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米国記者が直球質問 豊田社長が答えた脱炭素戦略

2022.11.11

BEVシフトが注目される米国で、豊田章男社長がメディアの取材に応じた。1時間のやり取りを一問一答で紹介する。

質問Ⅲ:他社が水素エンジンをやらない理由は?

――水素エンジンは他のモデルに適用できるか? ほかの会社がやらない理由は?

商品化にはまだ時間がかかります。水素エンジンを使って、日本で昨年5月からレースに参戦しています。

撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY

合計9回のレースを経て、クルマがずいぶん変化してきました。水素エンジンの市販化は、山に例えると、せいぜい4合目を登ってきたあたり。

では、実現可能かどうかもわからない中で、なぜ今、やっているか? 技術というのはこういうものだと思います。こういう機会を与え、プロジェクトを与え、アジャイルにやることで、仲間が集まります

エネルギーの「つくる」「はこぶ」「つかう」で言うと、最初は(「つかう」側は)トヨタだけで、福島県の実証実験のプラントでできたグリーン水素を使いました。

2020年3月に開所された「福島水素エネルギー研究フィールド」(FH2R)。レースではここでつくられた水素を使用している

その後、地熱由来の水素を使ったり、豪州の褐炭を使ったり、福島県以外の太陽光由来の水素を使ったり、エネルギーを「つくる」側での仲間が増えました。

大林組による日本初の地熱発電水素製造プラント

「つかう」側もトヨタだけから、日本の二輪メーカー4社も協力して、水素エンジンの開発に取り組むと発表されています。

以前は、「水素=爆発・危険」というイメージが主流でした。先日、WRCのデモカーの運転でベルギーに行ってきました。水素は危険であるということで、インフラの安全対策に相当な説明が求められました。

しかし、担当者が「ドライバーは誰?」と聞かれて、「社長」と言った瞬間に「やってみてください」に変わりました。

水素を含めて、新しいメニューをつくるとき、最初は危険とリスクが伴います。トヨタの経理部門からも、あなた(記者)よりももっと厳しく「水素エンジンの開発はどうなのか?」と言われています()

でも、私が行動することによって、人の動きが変わります特に、私がリスクを負うことが、世の中の仲間を増やしているひとつの理由だと思っています。

今、トヨタが水素エンジンをやっていることは理屈に合わないかもしれませんが、クルマ好きの仲間に相当応援されていることも事実です。

世の中にクルマ好きの仲間がいるうちは、私の役割はまだあると思うので、今しばらく、わがままをお許しいただきたい。

質問Ⅳ:トヨタはBEVに懐疑的?

――トヨタはBEVに懐疑的と言われているが、どのくらい気にしていて、どう打ち返していくか?

まず、トヨタのステータスを正しく説明します。トヨタはすべてのパワートレーンのデパートと思ってください。

一般の方は、多様化しています。既にBEVをお持ちで、活用している人もいれば、充電設備が整っていない場所に住む人もいます。いろんな方がいます。

我々の説明が足りないのもあると思いますが、一番分かりやすいのは、商品で語ることだと思います。

ぜひトヨタの商品ラインナップを見てください、乗ってください、そして、ご意見をお伺いしたい。そういうアプローチをもっと努力してやっていくことが大事だと思います。

私が申し上げていることも含め、決して、「トヨタがやっていることが正しい」という言い方はしていません。ただトヨタは、お客様や市場に共感してもらい、「今も未来も必要な会社」と言ってもらえるようにしたい

多様化されたお客様に対して、それぞれの好みによる対立構造をつくることは、トヨタとしては避けていきたいと思います。

多様化しているからこそデパート。「こちらの商品がいいですよ」と言うこと自体、デパートの価値を落とすことになると思います。

あえて言うのであれば、どの選択肢でも本気でやっています。今後も、それを商品で示していきたいと思います。

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