認証事案の再発防止策や足場固めに動くトヨタ。その中で開催された労使懇談会。労使が抱く課題はどこにあるのか?
“7つのムダ”の徹底排除を
仕入先、販売店の現状については、熊倉和生 調達本部長と赤尾克己 国内販売事業本部副本部長が報告した。
「『頑張れよ』という(声をいただく)ことが本当に多く、『生産計画通り人を準備しているのだから、しっかりつくってほしい』、『急に稼動を止めることをなくしてほしい』と、これが本音だと思います。我々がしっかり取り組むことで、仕入先にも信頼をいただけるように進めていきたい」。(熊倉本部長)
「『一体トヨタグループはどうなっているの?』とお話をいただいているのが今の現場です。その上、今の状況では、販売店の営業スタッフは、『申し訳ございません』とお詫びをすることと、どうしても欲しいクルマがつくれていないことで、お断りをすることが仕事になっています。後ろ向きな対応をしていただいているのが現状だと思っています。(中略)売りたいときに売れるクルマをたくさんつくってほしい。切実にそういう感じです。元気になっていただくためにはそれに応えることだと思っています」。(赤尾副本部長)
2人の言葉を受けた宮崎洋一副社長は、生産・販売計画通りに進めていくために、改めて体制整備の重要性を強調した。
宮崎副社長
現場で計画が変わることの、生活も含めた影響の大きさは、皆さんも実感したのではないかと思います。これは我々もそうですし、熊倉さんや赤尾さんからもお話しいただいた通り、我々の産業の裾野の広さの大きさゆえに、(仕入先、販売店への)影響はものすごく大きかったと思っています。
ですので、まずは我々が計画通りに仕入先や販売店の皆さんに仕事をしてもらえるような環境、条件をしっかりとつくっていかなくてはいけないと強く感じたんじゃないかなと、ここが労使共通の想いになったのではないかと思います。
一方で、認証事案についても、先ほど佐藤社長や中嶋さんからもお話しがあった通り、基準適合性は確認されたということなので、これからは全工場で生産をしっかりと運営できる状態が整ったということだと思っています。これからは皆さんと一緒に計画した台数をしっかり出していくことに向かって専念したい。
そのためにも、我々がまずやらなければならないことは、リードタイムの短縮と異常が見えるようにしていくことの追求だと思います。現場もそうですし、事技も“7つのムダ”を徹底的に省いて正味率を上げて、一人工*をもっともっと追求していかなければならないと思っています。
*一人工の追求。従業員一人ひとりの作業の「ムダ・ムラ・ムリ」を削減して、作業に要した人員と想定人員との差を極力近づけて生産性を高めようという働き方。
そのためのアクティビティが足場固めになっていかなくてはいけないと思います。足場固めをし、リードタイムを短縮し、正味率を上げて一人工の追求をし、計画した台数を皆で一緒になって出していくことにまず専念していきたい。
経営陣から語られた、認証事案をめぐるそれぞれの受け止め。佐藤社長が言うように、トヨタでは、生産~販売まで各工程でリードタイムを短縮し、異常の早期発見、対応できる体制づくりが求められている。
労使双方はこれまで、労使協などさまざまな現場での話し合いを通じて、そのための足場固めを進めてきた。
後半では、足場固めのための活動を通じて浮かび上がってきた課題について、労使の話し合いの様子を紹介する。