スーパー耐久シリーズを運営する新法人「スーパー耐久未来機構」が発足。その理事長にはモリゾウこと豊田章男が!? 新体制で描く"未来"とは?
モリゾウ「クルマ好きが仲間になり、未来をつくる」
水を向けられ、モリゾウがマイクを握った。桑山事務局長の申し出を受け入れるに至った経緯と、新法人の体制や名前に込めた想いを語った。
モリゾウ/豊田STMO新理事長
日本には「スーパーGT」「スーパーフォーミュラ」「スーパー耐久」と「スーパー」と名のつくレースが3つございます。S耐を構築したのが、先ほどお話に出ました前事務局長の桑山充さんでした。
充さんは、2つの大切な想いを込めて、S耐の理念をつくられたそうです。
一つは、草の根の参加型レースであり、「割り勘レース」であるということ。もう一つが、開発を通じて、自動車産業の発展に貢献するというものです。
先ほどのお話の通り、2013年からは、桑山晴美さんが大変な決意でレースを引き継がれ、充さんの想いを大切に守ってこられました。
2020年にカーボンニュートラルという言葉が出てきたとき、水素エンジンをS耐の場で走らせて開発をもっと進めていくという話になり、相談させていただいたところ、即決でST-Qクラスを新設してくださいました。
晴美さんが即決された背景には、充さんから引き継がれた自動車産業への想いがあったと思っております。
先ほど桑山さんが、意を決し、私に相談いただけたという話がございました。確かに、さっきお話しされていたような会話をしたと思います。
「他のどなたかにご相談されていますか」と私は聞きましたが、「いいえ、モリゾウさんに」と桑山さんはおっしゃったので、「それであれば」とお応えいたしました。
そのとき私が思っていたのは、私ひとりであれば、気を回さずに動きやすいのではないかということでございます。
桑山さんは夫が立ち上げたS耐を引き継ぎ、何とかやってこられた。
「引き続き、技術を磨く場として、社会課題解決に貢献できる場にしていきたい。もちろんS耐を楽しんできたというエントラントにも、もっと楽しんでいただける場にしたい。でも、体制を強化しないと難しい」
そんな本音をお聞きし、そのお悩みにどうお応えできるのか社内で相談してみますと「OEM(自動車メーカー)連合で引き受けてはどうか?」という話も出てまいりました。
しかし、このときに思ったのは、「モーターショーとオートサロンの違い」です。
S耐はどちらかというと「オートサロン」です。OEMが前面に出るのではなく、業界550万人みんなでつくっていくレースです。
クルマ好き、運転好き、そして、チューナー、メカニックやエンジニアなど、多様な方々が参加できる枠組みを残していくことが一番大切なんじゃないかと考えました。
こうした考え方を、「この指とまれ」と、いろいろな方にお話ししてみたところでございます。
ご覧の(バックボードに載っている)各社の皆様に手を挙げていただいて、本日に至ったというわけでございます。
桑山さんからは、「この草の根レースを日本だけではなく世界へ広げていきたい。特にアジアへ」という想いも伺っておりました。
私自身、昨年はフィリピン、台湾、タイなどへ行き、アジアにいるクルマ好きたちの熱を体感してまいりました。
S耐を海外で開催するのも考えられますが、逆にアジアのクルマ好きたちが「日本のS耐に出たい」と思えるようなレースにしていくのも良いのではないかと話しております。
新たなS耐は、みんなで新しい未来を目指していくという意味を込めまして、団体名を「スーパー耐久未来機構」に変更いたします。
略称のSTOは、未来の「M」を入れてSTMOとさせていただきます。一緒に日本の自動車産業盛り上げていく、そして、モータースポーツ業界の明るく、楽しい未来をつくっていきたい。
この「M」には、自動車産業にとって、こんなにも素晴らしい場をつくってくださった創始者 充さんへのリスペクトの気持ちも込めさせていただきました。
このレースがあれば、クルマ好きたちが一つの仲間となり、未来をつくっていくことができると思っております。STMOをよろしくお願いいたします。