認証事案の再発防止策や足場固めに動くトヨタ。その中で開催された労使懇談会。労使が抱く課題はどこにあるのか?
再発防止へ2つの観点
佐藤社長
国土交通省より適切な認証業務の取り組みについて抜本的な改革を促す是正命令が出され、私自身が、国土交通省で受領をしてまいりました。
同時に、国土交通省の立入検査などの結果を踏まえて、基準適合性の確認をいただいた車両、つまり、生産を停止していた3車種については、基準適合性の確認をいただき、生産再開に向け動いているところです。
今回の是正命令の受領の際に、追加の調査で指摘いただいた案件については、主に相互承認による海外当局に認可をいただいている案件を中心とするものです。これにつきましても社内で基準適合性の確認を終えておりますので、基本的に海外生産分も含めて、生産を停止する予定はありません。これからしっかりと生産を挽回していくフェーズに移っていくということだと思っています。
まず、この是正命令を私自身がしっかりと重く受け止めて、対応していかなければいけない。同時に、実は1月に調査の指示があってから約10年分にわたる認証業務の確認、課題の摘出を、多くの皆さんと取り組んできました。本当に膨大な作業を誠実に、確実に対応いただいたからこそ、次の再発防止のステップに皆で移ることができていると思っています。調査、課題の出し切りに対して、全力で取り組んでいただいた皆さんに、心からお礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございます。
また、本案件に伴って、仕入先様、販売店様に対しても、多大な影響がありました。そうした対応いただいた皆さんもたくさんいらっしゃる。そういう中で多くのステークホルダーの皆さんとともに、未来に向けた前向きな取り組みを進めていくべく、全力で取り組んでいきたいと思っています。
今回、是正命令をいただいたポイントは2つあると理解しています。まず1つは、「認証業務全体に対する経営の関与の甘さ」。いろいろなプロセス管理も含めて、経営がしっかりと認証に対する責任を理解し、行動できていたかを、我々自身が反省し振り返っていかなければいけないと思っています。
2つ目は、「認証業務に対する理解をもっともっと全社で深めていく必要がある」という観点です。開発し、認証用のデータを取得し、それを届ける。ここまでのプロセスは、トヨタの中では仕組みとしてある一定の構築ができていた。ただ一方で、それが後から第三者的に見たときに、体系立ててわかりやすく整理できていたのかどうか。データ整備の状況も含めて、我々が認証ということに対してまだまだ至らない部分があることも確認できました。
この2つの観点についてしっかりと再発防止に取り組んでいくことが大切だと理解しています。
ただ、その再発防止を進めていく上で、ぜひ皆さんと共有しておきたい考え方があります。
豊田(章男)会長と会話をしている中で、私自身も学びを得たことですが、どうしても再発防止といいますと、完璧な仕組み、完全な取り組みをイメージしがちです。しかし完璧な再発防止は本当に機能するのかという観点をお互いに持ちながら、実効性のある取り組みを考えていかなければいけないと思っています。
ともすれば流出防止、あるいは未然防止の仕組みがどんどん増えていって、チェックシートや過去のトラブル集が1ページ2ページと増えていく。そういう仕組みが整えば整うほど(仕組みに頼って)考えなくなっていき、その仕組みに依存し、何か変化点が起きたときに、自らそれに気づくということができにくい体質の組織になっていってしまう。
会長からは「トヨタは完璧な会社じゃない。けれども、異常に気づける会社・現場でいよう。異常に気づけたときに、それに対してすぐ行動できる、そんな現場をつくっていこうよ。それがトヨタらしさだよね」という言葉をもらいました。本当にその通りだと思います。
そのためには、いろいろな仕事の仕組みを、全体俯瞰して見られるように、例えば認証であれば、(工程の)上流から下流まで、誰がどんなことをして、どのように物と情報が流れているのか理解するところからやっていかなければいけない。その中で、今まで当たり前だと思っていたことが、本当は必要ないんじゃないか、ムダなんじゃないかということも含めて、我々も一緒に見ていく必要があると思います。
そういう取り組みをして、ムダをなくしていくことで、リードタイムを短縮していけば、何か起きたときのアクションが早く取れる。それこそが本当の意味での再発防止になっていく。ミスを減らしていく努力、ミスが起きた時に対応を早くしていく努力を、ムダを排除し、リードタイムを短縮して、実現していく。これが、我々が取り組んでいく再発防止の根っこにあるべき考え方だと思っています。
1月から足場固めということで、各職場でいろいろな取り組みをしていただいています。けれども、まだまだ道半ばだと思いますし、今日もいろんな職場の本音、あるいは現状を声として挙げていただくことで、一緒に向き合って、変えていこうというエネルギーにしていけるといいなと思っていますので、今日はそんな場になるように、ぜひ労使ともに本音で話をしたいなと思っています。