パラ陸上やり投F46日本記録保持者、高橋峻也選手の沖縄合宿を取材! 高度な技術を必要とする、やり投のコツを紹介していく。イシダンことパラ陸上短距離の石田駆選手も登場。
2月10日に配信されたトヨタイムズスポーツは、やり投を特集した。パリ2024パラリンピックを目指す日本記録保持者、高橋峻也選手の沖縄での合宿を取材。大投てきを生む投げ方や助走などの高度な技術に迫ったほか、甲子園を沸かせた「グラブスイッチ」も披露された。合宿ではピアノが得意でおなじみの、あのトヨタアスリートが久々に走る姿を見せる!
高校野球で甲子園に出場
前回に続くパラアスリートの特集で、ゲストも引き続き女子ソフトボール元日本代表の長﨑望未さん。競技に使われるやりは、ソフトボールのバットに近い重量だが、投げるのは肩が痛そうでイメージしにくいと言う。
高橋選手はやり投の上肢障がいF46クラスの選手。昨年5月のジャパンパラ陸上で61m24の投てきを見せ、日本記録を更新した。
鳥取県立境高校の野球部時代の2016年には、甲子園に出場した経歴の持ち主。番組にも、都市対抗野球の生中継にゲスト解説で出演したことがある。
やりがカメラ貫通寸前の迫力映像
半袖姿の森田京之介キャスターが取材に訪れたのは気温20℃の沖縄。シーズン開幕の大会となる2月末のドバイグランプリに向けて、高橋選手が最終調整の合宿を行っていた。
まずは、やりが実際にどんなものかを、高橋選手に聞いた。重さは800グラム(女子は600グラム)で、他の投てき競技に比べると軽いが、「軽いから遠くに飛ぶわけじゃなくて、風の影響を受けやすいので、絶妙な重さだと思います」と高橋選手。人差し指と親指の2本で弾くように投げるイメージだという。
助走は、練習の場合は約30m。高橋選手は20歩走り、やりを後ろに引き始めて20歩、最後の7ステップで投げる感覚が体に染みついているという。森田キャスターが併走すると、置いていかれるほどのスピードだった。
高橋選手は練習でも、50m級の投てきを次々と披露。番組では投げる姿をさまざまな角度から撮影し、あわや衝撃映像という迫力のシーンを、地面に設置していたカメラがとらえた。飛んできたやりが目の前に刺さり、リプレイを見た森田キャスターがのけぞるほど。視聴者のコメント欄も「えぐい、ビクってなった!」「カメラ貫通されそう!」「?思わず避けた!」というチャットで盛り上がった。
見えない位置でやりをリリース
スタジオの長﨑さんが驚いたのは、同じ投げる競技をやっていても、リリースポイントが全く違うこと。高橋選手は、後ろに引いた状態のやりを前に投げる際に、手がこめかみの辺りに来たタイミングでやりをリリースしているそうだ。
「ソフトボールだと、自分の目で見える場所で(ボールを)離すんですけど、高橋選手の場合は見えない位置で投げているから、全然違う競技だなとあらためて思いました。ボールを見えていないところで離したら不安になってしまいます」と長﨑さんは話す。
森田キャスターのやり投チャレンジは?
今回も森田キャスターは、競技にチャレンジ。投げる位置や動作を高橋選手に教えてもらうが、長いやりを投げるのは難しいようだ。姿勢が不安定だと、頭にやりが当たる可能性もある。「見えないところで離さないといけないイメージがあって、避けちゃう感じ」と恐怖心をもらした。
野球のサイドスローのように投げてしまい、肩を痛める場面も。真っすぐに投げるアドバイスを受け、スムーズな投てきが刺さった時は、気持ち良さを感じるという。
立ったままで約5mを投げ、助走をつけての投てきは断念。「ちょっと練習したらできるという感覚はなかった。全力で投げきる行為をどうやったら正確にできるんだろうと思うぐらい、繊細な技術が詰まっている」と感想を語っていた。
石田駆も合同練習、刺激を受け合う関係
その他の投てき競技と同じくやり投も助走が大切で、高橋選手によると助走が8割、投げが2割だという。スタジオでその話題になった時、「走りの専門家」として、画面にピアノを弾く謎の人物のシルエットが登場した。番組ではおなじみとなった石田駆選手。パラ陸上100mでの上肢障がいT46クラスの日本記録保持者だ。
合宿では、競技場のトラックに石田選手の姿も。最近ではピアノを弾く映像で紹介されることが多く、走る姿を見た森田キャスターは「ピアニストじゃなくて、ちゃんとアスリートだったんですね」と話しかけていたが、放送のBGMでは石田選手のピアノ演奏が流れていた。
石田選手は、高橋選手との合同合宿で参加しており、普段の練習拠点も同じ。石田選手は「競技のことでも話したりします」、高橋選手は「(石田選手の)走りを自分で見て盗んだりしています」と、お互いに刺激を受けている。
高橋選手が1歳上で、一緒に温泉などにも行く仲。トヨタスポーツセンターに置いてあるピアノを石田選手が弾くのを、目の前で何回も聴かされたという。
キャッチボールで「グラブスイッチ」を披露
最後に、森田キャスターの希望で高橋選手とのキャッチボールが実現。高橋選手には「継続は力なり」と書かれた高校時代のグローブを持参してきてもらった。左手で捕球後にグラブを瞬時に持ち替えて、左手で返球する「グラブスイッチ」を見て、森田キャスターは感動していた。
2人でキャッチボールをしながらのインタビューでは、家族とのエピソードも聞けた。高橋選手は「お父さんに『健常者の人が百回素振りするんだったら、千回しないと追いつかないぞ』みたいなことをずっと言われていて、それはずっと継続していました」と野球をしていた頃を振り返った。
当時の経験は、現在も競技をする力につながっている。陸上への転向を最初は反対していた父親も、現在は「この世で一番応援してくれる存在」になった。高橋選手は「生でパラリンピックという舞台で見てもらうのが一番の親孝行かなと思って、今頑張っているところです」とパリへの想いを語っていた。
2023年の高橋選手は、7月にパリで行われる世界パラ陸上選手権など、重要な大会が続く。番組を見ていた総務人事本部の東崇徳本部長はチャットで、6月に岐阜で開催されるジャパンパラ陸上を「これはみんなで行かなあかん」と、応援を呼び掛けていた。
車いすテニス国枝慎吾の引退に寄せる、三木拓也選手の想い
なお、番組の冒頭では、車いすテニスを世界の第一線でリードしてきた国枝慎吾選手の引退会見を受けて、同じく車いすテニスのトヨタアスリートである三木拓也選手のインタビューが紹介された。
本人から引退を聞かされた瞬間は「ついに来たかと言うか、寂しいのか、悔しいのか。やっと勝負の土俵に上がれ始めてるかなっていう部分で、でもそれ(勝利)が叶わなかった自分に対しての情けなさとか、いろんなことを考えました」と言う。
そして、会見について「障がい者スポーツの認知度も一段も二段も、人生をかけて高めてくださった。記録以上に大きな足跡を残してくださいましたし、残された選手でどれだけそれを魅力的なものにしていけるか。そのバトンを渡してもらったと、背筋を正されているような会見でもあったと思います」とコメントした。
トヨタイムズスポーツではこれからも、三木選手をはじめ、陸上の高橋選手や石田選手、佐藤圭太選手、村岡桃佳選手らパラ選手たちも全力で応援していく予定。日々の鍛錬を競い合うアスリートの魅力をお伝えしていくので、お楽しみに!
毎週水曜日11:50からYouTubeで生配信しているトヨタイムズスポーツ。次回(2023年2月17日)は世界で戦うトヨタアスリートを特集する。世界を転戦する車いすテニスの三木選手に、オーストラリアを拠点に活動した経験のある走幅跳の芦田創選手がインタビュー。フランスを拠点に戦う棒高跳の山本聖途選手にも話を聞く。ぜひ、お見逃しなく!