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アジア初の乗用車専門工場 「なんでもやる」の精神と技能で歩む元・町工場の軌跡

2025.02.27

2020年から5年で15のクルマを立ち上げた元町工場。「何でもつくる」「どんなクルマでもつくる」と立ち上がった先人が築き上げたのが「多品種少量生産」だった。歴史を紐解きながら、今も脈々と受け継がれる精神、技能に迫った。

地域とともに歩む町工場

工場の正門から500mという距離にある深田山神社。地域の氏神様として親しまれるこの御社は、約60年前に元町工場の敷地内から移転したものだという。

そうしたご縁や工場と地域の結びつきを踏まえて、天井絵には歴代クラウンと深田山地区や豊田市の風景が描かれている。

元町工場とともに歩んできた石橋副工場長は、町工場の精神を忘れず、温かい場所でありたいと語る。

石橋副工場長

僕が幼稚園生くらいのころ、兄が熱を出し、母がトヨタ病院(現トヨタ記念病院)へおぶって向かったことがありました。

僕も手を引かれて歩いていたら、僕ら家族を見つけた、現場へ向かう従業員を乗せた会社のバスが近くに停まってくれて。ちょっと先にあった病院へ乗せていってくれたんです。

子どもながらに、トヨタって温かいなと思いましたね。僕は元町工場をそんな温かみのある場所にしたいですね。

地域に愛され、信頼される「町いちばん」の工場であり続けるために、元町では現在、「元町一番地活動」が行われている。公園のペンキ塗り、神社の掃除など、各部各課に代表を置き、地域貢献活動に励む。

地域への貢献は、ボランティア活動にとどまらない。例えば、道の舗装に使用するウッドチップの製造は、新事業企画部が森林の一生のサイクルを考える中で、山主の困りごとを解決したいという想いから開発・導入を進めてきた。

森林の木々は適切なタイミングで切らないと、CO2の吸収量が低下してしまう。しかし、木材価格の低さから、最近では山主が木を切らず、放置されている実態がある。

そこで、間伐材ウッドチップ舗装協会と協業し、豊田市の木でウッドチップを製作。地産地消で普及させていく活動を進めている。

地域へ広げていく一環として、元町工場内での実証も進めている。ウッドチップは保水効果が高く暑熱対策に効果的であることから、日中、人通りが多く最も日当たりの良い道に施工。

また、雑草が生えない利点から、今では愛知県内の公園や豊橋市の駅前など、草刈りで困っている場所でも活用されている。

地域に根付いた温かい工場を目指し、歩み続ける元町工場。今、描くのはどのような未来か。

石橋副工場長

多様な人が、お互いに感謝し合って称え合う。そんな場所でつくるもので世の中に貢献して、幸せを量産したい。

そして、ただモノをつくる場ではなく、ここで働く我々だけでもなく、この辺一帯の皆さんが集まってきてくれるような場所。

“元町村”とでも言うんでしょうか。そんな場所にしたいですよね。

石橋副工場長はそう語ったうえで「元町ジェラートをつくりたいですね。僕は定年後そこで働くしかないですね」と笑った。

挑戦続きの歴史を歩み続けてきた元町工場。受け継がれてきた精神と技能で、変化の目まぐるしい時代に挑み続ける。進化編にもご注目いただきたい。

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