
鍛えた稼ぐ力で、未来への投資ができるようになってきた中、潜むリスクとは?5年後、10年後、50年後を見据えるからこそ疎かにできない課題を労使で見つめ直した。
喫緊の課題は仕入先・販売店にも
今回の労使協には、トヨタ労使に加え、トヨタ系販売店、レンタリース店の労働組合を束ねる「全トヨタ販売労働組合連合会(全トヨタ販労連)」や、トヨタグループの「全トヨタ労働組合連合会(全トヨタ労連)」も参加。
仕入先では、人材不足や物価上昇、生産変動を受け、事業継続が難しくなっているところもあるという。
販売店でもエンジニアをはじめとする人手不足の問題があり、地域格差も深刻になっている現状が伝えられた。

5年後、10年後、50年後の働き方は、550万人の仲間とともに考えていかなければならない。
宮崎副社長は「自動車産業全体で働く仲間の皆さんが、頑張って働きたいと思っていただけるような環境をつくっていかなければならないと、肝に銘じていろいろ話をしています」と語った。
シェアドリーダーシップ
ここまでの議論を受けて、江下副委員長は、働き方の変革へ「シェアドリーダーシップ*」の考え方を紹介した。
*組織のメンバー全員がリーダーの役割を担うという考え方で、一人ひとりが組織のことに責任を持って考えて活躍する。
江下副委員長
マネジメント側は指示を出すだけで、考えや想いを聞かない、数値目標や納期管理にとらわれてメンバーに主体性を与えない。逆にメンバー側は言われたこと、指示されたことだけやればいい。マネジメントの顔色をうかがい忖度する。そして、何か起こったときは、マネジメントの責任にする。
こういった状態に陥ってしまう気がしています。それらから脱却して、本当に我々の創業時のリーダーズのように、全員が対話で、ビジョン、仕事の目的、全体像を共有する。チーム内での相互信頼を基盤に、個々の強みを生かした役割をしっかり担う。一人ひとりが主体性を持って、チームのためにリーダーシップ、フォロワーシップを全員が発揮していくという形にしたいと思っています。
トヨタには本当に多様な人がたくさんいます。各自が主体性を持ち、それぞれが目標に向かって関わり、さらに仕入先、販売店の皆様とともにチームワークを発揮することでトヨタや自動車産業はまだまだ成長できると思っています。
一人ひとりのやりがいを原動力に、未来の不確実性に対応していくべく、柔軟かつ強固な文化、組織へと変革していきたいと強く思いました。
今日確認しあった労働人口の減少、サプライチェーンの課題、世界競争の激化、こうした厳しい現実に直面しながらも、未来を見据えて、仲間とともにやりがいのある職場を築いていかないといけないと思っています。

最後に佐藤社長と鬼頭委員長が、この日の議論を総括した。
佐藤社長
我々は好業績に潜むたくさんのリスクにさらされています。戦いに勝ち抜いていかなければいけません。この戦いに勝ち残るためには、もっといいクルマづくりを続ける、ここに尽きると思います。
ここで言う「もっといいクルマづくり」は、開発をするということではなくて、クルマを企画して、開発をして、製造して、それを販売店の皆様のもとに運ぶ。
販売店の皆様がお客様に届けてくださって、その後、お客様のカーライフを販売店のエンジニアたちが「安心の気持ち」とともに支え続けてくれる。
この一連のサイクルを実現することが、「もっといいクルマづくり」をするということだと思います。
ですから、「クルマづくりに関係ない」という人はいない。総務も人事も経理も物流をやっている人間も、みんなもっといいクルマづくりに関わる仲間です。
その仲間で一丸となって、今我々が向き合うべきリスクをどう乗り越えていくか、考えていくことが大切だと思います。
今のままではこの環境を10年後、あるいは、50年後の後輩たちにバトンを渡していくことはできません。今我々が行動しなければ未来は変わらない。
大切なことは、まず行動すること。そして、全員がマインドチェンジをしていくことだと思います。
「言っても変わらない」と思っていることを、もう1回、勇気を出して声に出してみてほしいです。自分の身近なこと、小さな1歩から今を変える行動をとってほしいです。
声を出す、あるいは、行動することを諦めないでほしい。機能の壁を越えて、クルマ屋としてつながることを、みんなで挑戦してほしい。
チーム全員でそういう行動をとっていけるような次のステップを、ぜひとも考えていきたいと思います。
そのときに思い描いていただきたいのは、自分たちの仕事のゴールです。
何が自分たちの仕事のゴールなのか。自分の上司に褒められるよりも、お客様の笑顔が見られる方が、何倍も、何倍も嬉しいはずです。
自分たちはなぜ自動車産業で仕事をしているのか。クルマ屋でいること。これは人生を懸けるに足る、素晴らしい仕事だと思っています。
続けて佐藤社長は江下副委員長が説明した「シェアドリーダーシップ」についても受け止めを語った。