ミスの早期発見、対応にはリードタイムの短縮が必要と認識した労使。足場固めを進めてきた中で浮上した課題とは?
“あるべき平準化”とは
さらにクルマ開発センターの石島崇弘センター長は、高負荷な状態が続く衝突試験現場での実状と、取り組みを紹介した。
石島センター長
職場では技能員、技術員が膝詰めで毎日負荷の調整をしています。ただ、実務レベルとなると、どうしても抜本的な打開策が打ち出せていない。「もう頑張ってやるしかないな」と、やや諦めモードになっていたのが先月ぐらいの状態でした。
今回1人の現場リーダーが、勇気を持って私にこの実状を伝えてくれたことが、大きな変化のきっかけになりました。
「技術員も技能員も皆、何とかしてやり切りたいと、その想いがすごく強いと言ってくれました。でもこれだけの負荷オーバーは、現場を任されている自分から見ると、やはりやれるとは思えない、絶対に迷惑をかける。メンバーに申し訳ない」と伝えてくれました。
すぐにその実状をレポートラインの中嶋(裕樹)副社長、新郷(和晃)CPO、そして佐藤社長に相談させてもらい、ファクトを整理しました。
その上で即効性のある手当として、まず評価の優先順位をもう1回見直して、最初にやるべきこと、少し我慢できることを整理する。もう1つはボデーメーカーや協力会社、海外の衝突試験の機関も使い、もう少し負荷分散をしようと手を打っているところです。
現場の工数を圧迫している要因には、設備の老朽化や、衝突実験用の古いダミー人形を使いまわしていることもありました。ダミーも衝突試験で(クルマに)乗せてぶつけるわけですから、怪我(故障)をします。手当してあげなくてはならないが、その工数がまた負担になっている。
皆ギリギリまで何とか自分でやってやろうという想いを持っている方が非常に多い。これはトヨタの責任感を示した良い風土なのですが、10年続くか考えたときに、やはり難しい。“あるべき平準化”ということを考えなければいけない。
声を出すという初動は、会社を変える大きな原動力になる。ぜひ躊躇せずに、声を上げていってほしい。
組合からは、江下圭祐 副委員長が、「我々組合員だけではなく、上司の方も含めて、お客様のためにもやり切りたい、という考えが根強く残っているのかな」とし、次のように続けた。
江下副委員長
業務プロセスやファクトを整理するとか、物事の流れ、そして優先順位も含めて、全社として仕組み・プロセスに落とせるようなことをやっていかないと、我々に根付いた価値観はなかなか変わっていけないと強く思いました。
全社でプロセスとして構築できるように、これもまさに足場固めだなと思います。
2点目の信頼関係ですが、上司・部下、横の仲間も含めて、本音で話せる仲間とは信頼関係がベースにあります。
仕事には厳しさも必要ですが、本音を言い合えるのは、あらゆる層で信頼関係がベースにあることを、今一度認識して、職場でコミュニケーションをしていきたいと思います。
このほか事務系の現場からは、佐藤社長が語っていたジョブディスクリプション*の明確化や7つのムダの排除に取り組み、変化が現れ始めていることが報告された。
*担当する業務についての詳細な職務内容。
「事技職・業務職・技能職の混在する職場で、その中でも主任・指導職といろいろいますので、そこで何すべきか。さらに、トヨタ自動車がやるべき仕事と、外の関係会社さんにお願いする仕事も層別しています。組合のメンバーも入って、何をすべきなのかを一人ひとり考え、それに合った組織をマネジメントの皆さん中心に組んでいただいています。」(生産・TPS・病院支部)
「7つのムダを徹底的に意識して、それを労使双方でなくしていくためにさまざまなアクションを起こして、成果が出始めているところです。その結果として余力が生まれ、やっとGMとコミュニケーションをとれる現場が少しずつできつつあります。」(事業・営業・CF支部)