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2024.08.22

本音のコミュニケーションへ不断の努力を 足場固めで課題共有

2024.08.22

ミスの早期発見、対応にはリードタイムの短縮が必要と認識した労使。足場固めを進めてきた中で浮上した課題とは?

アンドンの紐を引く前に

2つ目の話題は、職場のリソーセス不足について。

組合から語られたのは、認証業務対応や不具合対応、プロジェクトの仕様変更に対して十分な人員の確保が間に合っていない実態。長時間労働で仕事を回すことに精一杯になり、このままではやりがいや人材育成も進まず、不安や焦りが生じているという。

そこで、マネジメントとメンバーが働く環境やリスク対応などについて共通認識を持つことで、「しんどい」や「不安」といった漠然とした声が、具体的な課題を訴える声に変わるのではないかと提案があった。

デジタルソフト開発センターの皿田明弘センター長は、リソーセスや仕事のやめかえ*などを計画段階から共有することは、「開発する上で有効」と受け止める。ただリソーセスなどは、全体で見ると充足していても、もっと小さな組織単位だと不足していることがあり、「一律ではない」とも強調した。

*仕事をやめる・変える活動のこと。

そんな中、安易にアンドンの紐を引くようになってはならないと釘を刺したのは宮崎洋一副社長だった。

宮崎副社長

アンドンは引かなきゃいけないし、危ない状態に突っ込んではいけないのはその通りだと思いますが、自分たちは計画経済の中で、関係する皆さんとともに生きています。ラインオフの日程を変えると、誰かに影響が出るので、ガンバリズムの風土を殺しちゃいけないと思うんです。

安易に(アンドンの)紐を引くのではなく、紐を引く前に何が起こっているかが皆さんと共有され、上位に伝わり、上位が大きい目で見て優先順位を付けて、やめるもの・入れ替えるもの(を判断する)。そういう会話をしながら極力計画経済を守っていくようにしなきゃいけないと思います。

リソーセスについても、頑張るのかもしれないけれど、足らなかったら足らないことを上位に言って、入れ替えなども含めて(対応していく)。根っこは同じなのかなと皆さんの話を聞いて改めて思いました。

そう考えた時、今置かれている状況を(上位に)言いづらくしていることは何か? 聞いてくれなかったとか、過去からずっと繰り返されているとか、そこが根っこなのかなと思います。ですので、我々は(話を)聞いていくスタンスを持つ、聞いたらそれに対してちゃんとアクションをする。それが全ての答えなのかなと強く感じました。前提をクリアにしながらもう少し皆さんの本音を聞いてみたい。

また、労使協でも話題になった、人も職場も一律ではないという観点について、中嶋裕樹副社長は、「視点が少し欠けていた」と自戒も込めて語った。

中嶋副社長

プレジデントの立場でお話しさせていただくと、どうしても部単位だとか、室単位程度で、物事を判断していたきらいがあります。

MSカンパニーで全171もグループがありますが、この171のグループそれぞれに課題を洗い出していただきました。そうすると同じMSカンパニーで仕事をしているのに、全然グループ間で状況が違っていました。

例えば余力づくり。余力というのは、業務を通じて自分が成長していると感じられるかどうかだと思っています。そういう(余力創出についての)ヒアリングをかけると、やはり全然(余力を)感じていませんし、余力自体もどういうことか理解できていませんというグループがありました。

そのグループの実態を見ると、残業時間が他と比べて圧倒的に多いという相関関係が見えてきました。

僕たちも大きな単位で(考えてしまっていて)、言葉を選ばず言うと、少し綺麗事を言っていたのではないか。グループごと、最終的には個々人レベルにいたるまで、どういう問題があるのかを見ていく、そういう視点が少し欠けていたんじゃないかなと。

こういう場での議論は、どうしても全体の議論になるかもしれませんけど、せっかく職場でコミュニケーションをとっていただいている、ここに参加しているメンバーからしますと、やはり粒々(小さな単位)で見ていく(必要がある)。どこに課題があるのか、プロジェクトをいくら調整しても影響がほとんどなかった理由は何なのか。さかのぼっていくと、先ほどの安全実験の話じゃないですけれども、設備の老朽化、ダミーが足りなかったという問題に行き着く。

宮崎さんが言われたように、そういった話が上がってくることも必要ですし、我々自身がそういう問題点を粒々で見ていく。双方向からやることによって、現実がもう少しつまびらかに見えてくるのではないかと感じています。

江下副委員長は、「リソーセスの前提や見通しは労使で共有する。その上で何か(認識の)ギャップがある場合は、我々からも『ここは原単位の改善をする必要がある』というように、全社で進めていかなければならない」と応じた。

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