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イバラの道でも進むべき道とは 2023年 豊田社長年頭あいさつ

2023.01.11

何が正解かわからない。そんな時代だからこそ、トヨタの進むべき道が明確に示された。その全文を公開する。

トヨタの価値と、イバラの道

豊田社長

いま、私たちは、「何が正解かわからない時代」を生きています。その中では、これまでに経験したことのない「危機」に直面することがあります。

その時、必ず、私たちの前には「2つの道」が現れます。

「短期的な成功や一発逆転を狙う道」と「自分たちに強さをもたらした本質・思想に立ち戻る道」です。

13年前、赤字転落やリコール問題という会社存亡の「危機」に際し、私は後者を選びました。

トヨタの思想、すなわち「もっといいクルマ」をつくり、各地域のステークホルダーに愛され、必要とされる「町いちばん」の会社を目指す道です。言い換えれば、「商品」と「地域」を軸にした経営ということになります。

これは、ものすごく時間がかかり、すぐに評価されることのない道です。むしろ、短期志向の人たちからはバッシングを受けます。いわば、「イバラの道」でした。

この13年間、皆さんと一緒に「イバラの道」を進む中で、私自身が「現場」に立ち、自らの「行動」で、「トヨタの思想」を示し、大切にすべき「価値観」を変えてきたと思っています。こちらをご覧ください。

私たちが目指すべきは、「幸せの量産」であり、「もっといいクルマ」をつくり、お世話になっている「町の人たちを笑顔にする」ことです。

そのために、トヨタの価値観を変えようと努力してまいりましたが、なかなか変わりません。それが私の本音であり、一番の悩みでもあります。

「本社」よりも「地域」

「会議室」ではなく「現場」

「肩書」ではなく「役割」

「決裁」ではなく「相談」

「説得」ではなく「共感」

仲間と一緒に挑戦し、一緒に失敗し、一緒に改善をしていく。みんなで努力して、そんなトヨタをつくってまいりたいと思います。

「サラリーマン」という仕事はありません。皆さんの仕事は「クルマ屋」です。

トヨタの思想と技と所作を身につけた、町いちばんの「クルマ屋」を目指して、努力を続けてほしいと思います。

そして、皆さんが危機に直面したときは、「もっといいクルマ」「町いちばん」「自分以外の誰かのために」この3つを道しるべに、行くべき道を選んでいただきたいと思います。

たとえ、それが「イバラの道」であったとしても。

最後に、皆さんは、昨年の「3つのお願い」を覚えておられるでしょうか?

どれぐらいできたでしょうか?できなかったという人も多いかもしれません。

このお願いの根底にあるものは、「個性を大切にしてほしい」「トヨタや機能という殻を破り、視野を広げてほしい」「グローバル企業の多様性を楽しみ、成長の機会にしてほしい」そういった私の想いです。

それをお伝えした上で、今年も皆さんに、昨年と同じ「3つのお願い」をしたいと思います。その上で、今年は4つ目。「ありがとう」と「笑顔」を忘れずにいてほしいと思います。

グローバルトヨタ37万人が「ありがとう」と言い合える関係になり、それぞれの国や地域で、その関係を広げていくことができれば、対立のない世界、明るい未来に近づいていけると思います。

私たちは「クルマ屋」です。

今年も、みんなで心をあわせて、それぞれの町の人たちを「笑顔」にする「もっといいクルマ」をつくろうじゃありませんか。

ありがとうございました。

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