肩書でなく役割で選ばれたトヨタグループの現場のリーダーたちが一堂に集結。「責任者として変革をリードする」と宣言した豊田章男会長との本音の対話をレポートする。
若い人への働きかけ
――法規認証業務を担当しています。先日のトヨタグループビジョン説明会で言及のあった「将来の子どものために」という言葉が印象に残っています。社会に必要とされることが会社の存在において重要なことだと痛感し、モチベーションにもなっていますが、若い人の中には、それがまだ理解ができず、目先の給料や待遇を考えてしまっている人もいます。どのように働きかけをしていけばよいでしょうか?
豊田会長
若者が何をしたいのか寄り添ってあげてください。時代も変わっていて、我々の過去の価値観を押し付けても、若者は動かないと思います。
若者は我々よりも長く生きるんだし、僕なんかアナログ化石人間ですよ。デジタルの世界など、若者は本当にいろいろなものの見方や情報を持っています。双方が一緒に何かをやったときに、1+1=3や4になると考えた方がいい。
そして、若者にモチベーションを持たせようとする前に、自分が大人として「いいな」と思われる姿を見せることの方が大切な気がします。そうすると若者も、もっともっと自由に、意見が言えるようになります。
不正をしたからといって、縮こまっている方がマイナス。一人ひとりが、間違いはしたけれど立ち直る姿を見せ、若者に勇気を持たせていただけるとありがたいです。
豊田章男流のコミュニケーション
質疑の時間は2時間にも及んだ。冒頭で「一人の人間同士で向き合う場にしたい」とあったように、豊田会長も自ら参加者の目線に合わせ、時に冗談も交えながら、悩みに答えていくと、挙がる手がどんどん増えていった。
午後に実施されたモリゾウをはじめとするドライバーによるラリーカーの横乗り体験は、参加者がクルマを囲んで笑顔に包まれた。
豊田会長は今回の取り組みへの想いを「クルマづくりはみんなで力を合わせてやっている。一緒にやろうという気持ちになってもらう。それには体験して笑顔になってもらうことがスタート」と語った。
現場で実務を担う人と直接対話をする。
肩書でなく役割で、一人の人間に向き合う。
言いたいことを言うのではなく、聞きたいことに答える。
クルマを真ん中に置いて、現場で語り合う。
最後は笑顔でありがとうが言い合える関係を築く。
トヨタグループの絆を深める試みに、豊田章男流、モリゾウ流のコミュニケーションがあった。