人と人が話し合えば、大きな風を生み出せる。 #全員活躍 #デジタル化

2022.03.09

トヨタにはやるべきことがある。想いを伝え、情報を伝え、550万人に大きな風を届けていくために。

3月9日、トヨタ自動車本社で第3回の労使協議会が開かれ、会社から組合へ回答が伝えられた。速報では、協議会終盤に豊田章男社長が届けたメッセージを通じて、例年と異なる対応に至った理由を説明した。

今回の詳報では、「多様な個性を持つ一人ひとりが成長し能力が発揮できる“全員活躍」と「昨年、労使で取り組む2本柱に掲げたデジタル化」についての議論を取り上げる。

今年最後となった協議会も、労使で踏み込んだ議論が繰り広げられた――

トヨタが目指す全員活躍とは?

議論の初めに、組合の平野康祐 副委員長はトヨタ労使が目指す“全員活躍の姿について整理した。

トヨタで働く一人ひとりが成長を実感し、能力発揮を通じて働きがいを持つことそれによって人生が豊かになること

磨いた能力を自動車産業に関わる550万人への貢献のために発揮していくこと

世間の動きと同様に、トヨタでも共働き世帯が増え、育児と仕事を両立する社員が増えている。障がい者雇用率も増加しており、現在、約1,400人が勤務する。また、期間従業員からの登用を含め、キャリア入社者の数はここ十数年で約10倍に増えており、今や6人に1人の割合を占めている。

組合からは、多様化が進む職場における全員活躍の困りごとが挙げられた。

「(子育てとの)両立者や障がい者であることによる時間制約や就業制限を理由に過度に配慮され、成長実感が得られない」という多様化する人材が持つ悩み。

「これまでの業務の内容や成果の振り返りが中心となり、将来について話し合いにまで至っていない」という将来のキャリアプランに関する不安。

多様なバックグラウンドを持つ人が増えることで、悩みも多岐にわたる。こういった課題に向き合う職場を代表して、生産本部 車両生技領域の中村好男 統括部長が口を開いた。

会社:中村 統括部長

生技(生産技術)では、一昨年まで(男性の育休取得率は)低いという実態がありました。昨年、両立者ワーキングの認知活動により、上司の理解も進み、男性の育休取得も進んできました。

育休取得のメンバーからは、「『仕事はいいから、家族を支えてあげて』と上司に言ってもらえて、しっかり両立しようと思えるようになった」という声も出てくるようになりました。

しかし、高負荷な状況で、周囲に遠慮している人や、育児制度の中身を知らないマネジメントもいて、組織でのサポート強化や制度理解を深める必要があります。

女性両立者については、自宅から、会社のシミュレーターで作業できるようにするなど、技能系職場でも在宅勤務の環境を充実させてきました。

ただし、生産準備職場では、休日工事や設備準備のため仕入先様への出張が多く、両立者が活躍しにくい状況です。キャリアに対する悩みがまだまだ多いのが実態です。

活動はまだ道半ばですが、多様な人に寄り添ったコミュニケーションに取り組んでいきたいと思います。

職場が向き合い、悩むダイバーシティの問題。サステナビリティへの取り組みを引っ張る大塚友美CSOChief Sustainability Officer)が、自身の価値観が変わった出会いに触れ、多様性への向き合い方についての考えを語った。

会社:大塚CSO

私事ですが、女性総合職の一期生として入社して以来、少数派で珍しい存在だったので、周囲と同じように振る舞うことを考えてきました。

しかし、「多様性」「ダイバーシティ」という言葉に出会って「むしろ一人ひとりが違うことに価値がある」と天地がひっくり返るような気付きを得ました。

サステナビリティについて、豊田社長から「ビジネスパーソンとしてではなく、一人の人間・国民として考えればいい」とアドバイスいただきました。

この言葉と多様性を考え合わせると、ビジネスパーソンという鎧を着て、ビジネスパーソンに期待されることをするのではなく、一人の人間として社会や子供たちの未来を考え、自分なりに考えたことを人に伝える。

そして伝えられた人は、相手の想いをリスペクトし、傾聴し、一緒に悩むことが、未来や社会のために本当に必要なことをするサステナビリティにとって大切だと理解しました。

また、社会やビジネスの前提が変わってきているので「自分が正しいとは限らない」と意識することが大切だと思います。そうしないと間違った判断をしてしまうリスクが大きい

相手の話をまず傾聴し、自分とは違う考え方があることを受け入れ、リスペクトすることが、多様化であり、全員活躍やサステナビリティにすごく重要だと考えています。

また、「本音で話し合う」と言っても、自己主張ばかりでは何も生まれないので、「まず、現場で一緒に確認した事実をベースに会話をする」。社長に言われてその大切さに気付きました。

トヨタのミッションは「幸せの量産」です。画一的ではなく、一人ひとりに寄り添った多様な幸せをお届けして初めて量産できると思います。

そのためには、自分たち自身が多様化を体現し、全員活躍できる環境をつくっていかなければいけないと思います。難しいことですが、一緒に悩みながら進んでいきたいと思います。

社外へ広がる活躍のフィールド

多様な人材が抱える将来のキャリアプランに対する悩みについては、東崇徳 総務・人事本部長が回答。いきいきと働ける活躍のフィールドが会社を越えて広がっていることを説明した。

会社:東 総務・人事本部長

異動は「新しい経験を積む良い機会」だと思います。社内だけではなく、社外への出向はトヨタグループの仕入先様を含め、いろいろとあります。他社とのアライアンスも増えてきており、現状では約300社へ、約4,000名の仲間がトヨタの外で働いています。

最近では、技能職のベテランを「人財バンク」に登録して派遣、出向いただく取り組みも進めており、ベテランの先輩がいきいきと活躍している例が増えてきているのを実感しています。

トヨタの中だけでなく、「働く場所は本当にたくさんある」ということを知っていただきたい。

将来的には、「こんなすごい人がここにいる」「ここでは、こんな人を求めている」というのをマッチングする仕組みをつくって、最適配置、人材育成を進め、550万人の仲間に貢献していきたいと思っています。

マネジメント層の苦悩

続いて、組合の鬼頭圭介副委員長が議題に上げたのは「上司の余力」について。

「多様な人材が活躍するためには、先々のキャリアや生活との両立についても、直属の上司との日々のコミュニケーションを通じた信頼関係の構築がより一層重要」と指摘し、組合から「職場の上司」の置かれている状況を説明した。

技能系職場では、急激な生産変動による要員のひっ迫などにより、ローテーションが行えず、多技能化が進めづらくなっている。

要員不足で、現場のリーダーの負荷が続くと、一人ひとりに寄り添ったコミュニケーションが維持できず、技能伝承も進められなくなっている。

事技系職場では、過去に例を見ないほどのプロジェクトが同時進行する中で、従来の「やめかえ」のペースでは対応しきれず、業務があふれてしまっている。さらに、メンバーの異動で不足した人手を、グループ長自ら残業や休日出勤でカバーしているという。

これを受けて、課長級の社員で組織する有志団体の幹事を務める社員もマネージャーの声を紹介。

「抜本的な『やめかえ』が必要と感じつつも、環境の変化に必死に応えようとする上位者の姿を間近で見て、『やめる』と言い出せない」

「やめる判断ができるか、自身の権限に疑問を感じている」

「メンバーの多様化が進み、職能考課の開示など、以前よりも格段にカバーする範囲が広がっているため、メンバー一人ひとりに寄り添う時間がとれない」

「ハラスメントを恐れるあまり、メンバーとの踏み込んだコミュニケーションや適切な指導が難しい」

マネジメント層の苦悩を赤裸々に打ち明けた。

職場の核となるグループ長の声を受けて、近健太CFOChief Financial Officer)は自身が管轄する経理本部での取り組みを紹介。部長や本部長といった上位者のかかわり方が重要だと指摘し、次のように述べた。

会社:近CFO

グループ長が余力をもって、生き生きと働く姿を部下に見せていくことは、非常に重要です。グループ長の余力を生み出すために幹部がやるべきことは、しっかりコミュニケーションすることだと思います。

私自身、経理本部でTPS(トヨタ生産方式)活動をしてきた経験から、例えば、決算業務で言えば、上司である本部長や部長が「今回使う情報はこれ。それ以外はいらない」と示し続けることが大事だと思いました。

数年前、部下がつくっている資料を見て、がく然としました。昔々の上司から言われて以来、ずっとつくっていました。今はまったく使わないのに、誰もやめようと言わなかった。そういった判断をするのが幹部の仕事だと思います。

今は、「層になった管理業務」の改善を進めてくれています。取り組んでいる資産管理業務では、経理に情報がくる前に、調達、生技管理部、生技がいて、工場の工務や製造部もいる。非常に長いプロセスの中で、「似て非なる業務」が層になって積み重なっています。

「物と情報の流れ図」をつくって、ひとつひとつ解きほぐしてくれていますが、機能の中で、長い年月をかけて形づくられている業務であり、それぞれの価値観が違います。それを崩していくのも幹部の仕事だと思います。

そのリーダーシップがないと、しわ寄せがグループ長に行ってしまいます。ただ、各機能にも、意見や価値観があるので、頭ごなしに否定せず、相談していくことが大事だと思います。

我々には、TPSという軸があります。いろいろな意見を尊重しながら、その軸に立ち返って改善できる。これが非常に大きいと思います。

グループ長の困りごとをしっかり聞く。それに対して幹部がしっかり動く。当たり前のことですが、こうしたコミュニケーションと職場づくりに向けて、幹部がリーダーシップを取っていきたいと思っています。

全員活躍に関する議論の最後に総括したのは組合の光田聡志書記長。組合が続けてきた取り組みに言及し、今後の決意を述べた。

組合:光田書記長

組合としても2019年より「やめよう、変えよう、はじめよう運動」を推進してきましたが、今日の議論を踏まえ、ミドルマネジメントも幹部のみなさんも全員で「TPSとやめかえをやり続けること」が重要だということを改めて感じました。

それによって余力を生み出して、仕事を変えていくということは、困っている仕入先様や、自動車産業の仲間のためにもつながるものだと考えています。

引き続き、職場の一人ひとりが、自分のためではなく、仲間のために何ができるのかという観点を大切に、やめかえ運動を進めていきたいと考えています。

掘り下げていくと職場によって異なることがあると思いますので、労使のあらゆる階層で、年間を通じて今日のような話し合いをぜひやらせていただきたいと思います。

デジタル化の、目的を間違っていないか

続いての話題はデジタル化について。

組合からは、昨年の労使協以降、「カーボンニュートラル」とともに 2 本柱として取り組みが進み、デジタルツールの導入や通信環境の改善など、在宅勤務がしやすくなったとの声も多い。

しかし、同時に数々の課題も出てきたという。組合から「情報量が増えすぎた」「終業後でも通知が届くのでプレッシャー」という声も上がっているという。

これに対し北明健一 情報システム本部長はこう話す。

会社:北明 情報システム本部長

ツールは、従来の電話やメールに加えてTeamsSlackなどここ数年で 5 種類程度増加しています。

こうした新しい、あるいは相手に合わせたツールにもチャレンジすることを後押しすべく、ツールを提供してきました。

新たなツールの増加と活用促進に伴い、秩序のない情報の洪水が起きているのが現状です。日々、皆さんが受信する情報量は2倍に留まらず、現在も上昇を続けています。

さらに、情報の質という観点では、全世界・機能・カンパニーからの情報がSlackで、社長および社長室へ集中しており、その中には、読み手のことを考えていない言いっぱなしの投稿もあります。

電話の時代を振り返ると「長話にならないよう、要点を整理してから電話しよう」など、"YOUの視点"で相手を気遣い、コミュニケーションをしていたと思います。

デジタルの時代でも、この感覚・本質は同じではないか、情報にも、量だけでなく種類や質、時間帯などがあり、トヨタでいう標準化のようなものが必要ではないかと思います。

余談ですが、情報は訓読みすると「情けのある報(しら)せ」です。「情」はりっしんべん。すなわち「心」があります。心のこもった報せが情報です。

今後も、皆さんとともに、心の通う気持ちの良い、トヨタらしいコミュニケーションのあり方を考え、追求していきたいと思っています。

デジタル化は、モノづくりの現場の働き方も変えている。エンジンを生産する上郷・下山工場を預かる斉藤富久工場長は、足元の取り組み状況について説明した。

会社:斉藤富久 上郷・下山工場長

デジタル技能は、他の技能と同じ土俵で活用する、大事な技能であると認識しています。

今ある大枠の現場運営の仕組みは変えずに、デジタルでいかにその中身を効率化していくかが重要だと思っています。

工場での「デジタル化のあるべき姿」を想像しながら、いま、何が、どこまでできていて、今後何をやるべきかを整理し、モノづくりの本質を理解した上で横展を図り、費用対効果も考えたデジタルの活用を積極的に進めていきたいと考えています。

工場によって進捗も差はあります。今後、工場や本部間の連携を強化しながら、活動を推進し、そのノウハウ・結果をすばやく横展する戦略も必要だと思います。

一番大事なのは、TPSとデジタルの有効性を理解して活用できる人づくり。これを強力に推進していきたいと思っています。

デジタル化を阻んでいた、2つの要因

ここまで、労使で「相手を想うYOUの視点での情報共有」の重要性について議論を深めてきたが、別の角度から見た視点での意見も挙がった。

会社:古賀伸彦 未来創生センター長

この考えは、先ほどお話しされていた情報共有による洪水の制御とは違う視座の、むしろ爆発的に増えていく情報世界に、どう我々が適応していくかという話です。

私自身のことですが、30代のときに、ヨーロッパで認証渉外を担当することになりました。それまでの経験がまったく生きない業務でしたので、法律の理解を基盤に、多様なステークホルダーの思惑を読み解き、欧州ではマイノリティであるトヨタが不利にならないような環境をつくることが私の役割でした。

どうすればいいか悩んでいたある日、先輩が「情報というのは生モノだ。持っていると腐敗する。上下、同僚、場合によっては他社にでも、情報を共有しなさい。あなたが手に入れた不確定な情報が、より確からしい情報になって、戻ってくるかもしれない。何よりも、その情報の流れで人のつながりが生まれる」と言ってくださいました。

その通り行動してみると、5年目には宝のような人のつながりができました。

「情報は、完全なものでなくとも、仲間と共有する」。そのスタイルが私にとっての情報共有のあり方になりました。

しかし、その考えが必ずしも受け入れられない事実も見えてきました。

それは、「重要な情報は上の職位限定とすべきである」というマネジメント層の意識。また、「業務指示という形に加工してから展開してもらわないと困る」という職場メンバーの意識の2つだと思っています。

計画通りの作業をこなすのであれば、産業ロボットへのティーチングのように、余計な情報を与えず、やってほしいことだけを伝えるべきでしょう。しかし、そのようなやり方では、100 年に一度のこの大変革期の中では生き残っていけないと思っています。

情報を誰もが獲得でき、整理できていなくても幅広く共有される仕組みを引き続きつくっていきたいと思っています。

これは私個人の意見で、マネジメントの皆さんも、情報共有の必要性は感じながらも、悩みはあると思っています。本日の議論を一つのきっかけにして、各職場でマネジメントの皆さんと話し合っていければと思います。

さらに組合からは、部署を超えた情報共有の難しさも紹介された。「上司の承認前に、情報共有をすることがはばかられる」「技術情報など、機密性の高い情報を共有してよいか判断がつかない」といった声である。

このような悩みに対し、すでに動き出している好事例がある。

部署の壁を、情報の壁にしない

会社:齋藤尚彦 GRヤリス チーフエンジニア

GRヤリスの商品軸で、「情報ポスト」のトライをさせていただいております。「仲間との共有」で課題が見えてきておりますので共有させていただきます。

本取り組みでは、プロドライバー、凄腕技能養成部のメカニック、営業、カスタマーファースト、生産、技術のメンバーが組織横断でつながり始めており、レース現場での課題、走行データ、ドライバー走行評価、販売情報、お客様の声など、それぞれが持つ情報の共有を開始しています。

まだまだ輪は小さいですが、将来的には、海外含めたお客様のコミュニティや仕入先さん、レーシングチームやパーツ屋さんともつながり、業界の仲間ともっといいクルマづくりをしていきたいと思います。

GRヤリスは、レースで勝つためのクルマをつくり、そこから市販車をつくるという、(従来とは)まったく逆転の発想から開発にチャレンジしているモデルです。

現場で油と泥にまみれて、ハイスピードで開発を進める中で、機能や会社を超えたチーム全員が同じ情報を持てることは、何より大事な基盤だと実感しています。

情報は、個人のモノではなく、会社全体のモノという考えで、必要な人が必要なときに情報を引き出せるようにしていきたいです。

とはいえ、まだトライを始めたばかりで、日々、機能の壁や機密情報管理の難しさを感じています。

しかし、共感を生みながら課題を一つひとつ解決し、商品軸の情報共有によって、未来のモノづくりの姿をつくっていきたいと思います。

ここで、ソフトウェアの開発や研究成果の製品化を推進するジェームス・カフナーCDOChief Digital Officer)が口を開く。

会社:カフナーCDO

デジタルトランスフォーメーション(DX*)とは、テクノロジーだけの話ではなく、働き方を変え、将来世代を後押しするものです。今は、新しいテクノロジーによって、世界中の誰とでも、速く、正確にコミュニケーションをとることができる時代になりました。企業もこれを生かさなければいけません。
* Digital Transformation:デジタル技術による(生活やビジネスの)変革

DX
のためには、デジタルツールの導入だけでは不十分で、考え方やプロセスを変える必要があります。今、直面している課題もそこにあります。皆さんには、新しいツールでどのように働き方を変えられるか、視野を広げてみてほしいと思います。

昨年、私は富士山に登る機会があり、クルマで5合目まで行って、山頂まで登ることができました。デジタルツールを整備した今の状況は、5合目にいるのと同じです。山頂まで登るには、働き方を変える必要があります。

私からは、3つのアクションを提案したいと思います。

ひとつめは、上司・部下が自由に意見を交換し、仕事のやり方を変えるために、オープンにアイデアを受け入れる風土・文化をつくることです。そのうえで、新しいツールや技術を活用していきましょう。

ふたつめは、「情報は会社のもの」という考え方を胸に刻むことです。組織の壁を取り払って、情報を広く、オープンに共有し、「サイロ」化(情報共有がされず、風通しが悪い組織)を解消していきましょう。

今は、情報過多という問題があります。情報におぼれないよう、適切な情報量を守るためのルールを考えましょう。ただし、情報にはアクセスできるようにしておくことが大切です。

最後に、トレーニングを取り入れることです。テクノロジーにトレーニングが加わることで、トヨタの変革につながるというのが私の信念です。

Woven Planetの「道場」には、ITに関する50種類以上の講座があり、ソフトウェア開発やエンジニアリング部門のためのツール教育も行っています。

私は、人は成長することで幸せになれると考えています。メンバーへのサポートやスキルのレベルアップは重要です。トレーニングを通じて、トヨタの未来を担っていく、幸せで生産性の高いメンバーを育成していきたいと思っています。

550万人に役立つデジタル化であること

ここまで社内のデジタル化について話されてきた。しかしトヨタのデジタル化の目的は「550万人の自動車産業全体に良い影響を与えること」である。

仕入先とのデジタル化について、組合側からいくつか現場の声が紹介された。

中には「システムトラブル発生時に、スマホのカメラで状況を共有することで、仕入先様に現地に来ていただかなくても処置できるようになった」という声もある。

しかし、「トヨタが使っているIT ツールを活用してほしいと何気なく話されるが、固定費が増えることを理解してほしい」「結果ならまだしも、タイムリーな情報共有をお願いすることはちゅうちょしてしまう」など、悩みの声も多いのも実態だ。

会社:山本圭司CISOChief Information & Security Officer

トヨタのデジタル化は、自動車産業550万人全体への貢献につながるように進めてまいります。 デジタル化により、情報は組織や会社の垣根を越えて、スピーディに共有することができます。

これまでは、法律やコンプライアンス、セキュリティ面での難しさもあり、情報は各社の中でクローズされることが前提で、会社間での共有という考えはあまりなかったと思います。

トヨタがデジタル化に率先して取り組み、情報共有のあり方や好事例を横展開することで、少しでも会社間の壁を取り除いていきたいと思います。

現在、自工会においても、専門チームを編成して取り組みを進めています。設計情報や車両情報、走行情報など各社が持つ情報の中で、どんな情報が共有できるのか、そのためにどんな技術や仕組みが必要なのか、その結果としてお客様や産業全体にどのように貢献できるのか。こんな議論を自工会の中で進めています。

会社を超えて情報共有を進めていくことは、自動車産業550万人の仲間たちと一緒に仕事を進める大切な基盤になると考えています。

このように、会社の枠を超えてデジタル化を推進する考えが会社側から示された。

そして組合から、仕入先にも好影響を与えた、あるアプリの好事例が紹介される。製造現場の作業を動画撮影することで、作業分析や書類作成が楽になるという。

仕入先からは、「トヨタで使っているなら安心、使ってみたい」「このような事例を共有いただけるとありがたい」と多くの反響をいただいたそうだ。

会社:桑田CHRO

今日も、色々と議論が出たと思いますが、やはり大事なのは「デジタルネイティブがどんどん進めていくことを、決して止めてはいけない」ということだと思います。

ただ一方で、今は過渡期ですので「変換機能」「翻訳機能」をダブルスタンダードでやっていく必要があると思います。

いずれ10年後などに、本当のデジタル化が進められるかどうか、ということが大事だと思います。

今日はルールづくりが必要という話もありました。そういった観点でも今後、デジタル化の労使専門委員会を早急に立ち上げ、年間通して議論を進めていきたいと思います。

デジタル化は、全員活躍に必要不可欠であり、550 万人の仲間へ貢献するための原動力でもある。

だからこそ一人ひとりの困りごとに目を背けず、春の労使協議会だけでなく、年間を通じて、専門委員会でも議論を加速させていく。

「全員活躍」と「デジタル化」。議長の河合満おやじと副議長の西野勝義委員長の二人が、このように締めくくった。

会社:河合おやじ

私たちは一人ひとり、性格、知識、技能、能力、考え方が違います。仕事を通じて積み上げてきたキャリアも異なります。一人ひとりが仕事にやりがいを持ち、最大限、力を発揮いただくには、個々人の力量を把握することが大切だと思います。

把握するには、多くのことにチャレンジしてもらい、適性を上司と部下がお互いに確認をすることが大切です。相手のことに本気で向き合い、話し合う、日頃のコミュニケーションは不可欠です。

一律に(こうだと言える)正解はありません。変わり続けることを前提に話し合いを続けてほしいと思います。それが全員活躍の基盤になると思います。

トヨタの中でも、経験やスキルを発揮するフィールドはたくさんあります。まずはトヨタの中で自ら手を挙げ、多くのことにチャレンジし、成長し、人間力を養っていただきたいと思います。

その力が、550万人の仲間のために生かせると思います。その中で、制約やルール、または壁があるなら、労使で本音で話し合って解決しましょう。

デジタル化についてですが、昨年の労使協議会の最後に「会社や上司から指示を待つのではなく、できること、すべきことに、自らチャレンジしてほしい」とお伝えしました。

この1年で各職場の皆さんが、試行錯誤しながらも、立ち止まらず、行動してくれたからこそ、今日議論したように、具体的な多くの困りごとが出たのだと思います。

デジタル化が目的ではなく、ツールを使い、情報をすばやく共有し、行動に移す。導入後も、徹底したムダ排除に努め、常に進化させ、働き方改革につなげる。どう使うかが大切だと思います。

カフナーCDOから、デジタル時代に即した働き方について、やるべきことを説明していただきました。

私が特に感じたのは、1点目の「上司・部下の全員が自由に意見を交わす風土を始めませんか」。これが全員活躍・デジタル化のすべてのベースだと思います。

トヨタがデジタル化を進め、情報共有や好事例を横展していくことで、自動車産業に大きな良い影響を与えられると思います。

組合:西野委員長

「全員活躍」について、「自動車産業全体へ貢献していくために」、また、「一人ひとりの人生を豊かにしていくために」というゴールを、改めて労使で確認しました。そのために何をすべきか、この点についても、労使で話し合うことができたと思っております。

(現在は)右肩上がりで、皆で同じ働き方をしていけばよいという時代ではなくなってきたと思います。 次に何が起きるかは分かりません。これまでにない挑戦が必要になる時代こそ、一人ひとりが「違う」ことが必ず強みになると思っております。

その上では、それぞれがこだわって磨いてきた技能や知識、他の人とは違う経験や価値観が必ず役に立つと思います。

組合としても、「一人ひとりが違いを認め合うこと」「誰もが自分の長所を生かしながら、誰かの役に立てること」を実践してまいりたいと思います。

また、そのためにも、改めて、トヨタウェイにもある「余力をつくる」ことに全員で取り組んでいきます。

そして、一人ひとりが550万人の仲間のために、自分の力を生かせていると実感できるように、活動を進めていきたいと思います。

続いて「デジタル化」についてですが、先ほど触れた「全員活躍」同様に、トヨタのデジタル化を通じ、働き方を変えていきながら、自動車産業全体に貢献していくという大きなゴールを労使で確認できました。その上で、現状について、労使で認識合わせもできたと思います。

手段やツールに固執することなく、まずはどんな手段が使えるのか、どんな情報を発信すべきか、何を実現していけるのか、という事実を、偏らずに受け止めることが重要であると思っております。その上で、一番良いやり方に、柔軟に変えていけばよいと思います。

トレーニングを通じて、必要なデジタル技術と意識改革を行いながら、TPSと合わせて、スピード感を持って、課題に対して取り組みを進めていきたいと思います。

本日までの議論を通じて、労使で今後何をしていくべきか、多くの課題が明確になったと思います。この労使協の場で議論するだけで終わってはいけないと思っております。引き続き、労使各層で、本音の議論を進めながら、ぜひ取り組みを進めていきたいと思っております。

今期の労使協につきましても、良い議論をさせていただきました。本当にありがとうございました。

自動車業界で働く550万人のために、さまざま観点でトヨタが抱える問題を包み隠さず議論した2022年の労使協議会。

豊田社長は、「従来の労使協議から抜け出し、全員参加の経営会議のようになってきた」と語った。

これからも年間を通して議論を続けることを確認し、今年の労使協議会は終了した。

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