スーパー耐久シリーズを運営する新法人「スーパー耐久未来機構」が発足。その理事長にはモリゾウこと豊田章男が!? 新体制で描く"未来"とは?
4月20日、宮城県村田町のスポーツランドSUGOで ENEOSスーパー耐久シリーズ2024 Empowered by BRIDGESTONEが開幕した。
新シーズンがスタートを切るにあたって発表されたのが、スーパー耐久(S耐)を運営する団体の新体制だ。
スーパー耐久機構(STO)が一般社団法人スーパー耐久未来機構(STMO)に事業を承継。そのトップである理事長にモリゾウこと豊田章男が、副理事長にSTO事務局長を務める桑山晴美氏が就き、今年6月に新体制による運営に移行する。
この5日前には、STOからメディアへ「シリーズの新体制」に関する記者会見を行う案内が出ていた。そこには「出席者 MORIZO(豊田章男)」と記載されており、関係者かいわいは、ひそかにざわついていた。
STMOとはどんな組織なのか? なぜ、モリゾウがトップに就くことになったのか? S耐はどう変わっていくのか?
会見のスピーチと質疑応答のやり取りを通じてレポートする。
桑山氏「純粋で、まっすぐ成長させるために」
会見はSTO桑山事務局長のあいさつから始まった。亡き夫の遺志を継ぎ、レースの運営を守ってきた11年を振り返りながら、モリゾウに新法人のトップを願い出た理由について説明した。
桑山STO事務局長/STMO新副理事長あいさつ
この度、スーパー耐久機構は、新法人である一般社団法人スーパー耐久未来機構に事業を承継することにいたしました。
本日は、新理事長となりますモリゾウさん、専務理事となります加藤俊行(元デンソー副社長)さんとともに、皆様にご説明申し上げます。
少しだけお時間をいただき、ここからは私自身の想いを振り返らせていただけたらと思います。
2013年3月2日、夫である前事務局長、桑山充が他界いたしました。私はそれまで、レースには、全く縁がございませんでした。ましてや、その仕組みは全くわかりませんでした。
当時、ちょうど2013年のエントリーが確定する時期で、わからないながらもエントリーの取りまとめをしていました。
そんなバタバタの中で、夫の遺志を継ぐことを考え、何かわからない気持ちに押されるように「よし、やるか」と決意したのを覚えています。
「晴美さんはお飾りでいい。あとはこちらでやるから」と言われたこともありました。
しかし、自分で全てわかっていないと、このレースを成長させていくことはできないと思い、「まずは平たく全部を学ばせてください」と言いました。
皆さん「え?」という顔をされていたことを覚えています。多くの方々に不安な思いをさせてしまっていたのだと思います。
少しすると気がついたことがありました。レース業界は、口でいろいろなことを言われる方はいるけれど、その想いを紙に落としたり、実行されている方はあまり多くはないような印象を持ちました。
「実務ができるようになって、お役に立ちたい」。そんな想いでレースに行くようになると、何もわからないなりに「はて?」「あれ?」と課題が見えてくるように感じました。
当時、私なりに行き着いたS耐に必要なものは「正しい規則に整えること」「ブランドをつくること」。この2つでした。
その課題を一つひとつ潰していったのが、今に至るS耐の11年間だったと思います。
私は、かねてからメーカーの方にお目にかかったとき、「S耐をどんどん開発の場に使ってください」とお伝えしてまいりました。
これは生前、夫が言っていたこのレースの意義でもあります。モリゾウさんにも、岡山でお目にかかった際にお伝えした覚えがございます。
(自動車メーカーの開発車両が出場する)ST-Qクラスの新設は、その想いで即断いたしました。しかし、そのときは、まさか水素エンジンという夢のある技術が試される場所になるとは、夢にも思っていませんでした。
おかげさまで、S耐は今、とても良い状態にあると思っています。チームの皆様、ご協賛企業の皆様にも支えられ、参加型レースでありながらも、応援してくださるファンの方も増えてきています。
そして、ST-Qクラスの盛り上がりによって、単に楽しいレースというだけではなく、自動車産業の一員として果たす役割も見えてきています。
しかし、このレースの未来を考えたとき、次の段階を考えていかないといけない。それを私一個人の小さな会社で運営していく体制でいいのか。そうした意識も一方で感じ始めていて、ここ数年はずっと悩み続けておりました。
おかげさまで、S耐は30年以上の歴史を積み重ねてまいりました。このレースが守っていかねばならないことは何か。それを守りながらも、関係している全ての方に、このレースを通して未来を感じていただくにはどうしたらいいのか。
そう悩んでいたときに、私の頭の中に浮かんだ方は、モリゾウさんしかいませんでした。
S耐はとても純粋で、まっすぐなレースです。このレースを歪まずにまっすぐ、成長、発展させていくために、ご相談できる方はただ1人しかいませんでした。
そんな相談をしていいものか迷いましたが、モリゾウさんは私の想いを聞いてくださりました。私一個人の感覚ですが、お金や名誉のためだけに仕事をする方には相談できません。
モリゾウさんがこのレースでやってきたことを見ていて、そうではないと確信できていたから、相談したかったのだと思います。
私が相談したときモリゾウさんの第一声は「どなたか他の方に、このことをお話しされましたか」というものでした。
もちろんどなたにもご相談していませんでしたので、その旨をお伝えしたところ、「皆に良いような形になるように考えてみます」とおっしゃっていただきました。
ここからはモリゾウさんにマイクをお渡しできたらと存じます。