春の労使協議は今回が最終回 労使で具体的な行動に移っていく

2022.03.09

3月9日、トヨタ自動車本社で開かれた第3回の労使協議会、会議終盤に豊田章男社長から異例の発言があった。

「この3回の話し合いは、従来の“労使協議”から抜け出し、全員参加の“経営会議”のようになってきたと思います。そんな話し合いをしてくれた皆さんに感謝申し上げます」

「いま、私たちは大きな危機の中にいます。そんな私たちに必要なことは、すぐに動き出すことです。よって、春の労使協議については、今回を最終回とし、労使で具体的な行動に移っていきたいと思います」

集中回答日に行われている第4回の話し合い(今年は3月16日予定)を前に、労使協議会が幕を閉じるという“異例”である。

今回トヨタイムズでは「“異例”の決断をした豊田社長が想いを語ったメッセージの全文」、それを受け「『大変驚いている』と語った労働組合 西野勝義委員長からの返答」、そして「突然の最終回を締めくくるべく労使関係への想いを言葉として紡いだ河合満おやじの発言」を速報として掲載したい。

今回の話し合いでは「多様な個性を持つ一人ひとりが成長し能力が発揮できる全員活躍」と「昨年、労使で取り組む2本柱に掲げた“デジタル化”」についても、時間をかけて話し合われている。その内容については、詳報として追ってお伝えしたい。(15:00速報掲載)

豊田社長

最後に私から一言申し上げます。

先週の労使協議会で、足元の生産対応について、本音の議論が労使双方から出たと思います。私にはその生声が「うめき声」に聞こえた発言もありました。

組合からは「台数に追従するために、何とか人と残業時間でやり繰りしている状況は『正常』ではなく、『異常』だと思う。『異常』な状態がずっと続くと、大事にしなければいけない安全や品質がおろそかになって、あってはいけないことが起こるのではないかと危惧している」との話がありました。

会社側からは、「仕入先の皆様は『トヨタが頑張るなら私たちも頑張る』と言ってくださるが、今の状況は もう限界だと思っている。もう一度、足元を見て、仕入先様も含め、健全な生産計画を作り続けないと疲弊してしまう。お客様をお待たせしてはいけないということもある中で、我々が総合的に判断し、もう決めないといけない」という提言がありました。よく声に出してくれたと思います。

組合の指摘のとおり、要員や設備などの能力を超えた生産計画は「異常」であり、その計画を、直前に、何度も変更しなければならない今の状況は、もはや「危機対応」ということになります。

こうした実態を踏まえ、足元の生産計画を現実に即したものに見直すことを正式に決定いたします。

4月から6月を「意志ある踊り場」として、安全・品質を最優先に、仕入先の皆様の状況を踏まえた「基準」となる計画をつくり、健全な職場環境を整えたいと思っております。

納車を心待ちにしておられるお客様に対しては、今の現場の状況をご説明し、ご理解・ご協力をお願いしてまいります。

私たちは、リーマン・ショックの後の赤字転落、大規模リコール問題を経験し、お客様の信頼を失わないためにも、何よりも安全・品質を優先すること、現場を支える人財育成をおろそかにしないこと、その大切さを、身をもって学びました。仕入先、販売店の皆様とともに、全社一丸となって、この危機を乗り越えてまいりたいと思います。

今回の労使協議において、組合からの要求の最初に掲げられていた項目は「話し合い」でした。

来週の指定日に、その回答として、今回の生産計画の見直しをお伝えしようと思っておりましたが、仕入先の皆様の状況を考えると、一日でも早い決断が必要だと判断し、本日、この場で、お伝えすることにいたしました。

その他にも、カーボンニュートラルについては、仕入先の皆様が直面する現実などを、労使で共有し、「正しく理解する」「みんなで一緒に取り組んでいく」という原点を再確認できました。

全員活躍については、多様化する職場の状況とともに、もっと成長して役に立ちたいという組合員の悩みや、高負荷が続くマネジメントメンバーの厳しい状況を正直に話してくれました。

デジタル化では、問題点をみんなで正直に共有し、自分たちの現在地を確認することができたと思います。少し時間がかかっても、「働き方そのものを変える」デジタル化に取り組んでほしいと思います。

この3回の話し合いは、従来の「労使協議」から抜け出し、全員参加の「経営会議」のようになってきたと思っております。そんな話し合いをしてくれた皆さんに感謝申し上げます。

いま、私たちは大きな危機の中にいます。そんな私たちに必要なことは、すぐに動き出すことです。

よって、春の労使協議は、今回を最終回とし、労使で具体的な行動に移っていきたいと思います。

そこで、賃金・賞与についても、本日、この場で回答させていただきます。

コロナ禍に半導体不足が重なり、先が見通せない中でも、「自動車産業のため、日本のため、未来のために」、そんな想いで動き続けてくれた組合員の皆さまの頑張りに感謝し、賃金・賞与については、要求通りといたします。

自動車産業550万人の仲間のうち、組合があるのは3割に過ぎません。残りの7割の人たちは、自分で声をあげて、要求をぶつける仕組みすらないのが現実です。

だからこそ、声を出せない仲間の存在を念頭に置き、日本で働くすべての人たちのことまで考えて話し合うこと。

そして、行動していくこと。それが「すべての働く仲間に良い風を吹かせる」ことにもつながると思います。

労使宣言に謳われている「自動車産業の興隆を通じて、国民経済の発展に寄与する」。この気概をもって、550万人の仲間とともに、一歩一歩、歩みを進めてまいりたいと思います。

最後になりますが、今、世界は、悲しく、やりきれない現実に直面しております。

私は、ロシアによるウクライナ侵攻に対して、激しい憤りを感じております。戦争や対立は、誰も幸せにいたしません。

今この瞬間も、想像を絶する 苦しみや悲しみ、大きな不安の中で暮らしている方々のことを思いますと、かける言葉も見つかりません。

ウクライナや周辺国にいる私たちの仲間も、祖国で命の危険にさらされ、愛する家族が難民になるなど、深刻な影響を受けております。

その一方で、ロシアでは、「町いちばんの会社」として一生懸命やってきたのに厳しい目を向けられ、不安な想いをしている仲間たちもいます。

私たちトヨタにおいて、従業員は家族です。私の心は、どんなときでも現地の仲間とともにあります。少しでも力になりたいと思っております。同じ想いで、動き続けてくれている現場の皆さんに、心より感謝申し上げます。

現在、北京では、いろいろな想いを抱えながら、パラアスリートたちが私たちに勇気を届けてくれております。パラリンピックのワールドワイドパートナーになったとき、私は、当時IPCの会長であったクレイヴァンさんのもとを訪れました。

そのときの言葉を、世界中のトヨタの仲間に送りたいと思います。

One World One Dream One People One Toyota

一日も早く、世界の人々が平穏無事な普通の暮らしを取り戻せることを願ってやみません。

本日はありがとうございました。

西野委員長

ただいま豊田社長から、「賃金・一時金について要求通りにする」というご発言がありました。極めて異例なことで、大変驚いておりますが、今回の労使協議会の中で話し合ったことについて、「組合員一人ひとりに、速やかに行動につなげていただきたい」、また、「改めて、すべての働く仲間に良い風を吹かせたい」、そうした考えに基づいたことだと受け止めました。ありがとうございました。

また、生産計画の変更についてお話がありました。これまでの労使協の中で、組合からも触れました仲間の声を真摯に受け止めていただき、極めて迅速にご判断いただきましたことに、改めて感謝申し上げます。

引き続き、組合として仲間の声をしっかり聞いてまいりたいと思います。そして仲間と歩みを同じくし、お客様のために、最大限取り組んでいきたいと思います。

河合おやじ

先ほど社長から、「来週(予定していた)回答を、本日お伝えします」という話がありました。従って、今年の労使協はこれで終わり、即座に危機対応にあたるという話がありました。

議長として、皆さんにお礼を申し上げたいと思います。そして、最後ですので、今期の労使協を少し振り返りたいと思います。

2019年、(私たちは)本当に形ばかりの話し合いから始まりました。社長の言葉を借りると、その時は「とても(外の人に)見せられる状態ではない」というものでした。ですが、今回は、社長から、感謝の言葉をいただきました。

議長からも、皆さんの真摯な対応に感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

550万人の仲間に関する議論もたくさんできました。仕入先の皆様の話もできました。こういった話し合いができない7割の仲間の存在を改めて感じ、目を向けることもできてまいりました。

先ほど社長から、「労使協というよりも、労使経営会議だ」という話がありましたが、「経営について一緒に考える」ようになり、大変成長できたと思います。

こういった真摯な話し合いができるのが、トヨタだと思います。それこそが、60年の労使相互信頼そのものだと思います。

先月、ある人から、こんなことを聞きました。60年前に、労使宣言を締結したときに、(当時の組合執行部は)組合員からずいぶん突き上げを受け、「なぜ会社の言うままに、あんな締結をしたんだ」と言われたそうです。

執行部は、「よく見てくれ。ここには、労使が互いに信頼し合って、(お互いに)会社の繁栄、組合員の幸せを願うということが書いてある」と説明されたそうです。

ですが、それからずっと、「春闘」(の時期)になると、私自身もそうでしたが、組合は自分たちの主張をして、頑張ってお金を少しでもいただきたい(という姿勢であり)、会社は「とうてい無理」(という姿勢)。この平行線がずっと続いてきたと思います。

やっと今、労使相互信頼に立って、お互いに本音で話し合える(ところまできました)。(労使宣言を締結した当時)「なんでこんなことをしたのか?」と不信に思っていた先輩たちに、今のトヨタなら見せてあげられると思います。

直近では、世界情勢も含め、生産対応、コロナなど、日々、めまぐるしく状況が変わります。こうした中で、多くの危機に対して、これからも労使で協力し合い、汗をかいていきたいと思います。

本日の労使協議会を、これを持ちまして終了したいと思います。ありがとうございました。

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