販売店・仕入先の「人への投資」は? 本音の対話はさらに拡大

2024.04.24

「人への投資」を議題に据えたトヨタの労使協議会。では販売店・仕入先の現状はどうなっているのか? 本音の対話は自動車産業550万人の仲間へと広がっていく。

4月1718の両日、トヨタ自動車の名古屋オフィスと本社(愛知県豊田市)で“拡大労使懇談会”が開かれた。

今回の参加者は、トヨタ労使に加え、17日がトヨタ自動車販売店協会(ト販協)や、トヨタ系販売店、レンタリース店の労働組合を束ねる「全トヨタ販売労働組合連合会(全トヨタ販労連)」の代表。18日はデンソー、トヨタ紡織、アイシンの調達担当の代表のほか、トヨタグループの「全トヨタ労働組合連合会(全トヨタ労連)」から参加があった。

自動車産業を支える仲間たちも加わり、話し合われた内容とは。

「人への投資」を話し合ったトヨタ労使

2024年のトヨタの労使協議会(労使協)は、「人への総合的な投資」を重要なテーマに、議論を重ねてきた。最終日には、佐藤恒治社長が、【働きやすいモノづくり環境の整備】、【「自らやりがいをつかみ取る」仕組みづくり】、【未来に向けて行動する人への投資】の3つの観点から回答を示している。

世間では「満額回答で過去最高水準での賃上げ」ということが広く報道された。だが、トヨタの労使交渉の本質は、職場や自動車産業の課題解決に向けた本音の話し合いにある。

今年の第3回の議論では佐藤社長、鬼頭圭介委員長からこのような言葉があった。

佐藤社長

今年の労使協議は、自動車産業の未来に向けて、二つの想いを持って取り組んできました。

まずは、「550万人の仲間への感謝」。仲間と一緒に成長していくために何ができるかを考えて、価格改定の取り組みをはじめ、仕入先様、販売店の皆様の、人への投資を後押しする活動を、労使協議と並行して進めてきました。

鬼頭委員長

広く産業全体を見渡したときにお支えいただいている仲間の職場では、人手の確保や人材育成といった、本当に大きな不安、懸念を抱えている難しい状況にあると思います。

仲間への取り組みが本当に波及をしているのか、効果を仲間が実感できているのか、今後も責任を持って、定期的に把握をし続けていくことが、トヨタ労使に課せられた責務であると認識しております。

今回の議論を自動車産業550万人の仲間の笑顔につなげていくことがトヨタ労使の想い。

かつて豊田章男会長も、2022年の労使協(当時社長)で、満額回答とともに「550万人の自動車に関わるすべての働く仲間たちに良い風が吹くことを期待したいと思います」と語っている。

果たして販売店・仕入先は、「人への投資」をどのように受け止めたのか。

【販売店】喫緊の課題は「人手不足」

販売店との対話で中心となった課題は「人手不足」。

全トヨタ販労連の小川敬太 中央執行委員長は、「人への投資は重要であり、単発ではなく浸透するまで継続していただきたい。一部の店舗においては、お客様の数に対して十分な人員や設備が整っておらず、お客様が望むサービスを提供できる体制の維持が難しくなってきている」と現状を伝えた。

また、品質問題などが発生すると、通常業務に加えて対応が必要になることから、現場は高負荷な状態が続いているという。

大石正己 中央執行委員長代行も「さまざまなお客様対応に追われて『想像していた販売会社の仕事ではない』とモチベーションが低下し、離職が増えている」と現場の声を届けた。

サービスエンジニアを中心とした採用難については、ト販協も危機感を抱く。一方で、エンジニアの労働生産性を向上させることで、余力創出につながっている事例もある。

四宮慶太郎 副理事長(ネッツトヨタ神戸会長)は、販売現場におけるTPS(トヨタ生産方式)、「TSL * 」を導入したことによる変化を紹介した。

*トヨタセールスロジスティクス。豊田会長が国内販売の課長だったころ、業務改善支援室を立ち上げ、販売店にTPSを導入する活動を始めたことから生まれた、販売に関わる物流を改善していく活動。

ト販協 四宮副理事長

例えばキャッシュレス化や部品の10日前発注に取り組むことで、受付とか精算の業務(の一部)が不要になりました。

弊社の場合、そこも含めてエンジニアが走り回っておりましたので、全体で余力を生むという良い例が少しずつ出てきました。

「こうすれば余力ができるな」、「お客様にも喜んでいただけるな」と(意識が変わっている)。デジタルを絡めたやり方もできてきて、いろいろな販売店にも広がっていけば、解決策になっていくんじゃないかなと思っています。

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