モビリティ・カンパニーへの変革の象徴でもある「e-Palette」。社会実装に向けた取り組みの最前線について、開発責任者が語ったこととは?
Woven Cityではどんな実証実験が行われる?
e-Paletteは従来のクルマとは異なり、使う人や使われる環境に応じた用途に対応することが求められる。それゆえ、現在進めているさまざまな実証実験が重要な意味を持つと牟田主査は語る。
牟田主査
例えば宮田工場の場合は、工場という一般道からは閉ざされた広大な空間でe-Paletteがどのような役割を果たすことができるかを探るのがメインテーマです。
富士スピードウェイでは、レースイベントが開催されるときにシャトルバスとして運行しています。
お客様には車いすの方やベビーカーを利用している方もいらっしゃるので、誰もが移動の自由を享受できる社会を実現するための実証実験でもあります。
一方、建設が進められている「Woven City」。ここは人々が暮らす実証の街なので、e-Paletteがいかに人々の暮らしに寄り添える存在になれるか、その可能性を探るのが目的になります。
現在は東富士研究所でWoven Cityでの実証実験に向け、加減速やカーブを曲がるときの滑らかな走りなど、自動運転でも熟練ドライバーが運転しているかのように快適に移動できることを目指してつくり込みを行っています。
ほかにも、本社技術部の構内で従業員が利用するシャトルバスとして運行。長期にわたり走行を重ねることで、さまざまな課題を抽出しているという。
また愛・地球博記念公園、通称モリコロパーク(愛知県長久手市)では、「新しい移動体験価値創造」をテーマとする実証実験を実施(2024年1月29日〜2月5日)。
窓に透明ディスプレイ、天井にプロジェクターにて映像を投影し、臨場感あふれる立体音響システムと、それらの映像や音にあわせて振動するシートや香りデバイス、さらには乗員のジェスチャーをセンシングするカメラを装備したe-Paletteが、一般のお客様を乗せてモリコロパーク内の約2.1キロのルートを走行。
車内では「ISEKAI TRAVEL」と題された、公園内の位置や景色に連動したコンテンツを五感で体験でき、実際に試乗した子どもたちからは笑顔が溢れた。
広がるパートナーの輪とモビリティの可能性
e-Paletteの社会実装には仲間づくりも重要な課題であり、実証実験と並行して進めていると牟田主査は語る。
牟田主査
e-Paletteを活用したビジネススキームの構築であったり、アイデア抽出のためのワークショップであったり、現在さまざまなパートナーとの輪を広げています。
そのたびに私たちの想像をはるかに超えた素晴らしいアイデアをいただけるので、e-Paletteの、ひいてはこれからのモビリティの可能性がドンドン広がっていくのを感じています。
アイデアによっては、e-Paletteより大きなスペースが必要だとか、もう少しコンパクトな方がいいといった課題が出てくるのも確かです。
それもe-Paletteが存在するからこそなので、e-Paletteを起点として第2、第3のe-Paletteづくりにも活かしていきたいと考えています。
これまでもコンビニ仕様やカフェラウンジ仕様、アパレルショップ仕様など、さまざまなe-Paletteの活用例が紹介されてきた。
パートナーとはどのようなアイデアや計画が進んでいるのだろうか?
牟田主査
契約上の問題で具体的なお話はできないのですが、すでに紹介した事例のようにe-Paletteにさまざまなモノやサービスを積んで、お客様がいらっしゃるところに出向くというのが一つです。
モリコロパークでの実証実験に通じる移動価値の創造という意味で、テーマパークなどからもご相談をいただいています。
ところで、2018年のCESでe-Paletteが発表された際に、さまざまな地域でのサービス実証を目指すとアナウンスされた。開発状況はどの辺りなのだろうか?
牟田主査
e-Paletteにはさまざまな最新技術を採用しているので、市場導入した際に安心して使っていただけるよう、多岐にわたる評価や確認を進めている状況です。
まだ量産体制が整っていないのでコスト面などの課題もありますが、「モビリティの可能性を広げ、街の景色を変える」を合い言葉に一日も早い社会実装を目指してチーム一丸となって取り組んでいるので、その日を楽しみにしていてください。
後編では、トヨタ自動車九州 宮田工場での実証実験に潜入。そこで行われていたこととは?