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2023.03.01
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職場の閉そく感を打ち破れ 働き方に多様性を

2023.03.01

挑戦や家庭との両立を阻む壁を壊すことはできるのか。多様な働き方の実現に向けて、労使それぞれの立場から本音の意見が交わされた。

制度利用しやすい環境整備を

ここから議論は、家庭と仕事の両立をはじめとする「働き方の多様性」に移っていく。

クルマ開発センター デザイン領域のサイモン・ハンフリーズ統括部長は、外国人の立場から、選択肢と相互理解の重要性を説いた。

ハンフリーズ統括部長

新体制でCBO(Chief Branding Officer)に就任し、ブランドづくりをリードするハンフリーズ統括部長

トヨタの未来にとって、人々とアイデアの多様性は非常に重要です。現代社会における多様な働き方のニーズを無視することはできません。誰もが果たすべき役割を持っています。

文化、国籍、人が違えば世界観も違ってきます。異なる視点、自分とは違うやり方に敬意を表し、そして理解をすることで、ソリューションは改善し、そしてイノベーション・創造性を最大化することができます。

私自身も多様性を体現する一人です。マイノリティとも言えるでしょう。

33年間、日本で働いてきました。簡単なことではありませんでした。しかし、私は幸運にもトヨタで働くことができ、私の外国人としての制約を理解してくれました。

同時に私の強みも理解をしてくれた結果、人とは違うやり方でトヨタに貢献することができました。

日本、トヨタにおいては、心理面でのサポートも必要だと思います。安心があって、はじめて「私は取り残されたりしない」と感じることができます。そして「ファミリーファースト」でもいいと感じることができます。

デザインにおいて、個性と多様性は欠くべからざる条件です。デザイン内のカラーマネジメント室ではデザイナーの72%、GMの75%が女性です。これは誇るべき事実です。彼らはすでに多数派です。

育児と仕事の両立をしている女性デザイナーは38%に上ります。10年前はほとんど0だったので、大きな改善だと思います。

ただし、手当や勤務時間を調整すれば解決するという問題ではありません。さきほど組合から意見があったように、「自身で選択する」ということが重要だと思います。

そのために、会社としては一人ひとりのキャリア形成にあった選択ができるようにサポートをしていきます。

これからは、それぞれがお互いを理解し認め合い、「自分らしく活躍」できる会社をつくっていきたいです。

画一的な考えや価値観を取り払うことで、安心して働ける職場づくりに取り組んでいきしょう。

多様な働き方を進めていく上で、女性の働く環境の改善は重要事項だ。2人の子供を育てる母親としてコメントしたのは渉外部の土屋紗織室長。

土屋室長

「両立」は職場だけではなく、職場と家庭両方にまたがる課題なので、魔法の杖のような解決策は残念ながらありません。

そうした中で、もっと未来に期待できる多様な活躍を後押ししていくために職場に何ができるか考えてみました。

例えば、休業の有無、期間を問わずに、一人ひとりの目の前の成果をしっかり評価し、年功序列を実質的にやめていく思い切った転換が大事だと考えています。

これにより、育児休業者のみならず、介護や病気、家族の転勤で休業を余儀なくされている人が、トヨタに戻ってきたときに、大きなハンデを負わずに、もう一度活躍できる場が与えられるのではないかと思います。

若手についても、十分に能力があるのに、年次が足りないから昇格は待ってもらう状況を抱えがちです。このように人事評価を改善していくことで、適材適所に配置することが可能になると考えています。

制度は拡充していても、それを使える環境がなければ絵に描いた餅に終わってしまう。

宮崎洋一次期副社長は、社員にさまざまな制度を活用してほしいと感じつつも、職場の主戦力でもあるという苦しい胸の内を明かす。

これまでアジア圏を中心に海外事業をけん引してきた宮崎次期副社長。4月からはCFO(Chief Financial Officer)の役割も担う

「制度をどうやって充実させていくかと同時に考えなきゃいけないのは、運用が健全にできるような職場環境、リソーセスをどうやって確保するかということ」と続けた。

組合からも仕事に忙殺され、制度利用を言い出しにくいといった声があがり、「制度利用者も、サポートする職場も、お互い気持ちよく利用できる環境を整えないと生きた制度にならない」と訴えた。

ここまでの議論を受け、中嶋裕樹次期副社長が以下のようにまとめた。

中嶋次期副社長

Mid-size Vehicle Company、CV Companyのプレジデントを務める中嶋次期副社長。新年度からはCTO(Chief Technology Officer)の役割も担う

育休制度はしっかりできてきましたし、上司が部下に対して育休取得を促す声が出始めているのは事実です。

ただ、取る方が「キャリアは本当に大丈夫だろうか」と心配になるなど、心理的な安全性がまだ担保されていない。

職場としても、「取ってもらうと(職場運営が)厳しい」という思いがどこかにあるかもしれません。

キャリア、評価を抜きに語り、育休制度の押し売りになってはいけないと思います。

少し長期的視野に立ち、どれだけの困難を抱えて、これだけのアウトプットを出したか、公平に評価できる仕組みが必要だと思いました。

もう一点、サポートする側は、正直、不公平を感じている部分があると思います。

会社として、余力や人員の担保しながら、職場運営をしやすくすることで、制度の利用者と職場両方がしっかりと共存共栄、共感しながら進めていかないと、綺麗事で終わってしまう。引き続き、議論をさせていただきたいと思います。

組合の鬼頭圭介副委員長も、働き方に関する制度の変更や拡充について「これまで組合は公平性を担保していくため、制度の変更を慎重に判断してきた。環境変化が激しく、何が正解か分からない時代を生き抜くため、方向性が間違っていたら柔軟に変更することも視野に、ゼロベースで会社と議論したい」と応じた。

一人ひとり本音のコミュニケーションを

予定時間を越えて白熱した議論。議長の河合満おやじが総括した。

河合おやじ

議論のはじめに、トヨタが変わっていくためには、外に目を向けることが重要だという話がありました。私の9歳後輩の小柳参与も来て、外からトヨタを見た感じを述べてもらいました。

私の経験を少し話すと、入社して30年、ある鍛造メーカーへひと月、派遣研修に行きました。そこで痛感したのは、鍛造一筋でやってきたのに、鍛造のほんの一部しか知らないということでした。

鍛造工程、熱処理工程、型保全などの仕事がありますが、私は30年、「型打ち」現場しか経験がなかった。当時(の人事制度で)はほとんど仕事を変えてもらえなかったので、自分の経験の狭さにショックを受けました。

メーカーの皆さんに「30年も鍛造にいるからよく知っているだろう」といろいろな質問を受けました。鍛造工程には自信がありましたが、熱処理工程は自信がありませんでした。

従って、わかったふりをして、「今日は忙しいから、明日の朝、話します」と言い、トヨタの職場に寄って、専門技能の資料を一生懸命読んで喋りました。

本当にショックを受けましたが、非常に貴重な体験でした。

このことが私の心にずっとあったので、3年前、研修を机上中心から、実践中心の社外研修に全部切り替えました。今年は3次、4次の仕入先にも行ってもらおうと(考えています)。

ただ、外から見るだけだとわからないこともたくさんあります。会社を越えて人間関係を築き、一緒に仕事をする。そこで初めていろんなことが学べる。550万人の仲間にも共感してもらえると思います。

労使で一緒に、もっと外に出て勉強していきたいと思います。

次に育児や看護の両立について話しました。近年、人が多様化したのではありません。昔から、一人ひとり、能力も、知識も、技能も、得意・不得意、やりたいことも、家族構成も、趣味もみんな違います。

しかし、我々は黙々と働いて、規制や制約の枠にはめられて育ってきました。

特に幹部職、基幹職の皆さんは、そういう時代に育てられました。自分たちが育った環境からなかなか抜け出せない。だから部下からの申し入れや意見に即答できない。ちゅうちょして一呼吸置いてしまう。

そうすると、申し入れた人は「やっぱりダメか」となる。もう次は言い出せない。これが現実だと思います。

だからこそ、一緒に働く一人ひとりとのコミュニケーションを大事にして、仕事のお願いしたり、お互いに助け合うということを大切にしていきたいと思います。それがより求められていると感じました。

会社がいろんな選択肢を示すことはもちろん大事だと思いますが、その土台として、一人ひとりが本音のコミュニケーションを取って、それぞれの人生を大事にしながら仕事をする関係が大切だと思います。

めんどう見を大事にしてきたトヨタで働く皆さんなら、必ずできると思います。一緒に頑張りましょう。

一人ひとりが生き生きと働ける職場をつくるため、まずは自らの足元の課題を確認した労使。次回(3月8日)は、自動車産業550万人の仲間へどのように貢献していくかについて議論していく予定だ。

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