産業のリード役」を務めることができるならば、550万人の仲間から「ありがとう」と言ってもらえるかもしれません。

私は、今回の労使協議を、まずは3年後に向けて、「2本柱」の取り組みを一気に進める「スタートポイント」にしたいと思っております。

成り行きの10年後と、闘い続けて迎える10年後は、まったく違う

そして最後に、次の10年に向けて、労使で心を合わせ、強い意志を持ち、歩みを進めていく重要性を語った。

10年前の私たちは、東日本大震災に直面し、「石にかじりついても」日本のモノづくりを守る闘いに明け暮れていました。奇しくも、その10年後に、日本のモノづくりがさらに厳しい試練を迎えることになろうとは思いもよりませんでした。

今から10年後の3月11日。トヨタは、日本は、どのような状況になっているでしょうか。

ウーブン・シティはフェーズ2が完成するころでしょうか。水素をはじめとするエネルギーのグリーン化はどれぐらい進んで、電動車のミックスはどのようになっているでしょうか。

成り行きの10年後と、意志を持って闘いながら迎える10年後はまったく違うと思います。

トヨタの労使が「550万人の仲間のために」「日本の未来のために」「これから生まれてくる子どもたちのために」。そういう気概をもって、今の自分たちにできることを続けていけば、結果は必ず違ってきます。

550万人の仲間とともに、心を合わせて、一歩一歩、歩みを進めてまいりましょう。きっとその先に、SDGsの18番目の世界、「世界中の人たちを幸せにするモビリティ社会」があると信じましょう。

ありがとうございました。

550万人の仲間を、そして世界中の人々を、誰一人取り残さず幸せにするモビリティ社会の実現へ。

今年の労使協議の始まりに際し、豊田が語っていた「自分たちが良ければいい。そう思う人もいるかもしれませんが、それはトヨタではありません」という言葉は、まさに今回の発言につながっていたのだ。

そして、回答とメッセージを受けた組合の西野委員長は、このような想いを語った。

組合・西野委員長

本年の労使協では、自動車産業の大変革期を全員で戦い抜くために、一人ひとりの能力を最大限に発揮できるようにしていくこと。また、オールトヨタの競争力を高めていく議論をさせていただきたいと申し入れさせていただきました。3回の議論を振り返り、真摯に応えていただいたと思っています。

カーボンニュートラル社会や、デジタル化の実現に向けて、オールトヨタにとどまらず、550万人の自動車産業の仲間と一緒にやっていくこと、さらに産業も超えて仲間づくりをしていくことなど、広い視点で取り組むべきことを議論させていただきました。

多くの気づきを得ることができたとともに、仲間の皆さまから“一緒に取り組もう”と思っていただけるよう、我々自身を見つめなおし、行動に移していかなければならないと強く感じました

また、我々が仲間に貢献していくために解決していかなくてはならない、一人ひとりの成長を阻む職場課題についても、正直に実態をお伝えしました。

会社からは多様な価値観やライフステージにいる組合員の意欲を後押しくださる施策の方向性を示していただき、大変ありがたく、感謝申し上げます。ありがとうございます。

いずれの議論も今回をスタートとして、具体的な取り組み内容を一緒に議論させていただきたいと思います。

議論項目に加え、賃金・人への投資、一時金ともに要求どおりとの回答をいただき、ありがとうございました。こうした回答をいただけたのは、組合員の頑張りを認めていただいたことに加えて、“仲間のため・かのために役に立っていく”、という姿勢に期待いただいたものと受け止めております

先ほど社長からもお言葉があり、また私自身も前回の労使協で申し上げましたが、この2年間、どうやって共通の基盤に立ち、労使の話し合いをするか、本当に悩み抜いてきました

そういった中でも、昨年からの三角形の交渉、労使拡大懇談会など、あらゆる階層で従来の形にとらわれない話し合いや、組合として進めてきた「やめかえ運動(やめよう・かえよう・はじめよう運動)」などの取り組みで、もがきながらも、前に進んできたことで、労使で「かのために」という議論ができるようになってきました

先ほど、社長から「自動車産業のリード役」についてもお話がありました。私も思うところは同じです

たしかに、過去は改善分の上げ幅で、グループ、産業全体を引っ張ってきた部分もありました

しかし、会社ごとに課題もさまざまな中、このやり方では仲間の幸せにつなげていくことは難しいと感じています

昨年の労使協で回答を受け取った際、“広く社会全体の働く仲間のため、我々労使がどのような役割を果たしていけるのか労使で議論を深めていきたい”と申し上げました

今年の労使協で、“どうすれば550万人の仲間から「ありがとう」と言ってもらえる存在になれるのか”という観点から、労使が話し合ってきた内容は、その答えの一つだと感じています

まだまだやるべきことはたくさんありますが、自分たちが置かれた環境は決して当たり前ではないということと、感謝の気持ちを忘れることなく、仲間のために取り組んでいかなくてはいけません

今年の労使協で、改めてスタートラインに立ったところだと思います。すべてはこれからの、私たち一人ひとりの行動にかかっています

「デジタル化」と「カーボンニュートラル」の2本柱について、取り組みの背景にある社長の想いをしっかり受け止めました

共有された情報は、のためにどう使うのかを考えて実行してこそ、意味のあるものになる。今までと意識を変えて仕事をしていくことになるのは間違いない。組合も組合員をサポートできることを考え、実行していきます

カーボンニュートラルへの取り組みは、私たち一人ひとり、550万人の仲間、みんなの未来をかけてやっていくものです。日本にモノづくりを残し、雇用を守っていくためにも、全力で取り組んでいきます

いずれも、職場の一人ひとりの組合員が自分事として何に取り組むべきかを考え、本気で取り組み、550万人の仲間のために、という覚悟と責任をもって組合として取り組んでいきます

私たちを取り巻く環境変化のスピードは速く、10年後、労使がどういう状況に置かれているか、予想することは困難です

ただ、これから先も、“かのために”という視点から、常に“どうしていくか”という目指したい姿を労使で共有し、一緒に悩み、本音で話し合っていきたい。そして、仲間とともに、前に進んでいきたいと思っています

本年の労使協議会も、どうもありがとうございました。

最後に、議長の河合はこう話した。

河合議長

本年の労使協議会を終えるにあたり、改めて、労使で認識しなければならないことがあります。

それは、CASE やコロナ禍といった、100 年に一度の大変革期の中でも、我々には仕事があり、さらには高い処遇も維持している。つまり、我々は相当に恵まれているということです。

しかし、カーボンニュートラルという新たなチャレンジ、言い換えれば、新たな「試練」に立ち向かうことが必要であることを踏まえると、この恵まれた状況は、決して当たり前のものとは言えません。

これまでも繰り返し申し上げているように、労使の「共通の基盤」の考え方のもと、労使で必死に守り抜いていくことが必要不可欠なのです。

そして、恵まれた状況にいる我々だからこそ、550万人の仲間から、「トヨタが自分たちのことを考えて頑張ってくれている」と思っていただけるよう、この労使協議会をスタートポイントとし、本気で「行動」に移していかなければなりません。

私から、労使それぞれの皆さんへのお願いは、会社や上司からの指示を待つのではなく、「できること・すべきことを、自ら考え、チャレンジしてほしい」ということです。

第2回で申し上げたとおり、チャレンジしたときに人は育ちます。失敗しても、改善してまたチャレンジすればいいのです。

トヨタで働く一人ひとりが、550万人を思いながら、自律的に行動・チャレンジし、そして改善し続けていく。これを実現していくために、ここにいるすべての皆さんのご理解とご協力を、よろしくお願いいたします。

最後に、本年の労使協議会が、いい話し合いになったのは、真摯にご発言をいただいた方はもちろんのこと、ご出席者の皆さん、そして、今もそれぞれの職場で、改善を続けてくれている従業員の皆さんのおかげです。

議長として、改めて感謝を申し上げ、本年の労使協議会を終了とさせていただきます。本当にありがとうございました。

550万人の仲間のために、本気で行動に移していこうと労使で認識を合わせ、今年の労使協議会は終了した。

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