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地域の安全のために ラリードライバーが恩返し交流

2023.12.08

プロのラリードライバーが、地元の高齢ドライバーらに安全な運転のコツをレクチャー。その取り組みに込めた想いを取材した。

世界トップクラスのドライバーが、最速の座をかけて競い合った「フォーラムエイト・ラリージャパン2023」(111619日、愛知・岐阜)。

今大会の目玉だったのは、何と言っても豊田スタジアム内につくられたSSS(スーパースペシャルステージ)だろう。

それから3日後の22日、熱気も冷めやらぬ特設コースに、続々とクルマが集まってくる。セダン、ワンボックス、軽乗用車…。中には軽トラックもあり、いずれもラリーとは無縁と思われる、その数65台。

この日豊田スタジアムで開催されたのは、プロドライバーが地元の高齢者を中心に安全な運転のコツを伝える「グッドドライバー・レッスン」だ。

講師を務めたのは、NPO法人グッドドライバー・レッスンの副理事長も務める奴田原文雄選手、ラリージャパン2023にも出場した勝田範彦選手、新井敏弘選手、山本悠太選手、そして曽根崇仁選手、炭山裕矢選手の6人。いずれも全日本ラリー選手権に出場する日本ラリー界のトップドライバーだ。

走りのプロが伝えたこと、そしてこの取り組みに込めた想いを取材した。

始まりは北海道 蘭越町

グッドドライバー・レッスンの始まりは、2019年、北海道の蘭越町も舞台となった全日本ラリー選手権。大会後に同町の金秀行(こん・ひでゆき)町長が奴田原選手に持ち掛けた相談がきっかけだった。

札幌市内からクルマで2時間半弱、4,500人ほどが暮らす蘭越町では、年々高齢化率が高まり、人口の4割超が65歳以上となっている。(20234月現在)

町内には電車やバス、タクシーも走っているが、生活の足はもっぱら自家用車。

「町民にとって、クルマは生活の足で欠かせないものですが、町で行う交通安全運動では具体的な成果を出すのは難しい。高齢化も進む町民の交通安全に対する意識づけと、全日本ラリーの開催地として掛け合わせたイベントをお願いできるのであれば、(町としても)全面的に協力したいと思いました」(金町長)。

金町長や地元住民から相談を受けた奴田原選手。2019年は高齢者の踏み間違いによる事故が社会的にクローズアップされていたこともあり、クルマを愛する者の一人として、「何かできることがあるのではないか」と想いを強くしていた。

「高齢者の方にサポカーを知ってもらうことも事故削減につながる」と、地元のトヨタ販売店へ協力を依頼。各地の販売店の賛同を得ながら、地元警察とも連携した末、同年8月、蘭越町で初めての「グッドドライバー・レッスン」が開催された。

今でも続くこのサポカーを使ったレッスンは、安全な運転だけでなく、先進技術を知ることができる貴重な機会となっている。

モータースポーツは“究極の安全運転”

豊田章男会長は以前、プロドライバーが安全運転を教えるということについて、このように話していたことがある。

「今、いけないのは、『レーサー=危険な運転』という認識。実は速く安全に走っている人なんだよね。それから危険回避も上手いんだという認識をもうちょっと持ってもらいたいんです。そして、サーキットでは競争をしながら楽しんでいるんだってことを知ってもらいたいです」

コンマ1秒を争う世界の中で、事故を起こすことなく、いち早く目的地まで走り切る。究極の安全運転を競っているともいえるプロドライバーだからこそ、伝えられる技術や楽しさがある。

奴田原選手は、プロドライバーが安全な運転を伝える意義を次のように語る。

奴田原選手

私たちもラリーをやるときに、すごく地域の皆さんにお世話になっているんですね。生活の道路をお借りしたり、施設をお借りしたりして。ですので、何かお返しができないかとちょうど思っていたところで、ぜひ協力させてくださいということで始まったのがグッドドライバー・レッスンなんです。

私たちラリードライバーは、究極の安全運転を争っていると、常々思っているんです。クルマをぶつけずにゴールまでたどり着いた者が優勝する。

つまりそういう意味では、速さもありますけど、安全に走り切るということもすごく重要な要素です。安全に走るために私たちが何を心がけているか、こういうことが少しでも伝われば、皆さんの日ごろの運転にも役立つヒントがあるんじゃないかなと思ってプログラムを作っています。

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