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イバラの道でも進むべき道とは 2023年 豊田社長年頭あいさつ

2023.01.11

何が正解かわからない。そんな時代だからこそ、トヨタの進むべき道が明確に示された。その全文を公開する。

「私の本音であり、一番の悩み」。

そんな言葉も飛び出した豊田章男社長による年頭あいさつ。それは、“キレイごと”や“ありきたりな定型文”ではない本音のメッセージであった。

1月10日、愛知県豊田市の本社には、約500人の従業員が出席。会場に入りきらない大勢のメンバーにはリモートで届けられた国内従業員へのメッセージ。トヨタが大切にすべき価値観、それを全員で再認識するために語られた内容を全文公開する。

豊田社長

皆さん、あけましておめでとうございます。こうして、皆さんと新しい年を迎えられましたことを嬉しく思います。

昨年を振り返りますと、コロナウイルスや半導体不足、ロシアによるウクライナ侵攻、南アフリカの洪水など、グローバルトヨタとして、思うように「クルマがつくれない」、「お客様にお届けできない」非常につらく、苦しい一年だったと思います。

トヨタで働く皆さんの努力に改めて感謝申し上げます。ありがとうございます。

そして、私たちのクルマをお選びいただき、お待ちいただいている世界中のお客様、お客様との絆をつないでいただいている販売店の皆様、日々の生産変動にご尽力いただいている仕入先、輸送現場の皆様、日本の自動車産業をお支えいただいている550万人のすべての皆様に心より感謝申し上げます。

本当にありがとうございます。

ロシア生産事業終了、その決断の背景

豊田社長

昨年、私が改めて感じたことがあります。それは、「トヨタはグローバル企業だ」ということです。

「何をいまさら」。そう思われるかもしれません。実は、世界の自動車メーカーを見渡しても、トヨタほど、グローバルにビジネスを展開している会社はないのです。スライドをご覧ください。

国や地域が違えば、文化も違うし、人々の暮らしも違います。道も違えば、クルマの使い方も違います。

それぞれの地域の人たちの「現実」に寄り添い、その「違い」をリスペクトし、「多様性」とともに生きていくこと。それが「グローバル」ということだと思っております。

それを改めて考えるきっかけとなったのが、「ロシアの生産事業終了」と「カーボンニュートラル」でした。

私は、社長就任以来、数々の「工場閉鎖」を決断してまいりました。いずれも、言葉では言い表せない、苦渋の決断です。

ずっと一緒にやってきた「仲間が仕事を失う」という決断です。こんなに辛いことはありません。しかし、今回のロシアは、これまでのどの閉鎖とも違っていたと思います。根底にあるのは「戦争」です。

戦争によって、クルマをつくりたくてもつくれない状況に追い込まれていきました。

その中で、ロシアトヨタの従業員は、最後まで、「もっといいクルマ」と「町いちばん」にこだわり、自分にできることを探して、頑張ってくれたと思います。

ロシアトヨタの経営陣は、最後まで、従業員の幸せを一番に考え、動き続けてくれました。私自身、ロシアで働く仲間のことを考え、眠れない日々が続きました。

その中で、私がくだした決断が「工場閉鎖」でした。そこには、2つのブレない軸がありました。

ひとつは「トヨタで働く仲間の幸せ」です。人生は会社生活だけではありません。ずっと続いていくものです。

このままでは、資金が底を尽き、退職金すら支払えなくなる。仲間のこれからの人生を考えたとき、いま撤退を決めなければならない。そう考えました。

そして、もうひとつが、世界中の「ステークホルダーの幸せ」です。

そのために、私がしなければならないことは、何があってもトヨタのブランド・信頼を守り抜く。その一点に尽きると思いました。

私の想いに共感してくれたロシアトヨタの経営陣が、一緒に働いてきた仲間、一人ひとりの言葉に耳を傾け、地域の方々に誠実に向き合ってくれた結果、多くの人が前を向いて、次のステップに進む決意をしてくれています。

すべての仲間に心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

グローバルにビジネスをするということは、世界中のステークホルダーとともに生きるということであり、トヨタが事業を展開する、その町の人々とともに生きるということです。

そして、その「真価」が問われ、「覚悟」が試されるのは、事業を終えるときだと思います。

私たちにできることは、仕事を失うことになった仲間の無念さをずっと忘れずにいること。そして、「もっといいクルマ」をつくり続けることだと思います。

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