大詰めを迎えた労使の話し合い。人への投資、職場環境の改善へ、具体的な課題と解決策が議論されていく。
老朽化が進む職場環境
ここからは今回の話し合いが本格的にスタート。東本部長は、組合から会社への一方的な 要望の押し付けにならないよう、自動車産業に従事する550万人につなげていく意識を持って議論を進めるよう促した。
東本部長
これまで2回、5年、10年先の働き方をつくるための足場固めの話をしました。
本日は未来に向けた働き方、働く環境、および、インフラなどの未来投資について(話し合います)。
「働く環境の進化」として、今いろいろな人が職場にいて、その人たちにやりがいを持って貢献してもらう。
そういう意味で「安全・安心して働ける魅力ある環境」「多様性を受容し、活かしていける環境」「自身の成長を実感・実現できる環境」「会社・産業への愛着を育める環境」の視点で、意見交換できればと思っています。
「これをやってほしい」「あれをやってほしい」という議論になることなく、皆さんが日々職場で感じている「この環境やインフラが力の発揮を阻害してしまっている」「会社や産業の競争力を阻害している」というもの(を伝えてほしい)。
我々自身の満足度を上げるのではなく、競争力を高める、ひいては、お客様や自動車産業550万人の皆さんにつなげる意識をもって話し合いを進めていきたいと思います。
まず「安全・安心して働ける魅力ある環境」について。組合から国内の多くの工場は設立から50年以上が経過し、老朽化が進んでいる実態を報告。
設備が古く、女性や障がいのある従業員にとって働きづらい環境があること、建屋の雨漏りや暑さ寒さ対策が不十分であること、物流拠点は委託作業が多く、改善の声が届きにくいこと、といった事例を紹介した。
伊村本部長は「多様なメンバーが笑顔で、安全・安心に明るく働ける環境は非常に重要」とし、具体的な対策を示す。
伊村本部長
多様なメンバーが笑顔で、安全・安心に働くことができる職場環境を構築することが、非常に重要で、(労使)共通の認識だと思っています。
その中で工場設備と建屋は早急に取り組んでいくべき。工場で働く全員が笑顔になれるよう、ハード面の対策を打っていきたいと思います。
工場内の暑熱対策は、今年の夏を目途にWBGT(暑さ指数)のリスク高エリアを改善し、堤工場の車体部をモデル工程に、さらなる工場内空調の改善に取り組んでいきたいと考えています。
またトイレやロッカー、更衣室の改修、休憩所、詰所の整備などに加え、場内外注業者の皆様の働きやすさにもしっかり目を向け、2027年までに必要な投資を大胆に、計画・実行したいと思います。
実行していくにあたり、組合の皆さんにお願いしたいことがあります。
インフラの整備については、働く一人ひとりが、「こういう休憩場にしたい」「こういうトイレにしたい」「こういう設備であってほしい」という気持ちで一緒になって改善していくことが非常に大事だと思います。ぜひよろしくお願いします。
物流を担当する尾上恭吾TPS本部長は、必要な所にはしっかり投資する重要性を説く。
尾上本部長
物流エリアは、委託作業が非常に多い。
委託業者の皆さんは、550万人の中でも、最も我々の近くで、助けてくださっている仲間ですが、その作業環境に目配りできていませんでした。ここは大いに反省するべきだと思っています。
更衣室、休憩所、トイレの他、作業していただいているエリアが、工場の外だったり、受入所が、吹きさらしの状態で、冬は寒い中で作業していただいています。
こういうところの作業環境を直していくことが喫緊の課題だと理解しています。
また、TPSには「設備改善より作業改善」という言葉があります。「お金を使うよりも知恵を絞って改善をしなさい」という先人の教えです。
ここはしっかり守らなければいけませんが、昨今の「人手が足りない」「重いもの、つらいものの作業がある」という中では、DX(デジタルトランスフォーメーション)や自動化にも、しっかりと投資をして、皆さんの仕事が楽になるようにしなければいけない。
我々の技であるTPSを使って、たゆまぬ改善を続けていきたい。これによって、生産性が向上する。リードタイムが短縮される。結果として、我々の仲間の仕事が楽になり、余力もつくることができる。
そういう正しい改善を労使ともに協力しながら進めていければありがたいです。
ここで組合から「5年後、10年後の働き方について、どのようなビジョンを描き、どのように動いているのか?」と質問が上がる。