スーパー耐久シリーズを運営する新法人「スーパー耐久未来機構」が発足。その理事長にはモリゾウこと豊田章男が!? 新体制で描く"未来"とは?
守ることと変えること
——STMOが運営するS耐は何を目指しているのか、具体的に教えてほしい。
「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」を掲げ、S耐の場で、さまざまなチャレンジを行ってきたモリゾウ。新しい役割を受け、S耐はどう変わっていくのか?
寄せられた質問に対し、守っていきたいS耐の文化と、今後取り組んでいきたい試みを回答した。
モリゾウ/豊田STMO新理事長
S耐の良さは「ワールドフェス」ではなく「村祭り」というところです。「村祭り」の主役は参加者だと思います。
S耐でいえば、「手づくり」「顔なじみ」「誰でも参加できる」がキーワードになると思います。
その一つの特徴が、「融通が利く」ということで、STOからSTMOになったとしても、そこはしっかりと守っていきたい。
桑山さんをはじめ、今までレースを支えてこられた方には全員残っていただきます。だから、安心しながらやっていただけるんじゃないかと思います。
もう一つは割り勘レースという文化です。耐久レースなので、1~2人のドライバーじゃなく、多い場合は4~5人、参加者が割り勘のようにお金を出し合います。
多少は融通が利いて「この日のためにクルマを準備したのに出られない…」ということは、今後もないようにしていきたいです。
その2つは守りますが、今後、変化点としては、桑山さんの想いが元々アジアにありました。
アジアの中に富士があり、その先にニュルブルクリンクがある。24時間レースという共通項があり、クルマのカテゴリーも似ているので、アジア、日本、そして、ヨーロッパという道筋をつくることができるんじゃないかと思います。
もう一つ、音が出て、排気ガスを出して走るモータースポーツに関わる方々はカーボンニュートラルからちょっと遠いところにいて、肩身の狭い思いをしていたと思います。
ですが、水素エンジンをはじめ、いろいろな開発が皆さんの前でアジャイルに進み、多くの仲間がこのレースの場で開発を進めようと集まってきています。そんなことが日本の未来につながっていくと思います。
国内レースとの連携
——今後、STMOはスーパーGTと仲良くしてくれるのか?(笑)
言わずもがな、記者会見はメディア向けのイベントだ。そんな中、会場の後方で手を挙げたのは、国内で最も集客力のあるレース、スーパーGTの統括団体GTA(GTアソシエイション)の坂東正明代表。
同業者からの不意の質問に、会場は笑いに包まれた。「私がお答えします」とモリゾウが応じ、モータースポーツ業界の仲の良さを参加者にアピールした。
モリゾウ/豊田STMO新理事長
日本には「スーパー」と名の付くレースが3つあります。「スーパーGT」「スーパーフォーミュラ」「スーパー耐久」。かつては同じレースだったかもしれませんが、今は独立独歩で、それぞれの役割を果たしてきました。
ただ、日本のレース業界を盛り上げるという役割はどれも同じだと思います。
まず、話し合いたいのは(レース)スケジュールを相談しませんかということです。エントラントの立場からすると、レースが続くのは結構大変なんです。
地域的にも、カテゴリー的にも、バランスよく見にいけるようにするため、実はGTA坂東さんと、私と、スーパーフォーミュラのマッチ(近藤真彦)さんが、近いうちに晩飯を一緒に食べます。
まずは3人が仲良しだということをお示しして、協力して、モータースポーツを盛り上げる。わくわくするスポーツにしていく。そして、アスリートたちが参加しやすくする。それがミッションだと思います。
坂東さんもよろしくお願いします。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」と坂東代表。ただ「こちらの方が先輩なので、新参者は新参者らしくね(笑)」とくぎを刺すと、再び会場には大きな笑いが起きた。