連載
2025.03.28
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キレイごとで済まされない家庭と仕事の両立。トヨタの実態を公開する

2025.03.28

トヨタの人事施策の裏側を紹介する連載「全員活躍をどう実現するか」。今回は家庭と仕事の両立について。

「同僚に迷惑をかけるかも…」

「本当に取っていいのか悩んだ…」

これらは、トヨタで育児休職(育休)を取得した男性社員の言葉だ。

多くの企業にとって「家庭と仕事の両立」は重要なテーマである。しかし、人それぞれ価値観が違えば、家庭環境も違う。時期によって業務の忙しさも違う。

実態として、男女問わず約7割もの人が「子育てと仕事の両立が難しい」と感じているデータもある。

出典「MS-Japan調べ( https://www.jmsc.co.jp/knowhow/topics/12550.html )」 

そこで「両立支援制度」を利用したトヨタ社員の本音、さらには人事担当者が何を考えているかも聞き出してみた。

男性も育休取得!とはいうものの…

素形材技術部でチームリーダー(TL)を務める辻竜也には、3人の子どもがいる。

2人目が生まれた2016年に初めて育休を取得。その後、3人目が生まれた際にも制度を利用。現在は時短勤務を活用し、同じくトヨタで働く妻と子育て中だ。

そんな辻だが、最初の育休取得時は大きな不安があったという。

素形材技術部 計測DE課 辻竜也 TL

当時、男性で育休を取る人があまりいなかったので「男なのに取るの?」という声もありました。

私のキャリアを心配してくれていたのですが、それほど珍しいことだったんです。私自身も「周囲にどう思われるか、この先の会社生活は大丈夫か」大きな不安がありました。

迷った辻TLだったが、自分のことだけを考えるのでなく、妻の今後のキャリアも考え取得を決意。

職場に前例がなかったこともあり、当初はまわりの反応も淡白だったが、最終的には上司が背中を押してくれた。

だが、直近で子どもが生まれた際には「おめでとう!育休取りなよ!」「これからのことは一緒に考えていこう!」と声をかけられ、8年前とは職場の雰囲気も目に見えて変わったという。

素形材技術部 計測DE課 辻TL
会社で決められた制度でもありますし、応援してくれる上司がいることで、不安や葛藤を乗り越えることができます。

また、今は時短勤務ですが、時間が限られているので逆に優先順位をつけて効率的に働けることに気づけました。自分もかつての上司のように迷っている人がいれば背中を押したい。男女問わず制度を利用してほしいですね。

トヨタの両立支援は、育休や時短勤務だけではない。妻の海外転勤が決まり“一時的にトヨタを辞めた”社員にも話を聞いた。多くのトヨタ社員ですらきっと知らない、そんな制度があるのだ。

一度、トヨタを辞める制度?

ソフトウェアPF開発部の今泉俊介主任は、妻の海外転勤が決まった際、現地で一緒に暮らすことを決めた。当時はコロナ禍で、妻が知らない国で外出も許されず、孤独になることを避けてあげたい想いがあったという。

その際に利用したのが、トヨタの「キャリアカムバック制度」だ。

特定の条件下でトヨタを退社せざるを得なくなった際、一定期間を経たのちに再入社する機会を提供する制度だ。

ソフトウェアPF開発部 IVIシステム開発室 今泉俊介 主任

退社後は現地の大学に通おうかなと思っていると、当時の上司から「それじゃダメだ。日本ではキャリアの空白期間を気にされるので、今後の人生も考えて就職すべき」とアドバイスをもらいました。

キャリアについて、長期的に考えられていなかったと気づかされました。

そこで就職活動に力を入れ、現地にオフィスのあるスタートアップに入社。妻も、自分も、キャリアを犠牲にすることなく一緒にいられたし、僕自身も働き方の多様性を学べました。

そして、妻と一緒に帰国後はトヨタに再入社。

「制度がなければ、自分の結婚生活の半分は別居になっていました。自分だけでなく、妻にも描きたいキャリアがある。それを両立できる制度があったことがありがたい」と語る。

家庭にはいろんな事情がある。だからこそいろんな制度が必要なのだ。そんな制度を考える人事側ではどのようなことが議論されているのか。担当者に聞いてみると…