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2025.02.12
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550万人の仲間にむけて 労使の話し合い始まる 要求申し入れ

2025.02.12

2025年の労使協議会が始まった。トヨタの、自動車産業の未来に向けて何ができるのか。本音の話し合いの先に待つものとは。

2月12日、トヨタ自動車労働組合から会社に対して労使協議の申し入れが行われた。

トヨタの労使協議は、賃金・一時金を一番の目的としていない。

トヨタや自動車産業を取り巻く環境を正しく認識し、課題解決に向けて本音で話し合うことを大切にしている。

「人への投資」のあり方とは

では、労使は2024年どのような話し合いを行ってきたのか。

「来年はペースを落としてでも、『挑戦の余力づくり』と『足場固め』に本気で取り組む必要があると考えています。」2023年末、佐藤恒治社長から従業員にあてたレター)

この年、労使協議会(労使協)や労使懇談会(労使懇)を通じて、高負荷が続く職場の実態が浮上。佐藤社長は2024年前半を、「踊り場」の期間として働き方を見直すため、“アンドン*の紐を引いた”。

*生産ラインにおいて異常を他者に伝えるための設備。

「私たちは『一律』をやめたいと思っています。」2024年第1回労使協、河合満おやじ)

佐藤社長のレターから約2カ月後に開催された第1回労使協。一律の数値目標に縛られ過ぎてしまう職場、納期遵守の意識が強すぎるあまり、安全な作業環境に不安を残す現場の声が上がった。

議長の河合おやじは、クルマづくりにおける役割や経験、体制や設備など人も職場も「一律ではない」とし、「職場ごとに多様な本音の話し合いができる労使関係の原点が、より一層大切」と呼びかけた。

「長年のしがらみで突破できないこともあるので、能率・生産性については、1年間凍結したいと思っています。」(同第2回労使協、伊村隆博 生産本部長)

一律の管理目標や開発日程に縛られた働き方に対して、会社から出された宣言。評価の仕方や生産性の理解浸透と、健全な職場の指標として何が必要か議論し、改善を進めることとなった。

「職場からは『教えてもらう機会がない』と聞きますが、自分の成長は自分で取りに行くもの。」(同第3回労使協、宮崎洋一 副社長)

数字だけの追求や評価を見直そうと話し合う中で、キャリア形成への向き合い方を問われ、宮崎副社長が鳴らした警鐘。仕事に何を求めるのか、自分はどう成長したいのか、議論するきっかけとなった。

4回の労使協では、佐藤社長が3つの切り口で「総合的な人への投資」を示した。それが「モノづくり環境の整備」、「やりがい・成長を後押しする仕組みづくり」、そして未来に向けて人の力を高めていくための「賃金・一時金」だ。

佐藤社長は「『人への投資』のあり方を話し合ってきたからこそ、『やりがい』という、本質的で、最も重要なテーマにたどり着いたのだと思います。」と労使協の総括で語った。

「人への投資」はその後、仕入先や販売店も加わった“拡大労使懇談会”でも話し合われた。811月には労使懇も開催。認証問題の再発防止について労使で話し合う中で、低調な職場のコミュニケーションといった課題も見えてきた。

550万人の仲間とともに

そして今年も、労使間で深めてきた1年間の議論の“総決算”が始まった。

申し入れに際して、鬼頭圭介委員長は、組合員だけでなく550万人の仲間への想いも伝えた。

鬼頭委員長

昨年を振り返りますと、グループ各社での認証問題に続き、トヨタにおいても認証問題が発覚しました。

自動車産業に携わる者として、責任の重さを痛感するとともに、お客様を始めとするステークホルダーの皆さん、仕入先の皆さんに、多大なるご心配とご迷惑をおかけすることが多くありました。

私たちは、お客様や仕入先、販売店の方々を含む550万人の仲間の支えがあり、仕事ができていることを決して忘れてはいけないと改めて感じることが多かった1年でした。

その仲間の皆さんの現状に目を向けてみますと、人手不足や物価上昇といった厳しい環境にさらされています。

その上、度重なる生産計画の変動やリコール対応など、私たちの都合によって、多大なるご迷惑をおかけしていることが、まだまだ多くあるかと思います。

そのようなこともあり、「トヨタは業績も好調で余裕がある」、「トヨタだけ恵まれている」といった声があることも実情です。

改めて、トヨタで働く私たち一人ひとりが、これまで大切にしてきたことを振り返った上で、将来のため、仲間のために、何を変えなければならないのかを常に考え、具体的な行動につなげていかなければいけないと思っています。

本年の要求は、それぞれの職場において足場固めを行いながら、1台でも多くのクルマをお客様にお届けするために、目の前の課題にも粘り強く取り組んできた、組合員一人ひとりの努力に報いるために、職場と議論を重ね、68千組合員の総意として決定したものです。

しかし、550万人の仲間と心をひとつにできていない状態で、持続的な成長を遂げることはできません。

私たちは、これからも「労使共通の基盤」を軸に、自動車産業の明るい未来のために、これからの議論を通じて確かな道筋を描き、全員で共通の目標に向かい、歩みを進めていきたいと思っています。

鬼頭委員長が語る「労使共通の基盤」については、見直される契機となった2019年の労使協や、過去のトヨタイムズ記事も合わせてご覧いただきたい。

今年の申し入れ内容で、新たに追加されたのが「総合的な人への投資」。(昨年は「議論項目」、「賃金」、「一時金」3つだった)

鬼頭委員長は、「将来に向けた全員活躍の加速や、未来への投資につながるアイテムについても労使協議会での議論を皮切りに、年間を通じて持続的に議論をさせていただきたい」と語った。

なお、職種や資格に応じた賃上げ、7.6カ月(夏:3.8カ月、冬:3.8カ月)の一時金についても要求している。

申し入れを受け取ったのは、今年も議長を務める河合おやじ。60年以上にわたって現場を見続けてきた。

河合おやじ

認証問題や品質確認による、度重なる稼働停止があった中でも、一人ひとりが、自分の持ち場、立場で、「1日でも早く、お客様にクルマをお届けしよう」と考え、行動してくれたこと、またモビリティカンパニーへの変革に向けて、チャレンジしてくれたことに、改めて感謝を申し上げます。

一方で、今自動車産業を取り巻く環境は、厳しさを増しています。

100年に一度の大変革期と言われて久しいですが、依然として、生きるか死ぬか、という状況に置かれていることに変わりはありません。

その中で、私たちが今後も生き残り、成長し続けるためには、商品力を磨き、生産性の向上を積み重ねていくことが必要です。

「足場固め」においては、生産性・能率に関する目標管理を凍結し、各職場で、さまざまな活動を進めてくれましたが、いずれの活動も将来的には、「今までよりも、多くのお客様へクルマをお届けする」ことにつながらなければなりません。

そのためには、「今まではこうやってきた」とか、「こういうもんだ」ではなく、意志を持って、やり方を変えていくことが重要だと思います。

労働組合の皆さんには、会社にとって耳の痛い意見も、率直に伝えていただきたいと思います。

550万人の仲間のためにも、私たちがしっかりとクルマをつくり続けることが大切です。

つくるモノも変わり、働くヒトも、働き方もどんどん多様化する中で、安全・品質を確保し、トヨタの強みである改善と、人材育成が進む強い職場・強い現場をつくっていくこと、そして、5年後、10年後、50年後も、後輩たちが、イキイキと、笑顔で働けるモビリティカンパニーであること。これらを目指して、この難局を乗り越え、生き残っていくために、労使で何ができるか、本音で徹底的に話し合っていきましょう。

河合おやじの言葉を受けた鬼頭委員長も、「組合としても一人ひとりが自律して将来に向けて『何をすべきか』、『何ができるか』を徹底的に話し合っていきたいと思います」と応じた。

今後のアクションについても、組合からも提案し「必ず一人ひとりの具体的な行動につなげていくための場にしていきたい」と続けた。

5年後、10年後、50年後の未来に向けた労使の話し合いは深まるのか。トヨタイムズは今年もすべての労使協の様子を伝えていく。

1回は来週219日の予定。

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