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空気、自動販売機、食、コーヒー、教育...幸せの量産へ"発明家"たちの挑戦

2025.02.20

ウーブン・シティでの掛け算は、どんな未来を描き出すのか? 5社のインベンター(発明家)へのインタビュー、後編です。

CES2025」に合わせて発表された、ウーブン・シティで実証実験を行う5社のインベンター(発明家)。

前編は、空調機器で知られるダイキンと、自動販売機ビジネスを中核に置くダイドードリンコの取り組みを紹介した。

後編は、日清食品、UCCジャパン、増進会ホールディングス。食とコーヒー、教育がトヨタとウーブン・シティで、どう掛け合わさり、何を生み出すのか?

それぞれの担当者に聞いた。

日清食品:多様な“発明家”たちと「最適化栄養食」の有効性を実証していく

即席麺などの製造、販売を手掛ける日清食品。同社は「新たな食文化の創造」で世界の課題をスピーディに解決することをミッションに掲げ、ウーブン・シティでは「最適化栄養食」を継続的に食べている人の心身や行動の変化を捉え、その有効性を実証していく。

最適化栄養食とは、年齢や性別、生活習慣など、一人ひとりの状態に合わせて主要な栄養素がバランスよく適切に調整された食を指す。同社の「完全メシ」ブランドの商品は、最適化栄養食の研究・開発の成果の1つとして2022年に誕生したものだ。(ちなみに同社がウーブン・シティで実証に取り組むことを発表したのも同時期)

「完全メシ」は、パッケージフードを小売販売するだけにとどまらず、社員食堂でのメニュー提供やオフィスでいつでも商品を購入できるスタンド型社食を展開するなど、タッチポイントを拡大している。

ウーブン・シティでは、最適化栄養食の基準に則った料理を提供するためのキッチンやイートインスペースを備えた施設の運営とサービスの提供を検討している。

今回の実証を通じて、お客様に最適化栄養食を最大限に楽しんでもらうための体験やサービスの提供方法を探索。一連の工程を細分化し、効率化を図る過程を通じて知見を蓄え、事業還元するという狙いもある。

「どのようなプロセスを経ればお客様に喜んでいただけるか、また、お客様の満足と事業を両立させるための技術とは何か、という点についてのテストも重要」と語るのは、この実証をマネジメントする日清食品の筒井 倫太郎さん。

料理の提供やお客様からのフィードバックには、トヨタがクルマづくりを通じて培ってきた、人やモノ、情報、エネルギーなどのモビリティを活用していきたいという。

一方でインベンターやウィーバーズ(住民・ビジター)が自由闊達に議論することで、未来に向けた新しい発明につながるのではないかとも期待する。

筒井さん

年齢だけをとっても、幅広い年代の方がいらっしゃって、物事や人生に対していろいろな考えを持ち、アプローチしてきた人たちと、ある種の共同体として一つの場でコミュニケーションをとることができます。

いろいろな会話が飛び交えば良いと思っていて、メーカーとユーザーのような一方通行のやり取りではなく、(日常の)会話の中から思わぬ発見が生まれる環境があれば、すごく良いなと思っています。

筒井さんがウーブン・シティの存在を知ったのは、日清食品に転職する前の2022年。最初は「月面に基地をつくっているイメージ」だった。スマートシティとも違うゼロから街をつくっていく様子に、「いろいろなことができるんじゃないか」と可能性を感じていたという。

転職後すぐに「期待していた」実証実験の担当に。現場確認のために建設途中のウーブン・シティを訪問した際は、実証実験のイメージを膨らませつつ、「空飛ぶタクシーが行き交うのかな」、「e-Paletteやいろいろなモビリティが走るんだろうな」と想像を広げていた。

今回竣工したフェーズ1エリアでは、最終的に360名程度の入居を想定しているが、筒井さんはすでにフェーズ2以降、もっと多くの住民が集まる街の姿を思い描く。

筒井さん

「好きなものを、好きなときに、好きなだけ食べられる」ことがHuman Well-being(心身ともに健康で社会的、経済的にも満たされた状態)につながり、人生を豊かにしていく。

それを実現するための具体的なアプローチとして、主要な栄養素がバランスよく適切に調整された「最適化栄養食」というコンセプトが生まれました。

だからこそ、私は食の立場から、ポジティブな影響を個人やコミュニティにもたらすことができると良いなと思っています。ですが、街の規模が大きくなるとフェーズ1以上にいろいろな価値観を持った多様な人が入ってくる状況が想像されます。

そこで次にどのような化学反応が起きるのか、規模や状況に応じて実証実験の内容を迅速かつ柔軟に変えなきゃいけないと思っています。テストコースの街として高速で実証実験を回すことができるのもウーブン・シティの大きな魅力だと思っていて、街の成長とともに楽しみは無限に増えていくんだろうなと思います。

そういう意味ではいろいろな人を入れてほしいと、ウーブン・バイ・トヨタ(WbyT)さんにお願いしたいところです。

多種多様な価値観をお持ちの方が(集まると)、当然さまざまな課題も生まれるとは思っていますが、発明とはそういう所から生まれるんじゃないかと。むしろ、シナジーの方が大きいだろうと思っていて、何が出てくるか私自身も楽しみにしているところです。

ウーブン・シティで出会うさまざまな発明家や住民との交流を楽しみにしている筒井さん。「どんな人に会ってみたいですか?」という質問に、笑顔で答えてくれた。

筒井さん

会社としてはシナジーが生まれそうだと想像しやすい分野から対話や協業の検討を始めていくのがセオリーだと思うのですが、あまりそれだと面白くないと思っています。

それはウーブン・シティらしくないなと思っていて、それこそ全然(日清食品と)関係のない、例えばロケットをつくる人たちと話して、「料理をつくるプロセスでも使えるんじゃないか」みたいな話が出た方が新規事業らしいのではないでしょうか。