現場で自ら考え、動いた経験は、たとえ失敗しても成長につながる。一律をやめ、一人ひとりがやりがいを持って働けるように、議論は熱を帯びていく。
当たり前も疑い、思い切って変えていくとき
2時間に及ぶ議論の最後、河合満おやじは、「現場を信じよう」と伝えた。
河合おやじ
先回私は、「人も職場も、“一律”に扱うことはやめよう」と言いました。そして、「モノづくりは安全・健康がベースで、その次が品質・量・コスト。この順番を、絶対に守らなければならない」と伝えました。
この2つを実現するためには、現場を信じること(が大事)です。
生産・開発・販売といった、それぞれの現場が、やるべきこと・やりたいことを、自ら考えて、話し合って、決める力を、もっと信じようと思います。
この14年間で、「もっといいクルマをつくろう」「町いちばんの会社になろう」という軸のもと、良い仕事が何なのかを考えられる力を、皆さんはつけてきたと思っています。
14年前、「リーマン・ショック」「一連の品質問題」「東日本大震災」「タイの洪水」など、大変なときにどうだったでしょうか?
「出金を抑えよう」と大号令が降りてきましたが、現場では、何から手をつけたらいいかわからず、右往左往しているのが実態でした。
この3年間、コロナ禍で生産が止まったとき、私は全社の現場を回りました。
自分たちのできること、品質問題の解決や安全性の向上、また、工程変更による生産性向上、保全教育、他社への支援、中にはマスクとか、フェイスシールドをつくったり、ボランティアにも行っていただいたりしました。
一つも指示なく、自ら考え、全員が動き続けてくれました。この様子を見て、私自身も、変化を感じました。
それは、商品や収益にも表れてきています。もちろん、現場だけでクルマがつくれるわけではありません。
安全、品質、原価、人事など、専門部署や担当者のサポートがあって、現場が仕事に専念できます。何より、上位の皆さんが、現場で、一緒に悩んでくれるからこそ、より広い視野で、現場がさらなる力を発揮することができます。
まだ会社の中には、過去から染み付いてきた、数値、仕組み、ルール、部署間のしきたり、マネジメントのあり方のようなものが、たくさん残っているのが事実です。
現場のメンバーや、各層のマネジメントを信じて、これまでの当たり前も疑って、思い切って変えていくときだと思います。
現場で自ら考え、動いた経験は、結果として上手くいかなかったことも、悔しい気持ちも含めて、未来につながる、一人ひとりの働きがいや成長の原動力になります。
引き続き、この労使協議会はもちろんのこと、各職場の労使で、話し合っていきましょう。
河合おやじの言葉を受け、鬼頭委員長は「一人ひとりが、主体的に行動していくことが、本当に重要になってくる」と応じた。
鬼頭委員長
河合さんから、「それぞれの現場が、やるべきこと・やりたいことを、自ら考え、話し合い、現場が決める力を、もっと信じよう」というお話がありました。
これは豊田会長がグループビジョンを発表した際に仰った「主権を現場に戻す」ということにつながっていると思います。
「現場の決める力を信じる」ためには、それぞれの職場が、前後工程で何が起こっているのかをもっと正しく知ることが必要であることに加え、一人ひとりが受け身ではなく、主体的に動いていく。仕事の意図をしっかりと汲み取って、自ら行動していくことが、重要になってくると思います。
我々労働組合としても、横のつながりをもっと強化していけるよう、取り組みを進めていきたいと思います。
本日は「数値管理や開発日程に縛られた働き方からの脱却」と「双方向のコミュニケーション不足をどのように解消していくか」を中心に議論をさせていただきました。
これまでは、画一的な人事育成が求められていたため、個性を消し、組織に合わせて働くことが重視されていたと思います。
しかし、正解がわからないこれからの時代においては、一人ひとりがもっと良い仕事をしていくために、自分は何を大切にしたいのか、仕事を通じて何を身につけたいのか、誰のために、どのような笑顔をつくりたいのかを常に考え、行動していくことが重要だと考えています。
しかしながら、今のトヨタには、ここが決定的に足りていないと思います。
個々人が想いを持って、仲間と共有して、助け合っていくことが当たり前になる職場を、労使で力を合わせてつくり上げていきたい。
そのためにも、仕事の管理ややり方だけではなく、あらゆる事柄に対して、徹底的に見直していく必要があると考えています。
今後も引き続き、あらゆる階層での、本音の話し合いを継続させていただきたいと思っています。
ここまで2度の労使協議においては、社内の足場固めを中心に話し合いをさせていただきました。
宮崎さんからもお話があったように、トヨタ以上に、サプライチェーン全体でお支えいただいている各社の状況は厳しい状況であると伺っています。
この状況を打開していくためには、もっと深刻になっていることに心を寄せて、仲間から本音で実態を話していただける関係づくりをしていくことが、本当に大切だと思います。
労使でこれからもたゆまぬ努力を、しっかりと続けていきたいと考えています。
次回の第3回の労使協においては、トヨタ内はもちろんのこと、お支えいただいている産業のみなさんのために何ができるのかも含めて、未来に向けた取り組みについての課題、具体的なアクションについて話し合いをさせていただければと考えています。
第3回労使協は3月6日に開催される。