現場で自ら考え、動いた経験は、たとえ失敗しても成長につながる。一律をやめ、一人ひとりがやりがいを持って働けるように、議論は熱を帯びていく。
第2回の労使協議会(労使協)が2月28日、愛知県豊田市の本社で開催された。
第1回で挙がった主な課題は、次の通り。「生産性や能率など一律の目標、開発日程などに縛られた働き方となっていること」、「双方向でのコミュニケーション不足となっていること」その結果として「安全をベースとした優先順位の順守、人材育成に影響を及ぼしていること」だ。
労働組合の鬼頭圭介委員長は第2回の冒頭、これらについて「トヨタの根幹を揺るがしかねない課題」とし、現場も危機感を抱いていることを伝えた。
労使の間に横たわる根深い課題。この点をテーマに議論はさらに深まっていく。
考慮されにくい「ムリ」
まずは東崇徳 総務・人事本部長が、第1回を受け、一部工場でのタクトタイムの見直し、プロジェクトの精査、負荷を見極めてやめる業務の判断といった職場ごとの対応を検討していることを説明。労使協が開催されるごとに、全部長が集まって、部長同士や執行役員らとのつながりを議論していくことも伝えられた。
これらのアクションを、より実効性のあるものとしていくため、組合からは職場の実態を共有。
一律の能率・生産性などの管理目標に縛られた働き方の弊害については、次のような声があった。
田原支部
数値目標を追い求めるがあまり、TPS(トヨタ生産方式)の考え方である「誰かの仕事を楽にする」が、いつの間にか「誰かにムリな仕事」をさせていました。
「ムダ」「ムラ」の改善はしてきましたが、「ムリ」に対する考慮はされにくく、その積み重ねにより、誰でも活躍できる状態からは程遠い難易度で、作業負荷が高く、工程習得に時間がかかっています。
何とか日々のめんどう見によってカバーしようとしていますが、社外応援者からは「トヨタの作業はきつい」「契約延長はしたくない」という声があり、職場もつらい状況です。
組長・チームリーダーはラインを回すことに精一杯で、メンバーのローテーションを軸とした技能育成ができていません。
過去の組長、チームリーダーが5年後、10年後を見据えて育成してくれたからこそ今の私たちがあります。
そういった育成もできず、焦りと不安と悔しい想いを持ちながら、日々必死に職場運営をしています。
伊村(隆博 生産)本部長や工場長からは、「たゆまぬ改善の文化が大事なのであって、(能率・生産性は)異常を見つける道具だ」と継続的に発信していただいていることは認識しています。
それでも、何十年と職場に染みついた数値の意識を払拭することは非常に難しい。
改めて5年後、10年後の未来に向けて一律の能率・生産性の数値目標のあり方、今後の持続的な人材育成、改善が進むための職場体制の整備について議論させていただければと思います。
これに応えたのは、ここで名前が挙がった生産本部の伊村隆博本部長。
伊村本部長
僕自身も、職場を健全化し、運営することが第一で、能率・生産性の数値を上げることが目的じゃないよねと常に言っていますが、長年のしがらみで突破できないこともあるので、能率・生産性については、1年間凍結したいと思っています。
ただし、能率・生産性は、我々が企業として競争力を磨いていく本当に大事な一つの道具です。
そこは、しっかり理解していただいているので、一律で追っていく目標からは一回外して、まずはしっかりとした基盤ができる体制をつくることができる状態にしていきたい。
時間的、心理的安全性をしっかり担保して、現場の余力創出につなげていきたいと思っています。
余力創出、足場固めのために、日当たり生産は1万4000台、プロジェクトの見直しをやっていますが、これだけでは不十分。
何ができて、何ができていないのかを、今一度みんなでクリアにして、当たり前のことが当たり前にやれる職場、自動的に改善が進み、人が育つ、全員活躍できる体制づくりに向けて議論し、できる施策を一つずつ実行していきたいと思っています。