WEC富士6時間耐久レースを、1-2フィニッシュで飾った小林可夢偉代表と平川亮選手が生出演! レースの詳細はもちろん、WECにおけるクルマづくり、今後の展望、チームの雰囲気まで見どころ満載の内容です!!
9月14日に配信されたトヨタイムズ放送部は、3年ぶりに日本で開催されたWEC(FIA世界耐久選手権)を特集。スタジオでは、第5戦の富士6時間耐久レースを1-2フィニッシュで飾ったTOYOTA GAZOO Racing(TGR)チームから、ドライバーを兼任する小林可夢偉代表と平川亮選手が生出演した。レース結果はもちろん、WECでのクルマづくりや来年への展望、ドライバーの個性、特別な前哨戦まで幅広く、そして深く迫っていく濃密な内容の放送となった。
TGRの2台が1-2フィニッシュ
放送の3日前に富士スピードウェイで行われたWEC第5戦は、平川選手らの乗る8号車が優勝、可夢偉代表らの7号車が2位。最上位の「ハイパーカー」のクラスで、TGRのGR010ハイブリッド2台が最高の結果を出した。この週末は、ほかにも全日本ラリー選手権やWRC、ニュルブルクリンクで行われた12時間耐久レースでもトヨタのクルマが活躍していた。
これらの結果に対し、豊田社長からの「世界の色んな道でクルマを鍛えてくれているドライバー達みんなに感謝! そして、ドライバーたちと一緒にもっといいクルマづくりを実践してくれているメカニック、エンジニア、工場の仲間たちにも感謝! これからも、もっといいクルマづくりをみんなで心ひとつに続けていきましょう! 」というコメントが紹介された。
小林可夢偉の誕生日を視聴者が祝福
3日前に凱旋優勝を果たした平川選手と可夢偉代表は、スタジオでも晴れやかな笑顔。ル・マン24時間をそれぞれ今年と昨年に制した日本人ドライバーが、並んで座る豪華なツーショットだ。
番組ではふたりのプロフィールを丁寧に解説。放送前日に可夢偉代表が誕生日を迎えていたことが判明すると、視聴者から祝福のコメントが。平川選手が日焼けしている理由についても明らかにされた。
同僚のドライバーについても、ゲストのふたりが紹介した。7号車のホセ・マリア・ロペス選手はチームのムードメーカー、マイク・コンウェイ選手は繊細だが、レースで帳尻を合わせるのが上手いという。8号車のセバスチャン・ブエミ選手はよくしゃべり、ブレンドン・ハートレー選手は年下の平川選手にとって、面倒見が良くて頼れる存在だそうだ。
WECドライバーが水素エンジンにもチャレンジ
レースの約1週間前、日本に到着したTGRのドライバーたちが向かったサーキットは、富士ではなく、もてぎ。放送部の特別企画として行われた、スーパー耐久のROOKIE Racingチームとのレース対決に参加するためだった。
水素エンジンでのタイムアタック対決は、水素カローラとコースを熟知しているモリゾウ選手が勝利。WECのドライバー2人は、初めて乗ったとは思えない順応ぶりを見せたが、敗れて悔しがっていた。ブエミ選手は、富士で優勝した直後にも「リベンジしたい」と語っていたほど。
このタイムアタックの走行データを、「モリゾウの運転をもっと上手くする男」こと佐々木雅弘選手が分析。モリゾウ選手とコンウェイ選手、それぞれの凄みについて詳しく解説していた。
また、デビュー1年が経過した水素エンジンについて、可夢偉代表は「国内ではいろいろ展開できて、世界的に可能性を理解していただくフェーズに入っている。外国人ドライバーが乗って、どう感じるかをフィードバックされたりすることによって、(海外の関係者も)水素や内燃機関の可能性に着目している。カーボンニュートラルのソリューションの一つとして、ポジションも上がった」とコメントした。
可夢偉代表と平川選手も出場したチーム対決の結果は、ぜひアーカイブを見ていただきたい。
チームとしてのヒトの力がWEC勝利へのカギ
WECでのクルマづくりの重要性について、森田京之介キャスターは富士の現地で取材。元チャンピオンでもあるTGRヨーロッパの中嶋一貴副会長は、「世界のトップのレベルでクルマの信頼性を鍛え、そしてヒトの力を鍛え、というところが、WECの1番大きな意義」と語る。
クルマは、レース前にホモロゲーション(認証)を通ると、それ以上の開発は禁じられている。そこから性能を引き出すためには、たとえばエンジンの最大出力が決められた中で、出力を上げていく過程をいかにドライバーがコントロールしやすくするかなど、さまざまな微調整が求められることになる。
「24時間を戦ってドライバーが乗りやすいクルマでないと、最後までいいパフォーマンスを出すことはできない。極力イコールコンディションになるようなルールなので、最終的にレース結果の違いを作るのはヒトの力。ドライバーもそうですが、メカニックやエンジニア、チームの総合力としてのヒトの力で勝ちを取りにいかないといけない」と中嶋副会長。
可夢偉代表も「最後にどこでタイム差を出すかは、ドライバーが気持ち良く乗れるか、自信を持って自分らしく乗れるか。車の細かい一つ一つの調整になっている」と言い、チーム内でのコミュニケーションの円滑化に努めているという。
GR010ハイブリッドにとっては、パワートレイン部分が東富士研究所で生まれた縁があり、地元でのレースだとも言える。平川選手は「しっかりと皆さんの想いも乗せて走りたい」と話す。
TGRのピットに森田キャスターが潜入取材
森田キャスターは、ピット裏やTGRのピットにも潜入取材した。タイヤを温めるヒーターなど、WECならではの設備も発見。ピット内では映像のところどころにボカシが入っているのも、最新技術が集約されたレースのリアルな雰囲気を感じさせる。
ピットを案内した中嶋副会長は「チェッカーを受ける時は、ピットウォールというスタンドにみんな行って、最後にクルマを迎える。その瞬間が耐久レースを戦っている一番の醍醐味」と話す。この言葉がある意味で、今回の放送の“前フリ”となることに。
可夢偉代表は、お客さんの層や、キャンプをしながらレースを見る人など、WECの雰囲気がいつもの富士でのレースとは全く違っていたと語る。平川選手はいつも通りの気持ちでレースに臨めたというが、ドライバーたちで夕食に行く場所を予約する「晩ご飯担当」には苦戦したそうだ。
特別なレースで平川亮が優勝
いよいよレース当日。森田キャスターの「さあ!3年ぶりに聞こう! このWECの音!」の実況と共にスタートした後、番組ではレースシーンやオンボードカメラ、ピットなどの映像をハイライトで紹介した。
ポールポジションだった可夢偉代表らの7号車を抜き、64周目で平川選手らの8号車が首位に。そのままチェッカーを受けてTGRが1-2フィニッシュ。レース直後の可夢偉代表やドライバーたちの生のコメントも、番組ではしっかりと取材しているのでお見逃しなく。
スタジオに戻り、平川選手は「世界選手権を日本で走るという特別なレースだったんですけど、誰しもが本当に完璧な仕事をして、まだ優勝に浸っているような感じ」とコメントしていた。
チェッカーを全速で駆け抜ける理由とは
ここで可夢偉代表から、チェッカーを受ける時には写真を撮るので、スローダウンして走ってほしいと平川選手に注文。「みんなで旗を準備して待っているんですすけど、『あれ、通り過ぎた?』みたいな(笑)。余裕があるからゆっくり走ってくれたらいいんですけど、全然気にせず全開で行ってしまって」と言う。
平川選手は「トラウマがあって、何年か前に最終コーナーでガス欠して。僕がチェッカードライバーをやる限りは、スローダウンすることはないです」と全開宣言。可夢偉代表も「えーっ!」と苦笑していた。
2020年のスーパーGT最終戦では、ゴール直前に失速して優勝と年間王者を逃し、プロとして最後まで気を抜きたくない平川選手。一緒に戦ったチーム全員のために、みんなで勝利の瞬間を感じたいという可夢偉代表。どちらの立場も、なるほどと理解できるだけに、とても興味深いやりとりとなった。
番組を見ていた豊田社長も、コメントで「可夢偉、チーム全員を労う発言、代表としてすごいな」「全開。いつもガチ、本気がいいね」と、それぞれをリスペクトしていた。
参戦相次ぐ来年からが本当の戦い
富士での第5戦で、平川選手らはドライバーズランキングでも逆転して首位に。残すはバーレーンでの1戦のみで、アルピーヌとの直接対決。「前でゴールした方がチャンピオンなので、しっかり準備して勝てるようにしたい」と平川選手は意気込む。
来年からWECは大きく変わる。フェラーリ、ポルシェ、キャデラックが参戦し、2024年以降はBMWやランボルギーニも走る予定。中嶋副会長は「ここまでTGRとしてル・マンを5連覇できていますが、そこで培ったものが本当の意味で試されるのが来年以降。絶対に負けられない戦いになると思います」と話し、スタジオの可夢偉代表や平川選手も豊富を語った。
70分を超える“耐久レース”となった今回の放送。それでも可夢偉代表は、カーボンニュートラルに向けた新たな試みなど、まだまだ話し足りない様子だった。ぜひ最終戦も、そして来年以降も勝ち続けて、彼らが再び笑顔でスタジオに戻ってくることを期待しよう!
毎週水曜日11:50からYouTubeで生配信しているトヨタイムズ放送部。次回(2022年9月21日)は、陸上競技の円盤投げを特集する。トヨタアスリートの中でもナンバー1のパワーと称される湯上剛輝選手をゲストに迎え、円盤投げの知られざる魅力をお届けする予定。ぜひ、お見逃しなく!