2021.01.18
戦後初となる赤字に陥った2009年3月の新年度方針演説。当時副社長だった豊田章男が作業着で登壇し、語った言葉とその真意とは
~2009年4月1日、新年度方針演説の壇上にて~
2009年3月の連結決算でトヨタは戦後初となる赤字に陥る。連結販売台数も大幅に落ち込むという惨憺たる業績での新年度方針演説に、当時副社長だった豊田章男はスーツ姿の幹部社員が並ぶなか、作業着で登壇した。
同年6月に社長就任が内定していたとはいえ、その姿に多くのトヨタ社員が違和感を覚えたはずだ。そして発せられたのが「もっといいクルマをつくろう」という言葉だった。 そこには豊田章男の覚悟と決意が滲んでいた。
そこには師匠・成瀬弘の薫陶を受けたマスター・ドライバーとして、心からクルマを愛するカーガイ「モリゾウ」として、命を賭してきた経験に裏打ちされた「凄み」があった。
同年6月に社長就任が内定していたとはいえ、その姿に多くのトヨタ社員が違和感を覚えたはずだ。そして発せられたのが「もっといいクルマをつくろう」という言葉だった。 そこには豊田章男の覚悟と決意が滲んでいた。
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「もっといいクルマ」とはトヨタ自動車が未来を描くための指針であり軸足だ。尺度は違えどこの一言の中に、社員ひとりひとりの意識改革を求めた 実はこの言葉に説得力を持たせたのは、豊田章男が自らテストドライバーとしてハンドルを握り、真剣にクルマと向き合ってきたことを誰もが知っていたからだった。そこには師匠・成瀬弘の薫陶を受けたマスター・ドライバーとして、心からクルマを愛するカーガイ「モリゾウ」として、命を賭してきた経験に裏打ちされた「凄み」があった。
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「自分たちはクルマ屋だ。もっといいクルマをつくって、お客様に喜んでもらおう。町工場から世界規模の自動車メーカーに成長しても、それを忘れてはならない。大切にしてきたのはお客様第一の精神。目先の利益にとらわれず、足元を見直し、もう一度前を向こう。自分たちなりの歩幅で一歩踏み出せば、きっとそこには未来が拓けるはずだ」。
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世界は未曾有の混乱に瀕している。新しい生活様式、新たな価値観、加速度的に進化するテクノロジー。
それらに翻弄される今、見直すべきは本来の自分たちのあるべき姿、誰もがクルマ屋の「クルマ」に相当する、本来の仕事の「目的」かもしれない。