スーパー耐久シリーズを運営する新法人「スーパー耐久未来機構」が発足。その理事長にはモリゾウこと豊田章男が!? 新体制で描く"未来"とは?
モリゾウの新体制へのかかわり方
——トヨタの会長をしながら、大きな任を受けることになる。迷いはなかったのか?
2人のあいさつの後、会場ではQ&Aセッションが行われた。その模様をライブ配信したS耐のYouTubeでコメント欄が盛り上がった場面があった。
それが、理事長、副理事長、専務理事の役割についてモリゾウが回答したシーン。「例えがうまい!」「わかりやすい!」との反応でにぎわった。
モリゾウ/豊田STMO新理事長
スーパー耐久機構は、参加型、割り勘レースとして、ここまで育ててこられました。一方で、(S耐が抱える)その不安も(私には)理解できました。
一方で、私は自工会(日本自動車工業会)会長を辞めたとはいえ、まだ、いろいろな仕事があります。
そういうことは計画通りに行かず、(レースの)現場を離れていることがあると思います。
いろいろなことが現場で起こるので、桑山さんには副理事長として現場に張り付いて、今までと変わらず、指揮いただく。加藤さんには専務理事を務めてもらい、2人が現場でいろいろな決断をする。そして、私が責任をとる形になると思います。
旅館だと、私が総支配人、桑山さんが女将、加藤さんが支配人じゃないかなと思います。どの旅館に泊まっても、総支配人は、そう出てきませんよね?(笑)
実際には支配人と女将で、今まで以上に対応いただき、私はいろいろとバックアップさせていただきたいと思っています。
この体制にしたからといって、未来がすぐに語れるわけでもないと思います。ぜひ、長い目で見て、S耐がどう変わっていくか、叱咤激励いただきながら、ご覧いただきたいと思います。
S耐の歩みとパートナーの参画
——新法人設立に伴い、いろいろなメーカーが参画しているが、どういうきっかけがあったのか?
まず、モリゾウから、水素エンジンでのレース参戦を通じて、カーボンニュートラルの選択肢を広げる仲間が広がったエピソードを紹介。
話題がS耐の歩みに及ぶと、加藤新専務理事がさらに踏み込んで回答した。
加藤新専務理事
歴史を振り返ると1991年、バブル崩壊のときに、桑山充さんが「日本でも参加型レースを起こすんだ」と立ち上げています。
参加台数はリーマン・ショックの後、半分以下の台数になっています。
「景気に左右されるレース」で、一つの大会で(エントラントが)十数台の苦しいときもありました。
その後、2013年に桑山充さんが亡くなられ、晴美さんが立ち上がって、第2章が始まりました。「参加型レースを守るんだ」という想いで11年走ってこられました。
歴史が動いたのは、2018年にモリゾウさんがドライバーとして参戦されたことです。
2021年にST-Qクラスを即断でつくっており、水素エンジンの開発車を走らせてSUBARUさん、マツダさんが続々とカーボンニュートラル燃料で参戦。脱炭素の選択肢をつくる実証実験の場のようになりました。
2022年にENEOSさんが冠スポンサーになられ、プレゼンスが一段と上がりました。
そうした中、2023年にHankookさんの工場で火災が起き、タイヤ供給が危機に。レースができない状況をブリヂストンさんがバックアップして、救ってくださいました。
こういう中でも参加台数が増え、実はコロナ禍でも半分以上のチームが変わっている。サステナブルに挑戦できるレースに変わっていきました。
参加者もすごく頑張って、メーカーとプライベーターがリスペクトしあう関係にもなった。
そういう「未来の助走」が始まっているのを桑山さんが見て、未来を託せるのはモリゾウさんとその仲間だということで、今日を迎えたのだと思います。