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2024.03.07

一人ひとりが成長実感できる職場へ 10年後に向け今改革を

2024.03.07

大詰めを迎えた労使の話し合い。人への投資、職場環境の改善へ、具体的な課題と解決策が議論されていく。

模範は身近にいる

組合からは「自ら考え、学び、成長し、そして組織に貢献するという仕事やキャリアへの向き合い方に変えていくために何が必要なのか」と提起。

宮崎洋一副社長は、成長するための環境を与えられるのを待つばかりにならないように警鐘を鳴らす。

宮崎副社長

コロナ前は、みんなが職場にいて、隣の先輩がつくる資料や電話をしている話を聞いて、「仕事はこうやるのか」「ああいう先輩になりたい」と、近くに模範となる人がいたと思います。

同時に同僚がバリバリ仕事していると「自分との差は何だろう」「どうすればいいんだろう」と考えていたと思います。

まず身近に、模範になる、学べる材料があるということをわかってほしい。

職場からは「教えてもらう機会がない」と聞きますが、自分の成長は自分で取りに行くもの。

プロ野球選手もシーズン前にキャンプをするし、毎日体を鍛えている。それを自分たちでやることが、給料をもらうことにつながると思う。そのために必要な環境の議論をベースにしてほしい。

産業の競争力を上げなきゃいけないものの、見方によっては、「トヨタはいいよね」と言われる事態に陥る可能性もあると思います。

そこだけは会社側、組合側も、しっかりと理解をして、議論させていただければと思います。

組合からも仕事のやりがいや成長実感についての所感が述べられた。

組合執行部

まず、仕事のやりがい、成長実感について、考えをまとめました。

「仕事のやりがい」は自分でつくっていくものだと思っており、仕事を通じて、自分がやりたいことをどうやって実現をしていくのか考える姿勢が大切だと思っています。

入社したときに「どういった志望動機だったのか」「どう貢献したかったのか」を、忘れてしまうことがあります。

原点を改めて思い出してみるとか、今の自分の仕事を重ね合わせて、どういったことができるのかを考えてみる。

やりがいは、自分の成長実感や幸せにもつながってくる。組合員だけではなく、マネジメントの皆さんも含め、あらゆる層で自分がやりたいことを実現しようとする姿勢を持てば、より職場全体が活き活きと活躍できる場になると思います。

よく「風土はすごく根深く、なかなか変えられない」と諦めの声も聞いたりしますが、一人ひとりが、変わっていくことの積み上げで「変えていける」となればいいのではないかと思います。

余力がないことを言い訳に、目の前のことをやって、やるべきことの優先順位を下げてしまっている。

他責にもできますが、自分の中でも、もっと変えていけると思っているので、組合員としても、しっかり働きかけていきたいと思います。

今回の労使協には、近年キャリア入社した従業員も参加。トヨタを外から見て、現地現物で挑戦する機会に恵まれている一方、働き方改革に向けては「多様な働き方を促進するために現場や若い世代へ権限委譲していくこと」などをポイントとした。

また、他社からの出向者は、「トヨタの人たちはすごく真面目で実直」と印象を語る。ただ真剣に仕事に向き合い過ぎるがあまり「自分の仕事に埋没してしまう傾向が強いのかなと思います」と続ける。「答えがなく、みんなで見つけていくときには、まず議論をしてみる。上司も正解がわかっているわけではないので、ときには(上司を抜きにして)みんなで何かをやってみる」と意見を出した。

長田准 渉外広報本部長も職場風土の改革には、話し合いが重要とする。

長田本部長

1回目の労使協で、自分の職場でグループ長を中心に変えていきたいと申し上げました。仕事をしっかり見直して、グループ長の働き方を変える。

あれからもずっと続けていますが、一番大切なのは、グループのメンバーも含めてみんなで話し合いをしながらやっていくこと。これには時間がかかります。

僕も時々入らせてもらいますが、「チームやグループが何をやりたいか、もう1回みんなで考えよう」というところから始めています。

そうすると「自分はなんでこのチームで働いているんだろう」「なんでトヨタに来たんだろう」ということに絶対行き当たります。

それからもう一つは「余力がない」「何かをしたい」「勉強したい」とみんな言いますが、グループ長も、部長も、担当者も、お互いに責任を持って発言しないと、ただ言いっぱなしになってしまいます。

こうした対話を積み重ねていくということが、風土を変えるということだと思います。

僕は、グループが会社の原単位だと思っているので、それを活性化していくためには、みんなで参加して、時間はかかるけれど、しっかり議論をしていきたいと思います。

光田聡志書記長は、今後の課題として職種や資格といった枠組みの存在を挙げた。

光田書記長

「もっと自立した存在になりたい」という意見は2回目までの議論でもたくさん出てきました。組合としても、取り組んでいかなくてはいけない大きなテーマだと思っています。

先ほど宮崎さんが「自分の成長は自分で取りに行く」と仰いました。(組合としても)同じことを思っており、仕事に何を求めるのか、自分はどう成長したいのかを考えなくてはいけないと思います。

職場マネジメントの皆さんの中にも、(仕事に何を求めるかを)考えたことがないという方もいらっしゃると思いますが、ぜひこの機会に一緒に「自分は仕事でどうありたいか」を考え始めていければと思います。

今日は議論しきれませんでしたが、職種や資格などの枠組みが今の多様な働き方にマッチしていない部分もあると思っています。

例えば業務職の方が職場で期待される内容に一生懸命応えようと頑張ってきた結果、部分的、全面的に事技職と同じ仕事をしている方も多くいます。

逆に「もうちょっとやってみよう」という気持ちがあっても、職種の縛りで思いとどまらせてしまうこともあります。

今の枠組みが一人ひとりの多様な成長の道筋を収めきれていない部分もあると思うので、環境も含めて、何を見直していくか議論を続けていきたいと思います。

仕事に主体的に取り組むのは、会社の文化を変えるような話で、すごく難しいと思っています。労使で議論してやれることをやっても、何かがすぐ変わるとは思えません。

なので、仕事のやり方や自分のキャリアの描き方がどれくらい変わってきているかを定点観測しながら、労使で引き続き、このテーマを議論させていただきたいと強く思っています。

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