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米国記者が直球質問 豊田社長が答えた脱炭素戦略

2022.11.11

BEVシフトが注目される米国で、豊田章男社長がメディアの取材に応じた。1時間のやり取りを一問一答で紹介する。

質問Ⅴ:BEV投資計画を見直す可能性は?

――カリフォルニア州の規制やインフレ抑制法案など、今後の規制に対してどこまで準備できているか? 計画をシフトする考えは?

準備はしていますが、常に現実的なペースも見るようにしています。規制当局に対しては、カーボンニュートラル実現に向けて、「順番は間違えないでほしい」と機会があるごとに申し上げています。

2021年4月の会見の豊田自工会会長。「日本がやるべきことは技術の選択肢を増やしていくことであり、規制・法制化はその次。順番が逆にならないように」と訴えた

私もそうだったように、カーボンニュートラルが本当に正しく理解されているかどうかが出発点だと思います。そして、その次が「目的は何か」ということ。

最後に規制を決めるという順番であるべきだと私は理解していますが、どうしても規制が先行し、解決策の選択肢を狭める動きになっているのが残念。それが本当にユーザーの幸せになるかどうか、私自身は疑問を感じています。

――景気停滞などの環境変化を踏まえて、今後、BEV投資計画を変える可能性は?

いろいろな状況を聞いて、会社として決断をする。そこに物語をつくって説明し、自分で行動して、共感を得るというのが、私自身のビジネスモデル。

永続して、世の中に必要とされる企業になるためには、外部変化に対応することが大事だと思っています。インフレにどう対応していくか、規制にどう対応していくか。

私たちと一緒に自動車産業をつくっているステークホルダーの気持ちを理解する努力をして、ペース配分を決めています

ラスベガスに来ても、(米大手スーパーの)Targetに行きました。米国出張に来るたびに必ず行く場所が、Whole Foodsと(米ハンバーガーチェーンの)In-N-Out Burger。

実際の消費者はどんな顔をして、どんな価格のモノを買っているのか。現地現物で見て、自分自身でモノサシを修正することが大事だと思っています。

それがBtoCビジネスをやっているトップとして、失ってはいけないセンサーじゃないかと思っています。

質問Ⅵ:BEV普及の展望は?

――インフラや鉱物という課題に加えて、米国の消費者はBEV購入に消極的か?

今、カリフォルニア州の規制では、2035年に内燃機関が販売禁止になったり、全米でも2030年に半分をBEVにすることになっていますが、少し現実は難しいんじゃないかと思っています。

今よりBEVは確実に増えます。価格帯やインフラのスピードはよく見極めたいですが、今の状況で言えば、50%は難しいレベルだと思います。

米国の場合は、ほとんどの人が複数台保有そのすべてがBEVになる時期はまったく見通せない

ただ持っているクルマの内、1台がBEVになるのは非常に現実的だと思います。それが何十%になるのか、慎重にいろんな意見を聞いてやっていきたいと思っています。

BEVは重要な選択肢だが、唯一の選択肢ではない」。豊田社長はトヨタのスタンスを改めて示した。

「BEV反対」とくくられがちなトヨタ。しかし、脱炭素に限らず、多様化の時代に「対立をつくらず、共感をつくる」のが豊田章男流であり、トヨタのスタンスである。

今回のインタビューでは、他にも豊田社長のパーソナリティや強い信念が表れた場面がいくつもあった。取材の最後にはこんな言葉も残している。

「この人は本当にクルマが好きな人間なんだ」と皆さんにご理解いただければ、今日のミーティングは大成功。これをスタートに、クルマの未来を一緒につくっていく仲間になってほしい。

クルマ好きがつくるクルマで、共感でつながる仲間とともに未来をつくっていく。ここにも豊田章男流の「トヨタらしい」脱炭素への向き合い方が表れていた。

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