湯上剛輝選手をスタジオに迎え、知られざる円盤投げの世界を探究! 森田キャスターによる挑戦はまさかの早々ギブアップ。その他、ハンデを生かした独自の集中方法や驚きのウェイトトレーニング風景など充実の内容です。
9月21日に配信されたトヨタイムズ放送部は、陸上競技の円盤投げを特集。見事な筋肉を誇る湯上剛輝(まさてる)選手をスタジオゲストに迎え、日本記録奪還への想いや、聴覚障害というハンデを強みに変える考え方などを語ってもらった。パワー勝負と思われがちな円盤投げだが、実は技術も非常に重要で、初めて挑戦した森田京之介キャスターは悪戦苦闘。でも最後は、お約束の「パワー!」が欠かせない!
日本記録奪還に向けて、みなぎる筋肉
放送が始まって原稿を読む森田キャスターの後ろには、ヤリスを持ち上げる男性のオブジェが。そしてカメラに映った湯上選手本人は、予想を上回るムキムキぶり。視聴者のチャット欄は「僧帽筋すご」「美しい~」というコメントや筋肉の絵文字であふれ、スケート部の吉永一貴選手も「パワー」とコメントしていた。
湯上選手は高校から円盤投げを始め、2018年に62m16の日本記録(当時)を樹立。聴覚障がい者の国際大会であるデフリンピックでも、2017年大会で銀メダルを獲得している。ちなみに身長は183cm、体重107kg。
日本記録は62m59に更新されており、「調子を崩した時期が続いたんですけど、ここ最近で記録をまた狙えるところに戻してきたので、記録奪還に燃えております」と湯上選手は語る。
2kgの鉄のどら焼きが50mを超えて跳ぶ!?
VTRでは、トヨタスポーツセンターで練習中の湯上選手を森田キャスターが取材した。まず驚かされたのが円盤の重さで、「想像より重いかも。片手で持っているとしんどい」と森田キャスター。2kgある男子の円盤を60m飛ばすこと自体が驚異的だが、円盤が10枚入った練習用のボックスを湯上選手は軽々と運んでいた。
競技は直径2.5mのサークルから、約35度の範囲内に円盤を投げる。投てきは基本的に3回で、上位の選手はさらに3回プラスして計6回となる。
投げる時は円盤を掴まずに、指を添えるように持つ。「円盤は指の中を転がるように出ていって、最後に人差し指でバチっとスピンをかけるんですよ」と、湯上選手は投げ方のコツを教えてくれたが、この投げ方が実は非常に難しかった。
湯上選手が実技を披露すると、円盤は推定50mを超える距離まで次々と飛んでいく。視聴者からは「フリスビーみたいに飛んで行った。鉄のどら焼きが」「バレエのように美しいフォーム」といったコメントも。様々なカメラアングルから円盤投げを見られるのは貴重なので、ぜひ見ていただきたい。
飛距離を出すのに重要なのが足の運びで、1回転半してビシッと体を止めることが求められる。湯上選手は「最後の左足には400kg以上のすごく大きな力がかかるので、それに耐えるだけの強い体幹、強い足腰のパワーが必要になってくるんです」と、筋肉がここまで鍛えられたルーツを語った。
無音のハンデを競技への集中力に変える
森田キャスターが気になったのは、一投ごとに湯上選手が補聴器のような器具を耳から外しているシーン。先天性の聴覚障がいがある湯上選手は、電気信号を聴覚神経に伝える人工内耳を普段は着用している。
外す理由は2つあり、その1つは「シンプルに勢いが強すぎて、吹っ飛んでしまう」と湯上選手。もう1つは「人工内耳を外すと何も聞こえなくて、本当に無音の世界になってしまうくらい。でもそれを利用して、無音の世界だからこそ集中しやすく、自分の世界に入りやすくなると思っています」と言う。
無音で集中した状態を「明鏡止水」と湯上選手は例える。ハンディキャップを逆手に取って競技に生かすプラス思考に、視聴者らも驚嘆していた。
「野球投げ」の森田キャスター、無念のリタイア
もちろん森田キャスターも、恒例のチャレンジで円盤を投げてみた。ところが、これまでの競技とは違って悔しい結果に終わってしまった。女子用の1kgの円盤を投げても、回転がうまくかからず、思ったようには飛んでくれない。ついには膝をついて崩れ落ち、「体験は諦めます」とリタイア宣言。
自分が野球のように投げてしまうことに気づき、森田キャスターは「肩痛くならないですよね」と質問。湯上選手は「円盤選手は肩を痛めないと思っています。肩をそこまで使わないというか、どちらかというと胸筋をよく使うので」と答えていた。
このやりとりに、番組を見ていたアスリートキャスターの小塚崇彦さんからは「森田さん野球出身ですからね」と、“相方”をフォローするコメントが寄せられていた。
これが本当の「パワー!」
番組では、湯上選手が肉体を作り上げる最前線も取材。バーベルを持ち上げるウェイトトレーニングに密着した。森田キャスターが挑戦してもビクともしなかった60kgを、ヒョイと持ち上げた湯上選手。80kg、90kgと徐々にバーベルの重さもアップ。「ウェイトは楽しいけど、しんどいですね」「やりたくねぇ」と心の声も漏らしながら、180kgでトレーニングを締めくくった。
ウェイトトレーニングをする理由について、湯上選手は「筋肉をつけたり維持するためというよりは、力を発揮するため」と話す。肩にバーベルを担いで深くしゃがむフルスクワットでは、270kgを持ち上げたそうだ。
スタジオでは、森田キャスターが「せっかくなんで腕の筋肉も近くで見たい」とリクエスト。湯上選手はここぞとばかりに、「腕ですか。パワー!」とポーズを取って自慢の筋肉を見せつけた。放送部ではこれまで幾度となく披露された「パワー!」だが、まさに真打ち登場といったところだ。
さらに、トヨタアスリート同士でのパワー対決を、あくまでも空想で番組が企画。ラグビーの姫野和樹選手ら3人の猛者と綱引きしたらどうなるかを、湯上選手に聞いてみた。森田キャスターは「パワー自慢のトヨタアスリートの方、手を挙げていただければ」、湯上選手は「初代チャンピオンは僕がもらいます」と呼びかけ、企画の実現に向けて乗り気だった。
円盤投げ選手がフリスビーを投げたらどうなる?
湯上選手の次なる目標は、自己記録の更新、そして日本記録の奪還だ。放送の1週間前には、2025年の次回デフリンピックの開催地が東京に決定したばかり。前回大会はコロナ禍の影響で、日本選手団が大会途中で出場辞退となってしまった。湯上選手は「ちょっと悔しい気持ちもあるので。東京デフリンピックに向けて頑張っていきたい」と抱負を述べていた。
森田キャスターの「フリスビーが得意なんじゃないか」という素朴な疑問に、自前のフリスビーを実際に投げて全力で応えていた湯上選手。その飛距離は必見だ。視聴者からのコメント紹介でも、「川で石投げやってほしい。何回跳ねるのか」といった質問や、中京大学の先輩でもある小塚さんからの「試合用の円盤ってmy円盤なんですかね?」に対して、丁寧に回答していた。
スタジオでもVTRでもずっと笑顔を絶やさず、放送後には自身のツイッターで「勝手にネタ使ってすみません!!」と、「パワー」のネタ元であるなかやまきんに君に謝っていて、湯上選手の人柄が伺える。この放送を見れば、円盤投げに関心が薄かった人も湯上選手のファンになるに違いない。パワー!
毎週水曜日11:50からYouTubeで生配信しているトヨタイムズ放送部。次回(2022年9月28日)は、シーズン開幕が迫る男子バスケットボールを特集する。新体制になったアルバルク東京を元キャプテンの正中岳城さんが取材し、チームの変化を徹底分析する予定。ぜひ、お見逃しなく!