現場で自ら考え、動いた経験は、たとえ失敗しても成長につながる。一律をやめ、一人ひとりがやりがいを持って働けるように、議論は熱を帯びていく。
組合からの提案
改めて議題は、組合にとって「一番重要な課題」という「現場とマネジメントの双方向のコミュニケーション」へ。
生産・TPS・病院支部
GMがほぼプレーヤーになってしまっている職場では、GMが実務に追われて、なかなかメンバーとの会話やコミュニケーションの時間が取れていない。
ときにはお昼休みに会議が入るぐらいスケジュールがびっしりと埋まり、声掛けするのもはばかられる。相談時間をつくってもらうのが申し訳ないぐらい忙しい状況になっています。
このような悪循環が進んでいくと、GMとメンバーの関係性も希薄化してしまい、上司・部下の信頼関係にも影響してくると考えています。
「定期的にGMとの1on1の時間をいただいている。仕事上のコミュニケーションをさせてもらっているけれど、たわいもないコミュニケーションや雑談がほぼない状態の中、本音の話をしようと言われても難しく、表面的な会話に終始してしまう」
そんな憂いの声も聞いています。
このような本音が言えない関係になってしまうと、基本的な仕事の目的や必要な情報の共有も滞ってしまい、メンバーのやりがいやチャレンジにもつながりにくくなってしまっています。
この問題提起には、出席した幹部職からも「部長間の横の連携が取れていない」「即やる、全部やる。そして頑張るという文化も強い」といったコメントがあった。
現場とのコミュニケーションよりも実務を優先させてしまい、一番大事な信頼関係を築くことができない。こういった実態に対し、本来マネジメントが行うべき安全・品質の確保、メンバーとの対話を促進するため、組合から5つの提案がなされた。
【組合からの提案】
1.マネジメントの役割。今までの仕事の管理だけではなく、“人”の管理も加えたプロを目指していくこと。
2.マネジメントの配置。役割を全うできる管理スパン、あるいは副GMやチームリーダーなど役割を分けることも含めた配置の検討。
3.マネジメントの育成。マネジメントのスキルを見える化し、育成強化までやりきること。
4.マネジメントの評価。仕事の管理だけでなく、職場エンゲージメントなども含め人の管理も評価していくこと。
5.権限の委譲。本部長から部長、部長から室長やGM、GMからチームリーダーなどに権限が委譲されること。あわせて、各層での役割と責任が見える化されること。
組合からは「マネジメントの皆さんに、ただ向き合ってくださいと言っているばかりではダメだと思っている。組合員も与えられた条件の中で、とにかくやる文化、降りてきたものが与件になっており、情報や前提を取りに行けていない傾向がある。仕事の意味を考えて、上に横に働きかける姿勢が必要。ぜひ組合員だけではなく、職場全体が活き活きと主体的に働き続けられるようにできれば」と呼びかけた。
自動車産業の魅力を高めるために
また今回の労使協では、2月に発表された2024年3月期の営業利益見通し4.9兆円についても解説があった。
仕入先や販売店など、さまざまなステークホルダーの支えがあってこそ出せる収益。
「仕入先の人材育成・職場の改善などにつながるように考えていく」、「販売店には不正問題や度重なるリコールなど、本当に苦労をかけている。こうしたお客様対応も含め、販売店は人が全て。働く環境、働き方、処遇の問題、活動の力水になるような、サポートを一緒にやっていきたい」といった意見が出た。
宮崎副社長は、自動車産業全体の魅力向上につなげていく決意を述べた。
宮崎副社長
14年かけて自分たちは地道に、それこそマラソンを続けてきたから、今の収益が出ている。
我々に部品を納めていただいている仕入先の皆さんも、一緒になって改善を積み重ねてくれた結果、今日がある。今日皆さんが職場の実態として、訴えてくれた応受援率の高さ、定着率の問題も、全ての仕入先さんに共通している問題だと受け止めています。
さらに、販売店の皆さんがお客様とコミュニケーションしていただいている中で、持続的成長に向けてもう一度足場固めをしようと言っています。
今回の収益は、皆さんに支えられ、物流現場の皆さんにも、土日に働いていただいて、クルマを運んでいただいているおかげです。
我々がお客様からいただいた原資をもとに、皆さんと一緒になって、魅力ある自動車産業をつくっていくこと。これを労使でしっかりやっていかなきゃいけないと思っています。
あわせて、未来投資をやりながら、しっかりと我々として源泉をつくって、皆さんとその循環を続けていきたい。
Tier1だけではいけなくて、Tier2、3(サプライチェーンの)深いところまで含めて、自動車産業だと思っているので、皆さんと一緒に働きかけを進めていきたいと思っています。
東本部長からは、「今回の数字を基準とするのではなく、利益をいかに将来に向けての投資に使っていくかが大事だ」と豊田章男会長の言葉を紹介した。