認証事案の再発防止策や足場固めに動くトヨタ。その中で開催された労使懇談会。労使が抱く課題はどこにあるのか?
トヨタで働く全員が自分事として認識を
佐藤社長に続き、6月の調査結果公表に際して、豊田会長とともに登壇した宮本眞志カスタマーファースト推進本部長と、トヨタグループの責任者が集まり、認証業務の理解を深めるTPS(トヨタ生産方式)自主研究会に参加した中嶋裕樹副社長が、それぞれ所感を述べた。
宮本本部長
今回の認証事案には深く関わっており、特に監督官庁、あるいはメディアの方々、(トヨタの)外の方々とお話をさせていただく機会も多く、そのときに切実に感じたことをお話しさせていただきたいと思います。
1つ目は、世間の方々からは「トヨタはいいクルマを出している」と言っていただけていることです。皆さん一丸となって、いいクルマをつくろうと大変な努力をしていただいている。その成果も出ています。これは紛れもない事実だと思います。
一方で、今回の事案を見てみますと、性能や装備、価格などに本当にこだわっていただいていますが、それが少し先行しすぎて認証に気が回っていなかったんじゃないか、とも世間の方々から言われます。技術的な知見が高いゆえに、少し先行してしまったところがあるんじゃないか、知見があるから少し勝手な判断になってしまったんじゃないかとご指摘いただいております。
いいクルマとは、もちろん性能は大事ですが、最後に国に認可をいただいて、認めていただいて初めて、いいクルマだと思います。したがって、認証という最低限かつ最重要な仕事を、一度見直すべきだと痛切に感じました。
2つ目は、ややもすると今回の認証事案は製品の認証に焦点が当たっており、2010年の品質問題も同様で、技術の問題という認識になりかねないのですが、私はそうではないと思います。認証というのは、製品の認証はもちろん、認可いただいた後、1台1台その通りのクルマをつくることができているか保証して、お客様にお渡しするところまで含めて認証です。
したがって、これはトヨタにいる全員が関わっているという認識を持つべきだと思います。もう一度トヨタ一丸となって、この問題の再発防止に取り組む必要があるんじゃないかと思います。
(認証業務の事案について)技術の方に一生懸命調べていただいたのですが、同時に工場の方にも、自分たちの検査が正しいのかという観点でつぶさに全工程を見直していただきました。
正しい仕事を正しいプロセスで行うということをもう一度一人ひとりが見直す、本当に良いチャンスをいただいた。これをやることで、一人ひとりが自信を持って仕事をやれるんじゃないかなと思います。つまり、これが佐藤さんに言っていただいている足場固めそのものじゃないかと思います。
今回の再発防止と(足場固めを)決して別物として捉えることなく、トヨタ一丸となって前に向かって進んでいきたい。
中嶋副社長
しっかり再発防止に努めていくことが我々の責務だと思っています。その中で、風土自体をしっかり見直していくことも必要であり、豊田会長自らがリーダーシップを発揮されて、TPSの自主研をやっていただいています。最初は、日野、豊田自動織機、ダイハツ、そこにトヨタがサポートしながらでしたけれども、当然、今回の新たな問題に対しましては、トヨタ自動車本体もそうですし、一緒に仕事をしていただいているトヨタ車体やTMEJ(トヨタ自動車東日本)のメンバーも入って、自主研を進めています。
認証業務の全体をつまびらかに理解している人間は残念ながら存在していません。そのぐらいリードタイムが長いですし、企画から販売に至るまで非常に多岐にわたる関係者が関与しているということです。さらには、その仕事の判断基準が残念ながら不明確な部分がたくさんあり、それぞれ属人的に任せてしまっているということも見えてきました。
時間はかかるかもしれません。今回の認証事案は開発の初期から最終工程までつながっていくと考えますと、我々自身の仕事のプロセスそのものだと思っています。我々自身の正しい仕事を正しくやっていくための、原点を取り戻す、現場の主権を取り戻す闘いだと思っています。
佐藤社長、宮本本部長、中嶋副社長の言葉を受け、鬼頭委員長も、トヨタで働く全ての人が、自分事として捉えて正しく仕事をしていくこと、そして労使で力を合わせて、信頼回復に努めていく考えを示した。
続いて、トヨタの現状を数字的に把握するため、8月1日に発表した第1四半期の決算内容について、山本正裕 経理本部長が解説した。