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米国記者が直球質問 豊田社長が答えた脱炭素戦略

2022.11.11

BEVシフトが注目される米国で、豊田章男社長がメディアの取材に応じた。1時間のやり取りを一問一答で紹介する。

9月、豊田章男社長が出張先の米国で現地メディアの取材に応じた。

テーマはカーボンニュートラル(脱炭素)。これまで、日本自動車工業会(自工会)の会長として、その向き合い方について積極的に発言してきた豊田社長。

最近では、ベルギーで行われたWRC(世界ラリー選手権)で水素エンジン車を披露し、多様な選択肢の必要性や各国の事情にあったアプローチの重要性を訴えるなど、海外での発信も増えている。

豊田社長による水素エンジンヤリスのデモラン。8月、WRC第9戦・ラリーベルギーにて

来年5月には、日本でG7サミット(先進7カ国首脳会議)も予定されているが、多様な選択肢への記者の理解は国によってまちまち。

BEV(電気自動車)に消極的は本当か?」「投資計画を変える予定は?」「環境団体をどう納得させるか?」など、米国の記者からはBEVを中心に率直な質問が飛んだ。

記者の反応や理解度を見ながら、基礎から解説した豊田社長のインタビューを一問一答形式で取り上げる。

質問Ⅰ:トヨタの脱炭素のスタンスは?

――トヨタのカーボンニュートラルへのスタンスは? なぜ、BEV一辺倒の見方が多いと感じているか?

トヨタのカーボンニュートラルを「過去」「現在」「未来」で説明させてください。

過去20年間、トヨタはトップランナーでした。HEV(ハイブリッド車)という武器があり、北米では既に520万台以上のHEVを販売しています。

520万台でどれだけのCO2削減に貢献したかというと8200万トン。そう言われてもよくわからないので、どれくらいの量か調べてみました。

世帯数に換算すると1050万世帯分。それでもよくわからない。これはテキサス州の家庭の1年分のCO2を抑制したということです。

現在、トヨタはグローバル、フルラインナップの商品を持つ会社です。HEVPHEV(プラグインハイブリッド車)、FCEV(燃料電池車)、BEVがあります。

これだけの多くの選択肢を提供するトヨタは、今もトップランナーだと認識しています。

昨年12月、BEV戦略を発表しました。量にして(2030年に)350万台(の販売)。トヨタは1000万台のクルマを販売しているので「たった35%ですか」と言われました。

撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY

先ほどトヨタの強みとして、グローバルでフルラインと申し上げました。世界を見渡すと、インフラ不足で10億人以上の人たちが十分な電力供給を受けられない環境にあるということも理解しています。

トヨタは、200以上の国と地域でクルマを販売しており、すべての方々に移動の自由を提供することを会社のビジョンにしている以上、「誰ひとり取り残したくない」というのが我々の考えです。

私は未来を予測することはできません。ただ、今の我々の行動で、未来の景色は変えられると思っています。

カーボンニュートラルにおいても、「過去」「現在」とこういうステータスで準備をしている今、トヨタの「未来」も、お客様と市場が決めることだと思っています。

それをぶらさない限り、今後もトップランナーでいられると思っています。

もう一つ加えると、我々は「クルマ屋」です。そして、私は「カーガイ」。I love cars。「クルマ屋」がつくる未来のモビリティにも期待が高まっていると実感しています。

クルマ好き、「クルマオタク」がつくる未来にぜひご期待いただきたいと思います。

質問Ⅱ:環境団体をどう納得させるか?

――大胆・大規模な投資戦略を語るフォードやGMと比べると、トヨタの主張やアプローチはパッと聞いて理解しづらい。こうしたアプローチは環境団体などに納得してもらえるか?

どこまでやれば、「積極的ですね」と言われるか、私も正直わかりません。

トヨタの規模と他の会社の規模は違う。トヨタの投資の値は相当大きな規模だと理解しています。

カーボンニュートラルは、自動車会社だけでは達成できないということを、私は最初に理解しました。

エネルギーを「つくる」「はこぶ」「つかう」すべての産業が参加して、初めて地球にとっていい結果をもたらすと理解しています。

私自身も、「カーボンニュートラルとは何か?」を理解することから始めました。私の得た結論は「敵は炭素」ということ。

炭素は今の自分たちの技術で既に下げ始めている。日本においても、この20年間で23%のCO2を削減してきました。

BEV化には、リチウムなどの鉱物が必要になる。トヨタは、世界のOEM(完成車メーカー)の中でも、電池を自社で生産している珍しい会社です。バッテリーをつくる難しさも経験しています。

関係会社の豊田通商が10年以上前から鉱山への投資をしています。電動車をつくるには、電池だけではなくて、電磁鋼板とかeアクスルとか、いろいろなものが必要になります。

トヨタは、必要な部品を誰かから買ってくればいいのではなく、自分たちでつくってみて、改善をするそうやってビジネスモデルを回している会社です。

時間もかかりますが、電動化に対しては、既に我々はHEVをやり始めた時代から、BEVを見据えた投資をやってきています

今の投資額を見ると少ないと思われるかもしれません。しかし、ここ20年のトヨタの動きを見てもらえると、決して少ないわけではなく、多岐にわたる投資をしている実態が説明できると思います。

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