トヨタイムズスポーツ
2023.02.22

アスリートが海外で鍛える理由 宇野昌磨、三木拓也らにインタビュー

2023.02.22

フィギュアスケートの宇野昌磨選手、車いすテニスの三木拓也選手、棒高跳の山本聖途選手、ラリードライバーの勝田貴元選手に海外を拠点とする理由を聞いた。その深いワケとは?

2月17日に配信されたトヨタイムズスポーツは、海外を拠点に活躍するトヨタアスリートを特集した。彼らはなぜ世界に出るのか、日本で得られない経験とは何なのか。フィギュアスケートの宇野昌磨選手、車いすテニスの三木拓也選手、棒高跳の山本聖途選手、ラリードライバーの勝田貴元選手にインタビューした。スタジオゲストはパラ陸上走幅跳の芦田創選手。今回は“芦田語録”がさらに深く、三木選手とのディープな問答へと進化した。

豊田章一郎名誉会長とスポーツのエピソード

冒頭、トヨタのグローバル化の礎を築いた豊田章一郎名誉会長が2月14日に逝去したのを受けて、スポーツに関わる2つのエピソードが紹介された。1つは、1987年にラグビー部が日本選手権で優勝した際、当時の章一郎社長が祝賀会に飛び入りで登場して、選手らと喜びを分かち合ったという逸話だ。

もう1つは、日本ローイング協会(日本ボート協会から改称)でも名誉会長を務めたボート競技のエピソード。ソウルオリンピックに出場する所属選手に、厳しい言葉を掛けながらも激励したという。森田京之介キャスターは「これまでトヨタのアスリート、スポーツを支えてくださったことに改めて深く感謝申し上げます」と冥福を祈った。

「世界のトヨタの仲間と連絡を取り合い、チャレンジを学ぶ」

海外で闘うアスリートは、新しい挑戦に日々取り組んでいる。今回の特集は、豊田章男社長が年頭のメッセージで伝えた3つのお願いの2番目「世界のトヨタの仲間と連絡を取り合い、チャレンジを学ぶ」を実践して、トヨタアスリートから学ぼうという企画だ。

海外に拠点を置いて活動する選手は、今回インタビューを受けた4人だけではない。フィギュアスケートの紀平梨花選手は、カナダ・トロントに練習の拠点を置いている。ボートの米川志保選手は去年、イギリスの名門クラブでトップ選手と一緒にトレーニングした。円盤投の湯上剛輝選手はスウェーデンのコーチの指導を、現地やオンラインで受けている。

モータースポーツでは、WECの小林可夢偉選手と平川亮選手は、チームの拠点がドイツにあり、世界中を転戦している。この他にも多くの選手が、日本を離れて練習を積んでいる。

ゲストの芦田創選手も2018年から2年間、オーストラリアに拠点を移して走幅跳のトレーニングをしていた。「目標は世界で勝つことだったので、そういう経験をしたいなと思って行ったんですけど、良い点も悪い点も難しい部分もあった。でも間違いなく強くなったと思います」と話す。

棒高跳の山本聖途「試合の雰囲気を自分のホームに」

最初のインタビューは、棒高跳で3大会連続のオリンピック出場を続けている山本聖途選手。昨年10月にフランスへと渡った理由は、前世界記録保持者を育てたコーチのダミアン・イノセンシオ氏の指導を受けるため。関係は良好で、変顔をするコーチの写真も披露された。

「自分が正しいと思ってやってきた練習メニューや意識は、全部覆させられました。それはジャパニーズスタイルだと言って、強制的にフォームを変えられ、日に日に走りが良くなってくる感覚はあります」

そう話す山本選手は、毎週のように大会を転戦中。トップ選手と競い合い、技術や試合運びなどを直接見て学ぶことが多い。海外では緊張して試合に集中できなかった記憶を振り返り、「時差や食事もありますし、選手とコミュニケーションを取り、試合の雰囲気を自分のホームと感じられた方が、パフォーマンスを発揮できます」と、日本を出て闘う意味を語った。

また、トヨタの存在は海外でも広く知られていて、サポートを受けていることはうらやましがられるという。「トヨタの代表としてフランスに来ていると、しっかり自覚を持ってこれからも頑張っていきたい」と語る。

現在は、ポールの長さを10cm伸ばして、踏み切りのタイミングなどを調整中。完成すれば自己ベストを更新する自信があるという。同じ跳躍の種目である芦田選手は「踏み切りは選手の中で、体になじんでいるもの。自動化でできている感覚があり、そこを新しく変えていくのは苦労されていると思います」と大変さを語った。

フィギュアスケート宇野昌磨のポジティブ思考

最近インスタグラムを始めたフィギュアスケート宇野昌磨選手も登場。スイスに拠点を置いてステファン・ランビエール氏のコーチングを受けており、海外での経験について語った。

「日本では当たり前に伝えられることでも、海外ではとても難しいことなので。だからこそ表情とかジェスチャーとかで表現するというのが、日本でいる時よりも明るく振る舞えるかなと思います」と宇野選手。森田キャスターは「ここが宇野さんのポジティブな思考というか、私だったら縮こまってコミュニケーションできない」と驚いていた。

「日本だと街中を歩いてると声をかけられたりするんですけど、海外だと全くそういうことはなくて。ただ、トヨタというワードを出すと『すごいいいクルマだよね』と、世界でもトヨタが知られてるのはよく感じます」と宇野選手は話す。

フィンランドの道が勝田貴元を日常的に鍛える

WRCドライバーの勝田貴元選手は2015年からフィンランドを拠点にしており、インタビューに答えた。サーキットでのレースからラリーに転向して、勝田選手が一番苦労したのが、コースを下見してカーブや障害物などの様子を克明に記した「ペースノート」だという。

「フィンランドは大きな道から外れると、ラリーのステージのようなアップダウンが激しい道があって、ラリーの肝になるペースノートのトレーニングを行うことができます。自分の課題として克服するために、整った環境全てがここにある」と話し、フィンランドでの経験が自身にとって認識を変える大きなポイントだったと説明する。

生活環境が競技に結びつく経験について、芦田選手は「陸上競技において強いて言えば、信号が青に切り替わるタイミングで一歩目を早く出す」と言及した。本当か冗談なのかは不明。一般の人でもチャレンジできそうではあるが、真似する際は安全確認だけには気を付けていただきたい。

三木拓也と芦田創が語る謎のワード「再現性」「言語化」

車いすテニスの三木拓也選手は、最も海外遠征の多いトヨタアスリートの一人。2022年はヨーロッパや北米、イスラエル、日本などの12カ国で、計18の大会に出場した。今年に入ってからは、全豪オープンで全米に続くベスト4入りを果たしている。

三木選手には親交のある芦田選手がインタビュアーを務めた。2人の考えは波長が合うそうで、不思議なやりとりも。三木選手の好調の要因について、芦田選手が「未知の世界なんだけれども再現性がある道のりを歩んできているから、わりと言語化ができていて、手応えがあるのかなと思うんですけれども」と質問。三木選手は「再現性とか言語化するんだけど、自分の中でどれだけ感覚として瞬時に出し入れできるかみたいな部分を、試合中に感じながらできた」と答えていた。

この会話には、視聴者からはコメントで「どういう意味??」という質問が出た。芦田選手によると、最高のパフォーマンスはぼんやりとした領域に位置しており、選手が何らかのエラーを起こしても、その範囲内にすぐ戻ってこられることを「再現性」と呼んでいる。「言語化」は、その動きを言葉で説明できる状態。言語化だけだと身体の反応が遅れるが、その反応を瞬時にできることを「感覚の出し入れ」の言葉で三木選手は表現したと推測している。

海外で食べるおにぎりは、なぜおいしい?

世界各地を回るため、練習のベースとなる準備期間は、試合のない年末の約1カ月半しかないという三木選手。トヨタで開発した新しい試合用車いすを今年から使い始め、好調をキープしている。

海外で学んだことについて、三木選手は「2018年に大きなケガをして、周りの方の支えとかに背中を押されて勝てるシーンが増えてきている。今回のシート開発に関わってくださる方が大勢いるので、結果で返したいという気持ちが強くなる。車いすに乗っているだけで一緒に闘っているという(気持ち)」と語った。

「世界でトヨタを感じる瞬間はかなりあります。遠征先に応援に来てくださる方もいて、ものすごく身近に感じます。差し入れとかでおにぎりをいただいたりしたこともあって」と話す。海外で食べるおにぎりについて「100倍うまいんだよね!」と、食べながら涙した話で芦田選手と盛り上がっていた。

今回の特集では、アスリートたちも海外のトヨタの仲間や、街中を走るトヨタ車に勇気づけられていることもわかった。番組の最後には、硬式野球部の台湾遠征のリポートVTRも。彼らのチャレンジから学び、そして海を越えるような応援を届けよう!

毎週金曜日11:50からYouTubeで生配信しているトヨタイムズスポーツ。次回(2023年2月24日)は、今シーズンをもって引退するトヨタアスリートを特集する。元硬式野球部の河合完治さん、元女子ソフトボール部の有吉茜さんに、トヨタでの経験やセカンドキャリアを取材する予定。硬式野球部OBの六埜雅司さんをスタジオゲストに迎え、スポーツで培った人間力などに“ロックオン”する。ぜひ、お見逃しなく!

RECOMMEND