大詰めを迎えた労使の話し合い。人への投資、職場環境の改善へ、具体的な課題と解決策が議論されていく。
10年先の働き方を今つくる
ここまで職場環境や働き方の改善について議論を交わしてきた労使。会社からも具体的なアクションが提示され、議長を務める河合満おやじは、「決めたアクションを実行する。これが最も大事」とし、いったんの区切りをつけた。
続けて組合が、今回の賃金・一時金について説明した。
今回、申し入れに際して組合から出した要求は、職種や資格に応じた賃上げ、過去最高となる7.6カ月(夏:3.8カ月、冬:3.8カ月)の一時金。これらが近年の急激な物価上昇や、連結営業利益の通期見通し4.5兆円(第2四半期)を踏まえたものであることを伝えた。
会社からは、世間一般での賃上げ水準などと比較。営業利益見通しについても、さまざまな環境変化の中でできあがった数字であるとしたうえで、組合の要求を受け止めた。
2月21日から始まった労使協議会も大詰めを迎え、佐藤社長、鬼頭圭介委員長がそれぞれ総括した。
佐藤社長
第1回から本日まで、踏み込んだ本音の話し合いがだんだんとできてきたと思います。
具体的な提言を含めて、勇気を持って声を上げてくれた組合の皆さんに感謝申し上げます。
今年の労使協議は、自動車産業の未来に向けて、2つの想いを持って取り組んできました。
まずは、「550万人の仲間への感謝」。仲間と一緒に成長していくために何ができるかを考えて、価格改定の取り組みをはじめ、仕入先様、販売店の皆様の、人への投資を後押しする活動を、労使協議と並行して進めてきました。
もう一つは、「私たちの10年先の働き方を今つくる」という想いです。
初回に申し上げた通り、「幸せの量産」はマラソンです。笑顔あふれるモビリティ社会を実現するために、まず私たち自身が、笑顔で、やりがいを持って仕事ができるようになろう。そんな想いで、踊り場の取り組みを実効性のあるものにするために、ステップを踏んで話し合ってきました。
具体的な行動につながる意見がたくさん出て、取り組むべきことが明確になってきたと思います。今年の労使協議で得られたことこそが、人への総合投資の具体的な手立てであると思います。
伊村さんからお話があったように、踊り場においても、生産性を高めることが、トヨタの強みの原点であることは変わりません。その想いを、労使で確認した上で、取り組みを進めていきたいと思います。
そして、自動車産業は、人が成長を感じることができる、誰かを笑顔にすることができる、素晴らしい産業であると思います。みんなで、守り育てていくことが必要です。
これらを踏まえ、次回に向けて、組合の要求に対する今の私の想いをお伝えいたします。
労使は、1年を通じて話し合いを続けてきました。だからこそ、私自身、皆さんの頑張りは十分に理解をしています。
これまでの話し合いを行動につなげて、10年先を見据えた総合的な人への投資という観点を踏まえて、次回、組合の要求に対して回答を申し上げたいと思います。
鬼頭委員長
本年の労使協は、5年先10年先を見据え、足場固めのこの期間を使って、それぞれの職場では解決することが難しい、トヨタが抱える根深い課題の解決と、未来に向けた取り組みを中心に話し合いをさせていただきました。
先ほど佐藤社長から、勇気を持って生声を伝えていただいたと、感謝の言葉もいただきましたが、会社の皆さんに真摯に受け止めていただいたからこそ、我々はこれまで触れることもはばかられるような、本当に根深い課題に対しても、率直にお伝えできたのではないかと思っています。
今後も、あらゆる階層で、本音の話し合いを継続させていただき、みんなが笑顔で活き活きと働ける職場を、労使で一緒になってつくり上げていきたいと考えております 。
一方で、広く産業全体を見渡したときにお支えいただいている仲間の職場では、人手の確保や人材育成といった、本当に大きな不安、懸念を抱えている難しい状況にあると思います。
前回ご説明いただきました、仲間への取り組みが本当に波及をしているのか、効果を仲間が実感できているのか、今後も責任を持って、定期的に把握をし続けていくことが、トヨタ労使に課せられた責務であると認識しております。
また、今回議論をさせていただいたトヨタの中の課題によって、仲間の皆さんに、無理を強いているのではないか。本音で話をしていただける関係が本当にできているか、トヨタで働く我々一人ひとりは今一度、胸に手を当てて考えていく必要があると思います。
仲間からの信頼を得ることは本当に難しいことですが、信頼を失うのは一瞬だと思います。
我々は、日頃の小さな出来事や、何気ない一言にも気を配りながら、労使でたゆまぬ努力を重ね続け、行動していきたいと思います。
最後になりますが、東本部長からお話のあった、本年の組合要求に関しては、お話しいただいたことも十分に考慮した上で、6万8000組合員の総意として提出させていただいたものです。
佐藤社長からも回答に対する想いをお聞かせいただきましたが、この1年、組合員が、どのような想いで必死になって、職場で頑張ってきたのか真正面から受け止めていただいて、これからも「よし頑張ろう」と思えるような回答をしていただきますことを、切にお願い申し上げます。
次回は3月13日、会社から回答が示される。