トヨタイムズスポーツ
2024.11.29
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"負け嫌い"が奇跡を起こした『ラリージャパン2024』感動の4日間!

2024.11.29

最後に大逆転をおこし、マニュファクチャラーズタイトルを獲得したTOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチーム。「ラリージャパン2024」の4日間をハイライトでお届けする。

2024年1月にモンテカルロからスタートした、ラリーの最高峰「世界ラリー選手権(WRC)」。全13ラウンドで競われるシーズン最終戦『フォーラムエイト・ラリージャパン2024』は、11月21日〜24日、愛知と岐阜を舞台に行われた。既報の通り大逆転でシーズンを締めくくったTOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチームが、どのように戦い勝利したのか。4日間のラリーの模様をハイライトでお届けする。

その差は15PT! 最終戦までもつれ込んだタイトル争い

ターマック(舗装路)やグラベル(未舗装路)はもちろん雪道など、世界の様々な路面を股にかけ13のラウンドで競う「世界ラリー選手権(WRC)」。

愛知県の豊田スタジアムを拠点に、北は岐阜県にまでおよぶエリアで行われる「ラリージャパン2024」はWRCの最終戦。モリゾウこと豊田章男会長が「ラリーが文化として根付いていくこと」を目指して始まったイベントは早くも3回目となる。

TOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチーム(以下、トヨタ)は今年、WRCのためだけに製造したラリーカーでタイムを競うトップカテゴリの「Rally1」に、昨年大会の覇者であるエルフィン・エバンスをはじめ、セバスチャン・オジエ、勝田貴元らがドライブする3台のトヨタGRヤリスRally1ハイブリッドを投入した。

他にもHYUNDAI SHELL MOBIS ワールドラリーチーム(以下、ヒョンデ)とM-SPORT FORD ワールドラリーチーム(以下、フォード)が参戦。

ドライバーズタイトルはラウンド12のセントラル・ヨーロピアン・ラリーを終えた段階ですでに、ヒョンデのティエリー・ヌービルとオィット・タナックの二人に絞られた。今回のラリージャパンで首位が確定する形だ。

豊田スタジアムを拠点に、愛知と岐阜を股にかけて開催される

一方で、メーカーの順位であるマニュファクチャラーズタイトルはヒョンデが526ポイント、トヨタが511ポイントと、最終戦までもつれ込んだ戦いにラリーファンの注目が集まった。

トヨタは自力優勝の可能性こそ残されているものの、逆転するには大会4日間を通してのチームとしての好成績が必要。厳しい状況のなか注目されたのが、地元愛知県出身で日本人唯一の現役WRCドライバーである勝田貴元の走りだ。

絶対完走というチームオーダーを背負う勝田貴元は、「レッキ(試走)でも沿道で多くのファンの方々が応援してくれ、年々盛り上がっていることを感じた。自分にとっては来季につながる大切なラリーであるだけでなく、チームにとってタイトルがかかっている。獲るべきところでポイントを獲り、今後につながる走りをしたい」と意欲を見せた。そんな勝田選手のコメントは、53:18から。

今季勝田貴元が表彰台に上がったのは、第3戦のサファリ・ラリー・ケニアでの2位のみ。しかし、昨年のラリージャパンでは猛烈なプッシュで10のSSでベストタイムを叩き出し、総合で5位に入る冴えた走りでファンを魅了。一年の経験を地元で披露できるラリージャパンに賭ける思いは計り知れない。

ヤリ=マティ・ラトバラ代表は大会前に「我々の目標はマニュファクチャラーズタイトルを獲ること。それはラリーに勝つことを意味し完璧な週末を過ごす必要がある。逆転は困難だが、全員がベストを尽くせば不可能ではない」と意気込みを語る。

勝田選手については「貴元は昨年、最速のドライバーであることを示した。シーズンの経験を通して彼は成熟し結果を出す方法を学んだので、トップ争いに加わると確信している」と評価した。ラトバラ代表のコメントは、51:42から。

ヒョンデがポイントを死守しマニュファクチャラーズタイトルを獲得するのか、トヨタが猛プッシュで逆転となるのか、3年目となるラリージャパンは、これまでにない張り詰めた雰囲気のなかその幕を開けた。

【DAY-1】よりテクニカルに進化した豊田スタジアムの特設コース

ラリージャパンのDAY1となる11月21日(木)は、本大会の拠点である豊田スタジアムでスーパースペシャルステージ「SS1 豊田スタジアムSSS」が行われた。

昨年と同じくスタジアムのグランドエリアをアスファルトで舗装し全長2.15kmのサーキットコースを設置。1台ずつ走る通常のSSと異なり、2台が同時にスタートする“デュアルマッチ”方式を採用しているのが大きな見どころとなる。

今年は新たに360度回転するドーナツターンが追加され、立体交差上のジャンプセクションの傾斜が緩やかに変更された。SSSを前に行われたコースウォークには、過去4度のオリンピックに出場した元ショートトラック選手で、アスリートキャスターの寺尾悟さんも参加。

森田京之介キャスターとともにコースウォークを体験する寺尾悟アスリートキャスター

「ラリーカーで走るとスピードが速すぎて狭く感じるはず。また、ジャンプセクションではドライバーには頂点の向こう側は見えていない。どこまで突っ込めるかがポイントですね」と、今年ラリーチャレンジ(ラリチャレ)でラリーの世界も体験した寺尾さんならではの視点で解説してくれた。寺尾悟アスリートキャスターによるコース分析は、1:00:58 から。

今年新設されたドーナツターンを旋回するトヨタGRヤリスRally1ハイブリッド

ラリー1最初の走者であるオジエ(トヨタ)とフルモー(フォード)がコースに現れると、会場の熱気も高まり始める。このデュアルはフルモーがその日のトップタイムで勝利した。

エバンス(トヨタ)とタナック(ヒョンデ)のマッチに続き、現在選手権首位のヌービル(ヒョンデ)と勝田貴元(トヨタ)が登場。地元愛知県出身の勝田が1.4秒差でヌービルを下すとその日一番の歓声があがった。

初日の順位はフォードのフルモーがトップ。ヒョンデのタナックが続き、勝田貴元は3位。オジエとエバンスが4・5番手と、トヨタ勢はまずまずのスタートを切った。

【DAY-2】ラリーカーのセッティングに明るい兆し

11月22日(金)はフルデイ初日。いよいよ山間部のSSも入る本格的なラリーがスタートし、外国勢から「まるでタイムトンネルのよう」と評される「SS2/SS5伊勢神トンネルSS」を皮切りに、「SS3/SS6稲武設楽SS」「SS4/SS7新城SS」「SS8/SS9 岡崎SSS」が行われる。

DAY2ではラリージャパンの人気SS「伊勢神トンネル」も登場

特設コースで行われたDay1の「SS1 豊田スタジアムSSS」とは対称的に、ここからはラリーの特徴でもある公道を中心に競技が行われる。SSとSSをつなぐタイムを競わない「リエゾン」と呼ばれる区間では、一般車に混じって交通規則に従って走るラリーカーを間近で見ることができるのもラリーの醍醐味の一つだ。

紅葉の美しい林間コースの「SS3稲武設楽SS」には寺尾悟アスリートキャスターも駆けつけ、「立ち上がりが速い!タカ頑張れ!」と勝田貴元を応援。「初日にスタジアムで観戦したSSSも特別な経験でしたが、目の前を一瞬で過ぎ去るSSも全く違う魅力がある。ラリー観戦という新しい楽しみを発見しました」と、初めてのSS体験を語ってくれた。

勝田貴元は序盤のSS2ではスローパンクでロスを喫したが、「SS8岡崎SSS」では2位のタナックに0.6秒差をつける圧倒的な走りで今回のラリーで初のステージウインを獲得。続くSS9も連取し総合でも4位へと浮上した。

前半戦を終え、トヨタのラリーカーにも明るい兆しが現れる。昨年の覇者エバンスの進言でSS7の直前にデフのセッティングを変更したところ、手応えを感じたためさらにベストを追求することに。トヨタGRヤリスRally1ハイブリッドがより最適化されることで、週末のラリーでの逆転優勝へ望みをつないだ。

自力優勝が消えるも逆転は諦めない アスリートたちも駆け付ける 

日本の原風景ともいえる街道を走るビジュアルで世界的にも知られる「恵那SS」を含むDAY3。

ラリーに先立って豊田スタジアムのイベント広場にある特設ステージで行われたトークショーには、モリゾウこと豊田章男会長が登場。

クルマ雑誌ベストカーの公開取材を受け、往年のラリーシーンを沸かせた名車セリカの復活について聞かれると「セリカの話をすると執行部にしかられる」と笑いながらも、中嶋裕樹副社長の「セリカ、やっちゃいます!」の言葉に会場は熱狂する場面も。

「トヨタは最後の一秒まで、クルマをより良くなるよう努力をする会社。ときには失敗もしますが、そのときは立ち止まってすぐに改善する。そういった努力が経験になるので応援してほしい」と豊田章男会長は締めくくった。公開取材の様子は、21:39から。

DAY3は、豊田スタジアムから北上し岐阜県内のSSに突入。SS10の笠置山SSからSS11根の上高原SS、SS12恵那SSを午前と午後のループで2回アタックし、SS16では豊田スタジアムに戻りSSSを行うというスケジュール。

SS12がキャンセルされるアクシデントもあったものの、ラリーはDAY3を終えヒョンデが暫定550pt、トヨタが暫定539ptと、その差は11ポイント。最終日にトヨタ勢がフルポイントを獲得して詰められる差は10ptとなるため、自力でのタイトル獲得の可能性は消滅してしまった。(一時3位まで上がったのが落ちての5位)

優勝争いの緊迫が高まるなか、トヨタチームに元気を与えてくれたのが会場に駆けつけてくれたトヨタアスリートたちだ。

とくに11月は、名古屋グランパスがルヴァンカップを制覇、レッドクルーザーズは社会人野球日本選手権で優勝。そして、TOYOTA GAZOO Racing WECチームが6年連続でWECのマニュファクチャラーズチャンピオンを獲得と、今季波に乗るトヨタアスリートたち。彼ら彼女らの声援により“ワントヨタ”でラリージャパンを盛り上げた。

トヨタアスリートたちからのバトンを受け継いだTOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチームは、最終日へ逆転の望みをつなげていく。

ONE TOYOTA!アスリートトークショー
陸海空のレースを極めるアスリート

【DAY-4】奇跡の逆転優勝へ!

最終日となるDAY4の出走前、サービスパークでモリゾウは「我々はマニュファクチャラーズタイトルを獲るためにここに来た。いいことも悪いことも起こるかもしれないが、頑張り、そして楽しみましょう」とスタッフを激励した。

最終日の朝にサービスパークを訪れ、TOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチームのスタッフを激励する豊田章男会長

ラリーが大きく動いたのは、この日最初の「SS17額田SS」。土曜日までトップを走っていたヒョンデのタナックが、ゴール直前にクラッシュしてしまい痛恨のリタイアとなる。

土曜日までのポイントを獲得するには完走が必須であるため、ラリー・フィンランドではロバンペラが、セントラル・ヨーロピアン・ラリーではオジエがいずれもトップのままリタイヤし大きくポイントを失い、トヨタ勢も苦汁をなめた経験がある。

この時点で、タナックが土曜日までの順位で獲得した18ポイントが消失し、ヒョンデのヌービルが初のドライバーズタイトルを獲得。そして、マニュファクチャラーズタイトル争いは、ヒョンデ暫定540ptに対しトヨタ暫定544ptと逆転する結果に。

その後、ラリーは熊野神社の眼の前をラリーカーが直角にターンする名物ポイント「神ジャンクション」を擁する「SS18三河湖SS」へ。日本ならではの穏やかな田園風景の中、ラリーマシンが駆け抜け、多くのファンを魅了した。

ラリーファンから「神ジャンクション」の愛称で呼ばれる熊野神社前の直角ターン

穏やかなSSの風景とは裏腹に、SSのたびにポイントは変動。豊田スタジアムで行われたSS20終了時点のマニュファクチャラーズはヒョンデ・トヨタともに553ptとイーブンに。決着は最終ステージの「SS21三河湖パワーステージ」にまでもつれ込むという展開となった。

SS20終了時点でマニュファクチャラーズポイントはイーブンに並ぶ

そしてついに迎えた今年最後の「SS21三河湖パワーステージ」。パワーステージとは、特別ポイントが加算される特別なSS。ここでトヨタ勢は、ベストタイムをマークしたオジエがトップ、エバンスが3位となり合計8ポイントを獲得。この瞬間、TOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチームはマニュファクチャラーズチャンピオン4連覇を達成した。

三河湖SSで行われた暫定表彰式にかけつけたモリゾウもチームを祝福

【ラリージャパン2024のリザルト】
1:エルフィン・エバンス/スコット・マーティン
2:セバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ
3:エイドリアン・フルモー/アレクサンドル・コリア
4:勝田貴元/アーロン・ジョンストン
5:グレゴワール・ミュンスター/ルイ・ルー
6:ティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーデガ

【WRC2024 ドライバーズランキング】
1:ティエリー・ヌービル(242pt)
2:エルフィン・エバンス(210pt)
3:オィット・タナック(200pt)
4:セバスチャン・オジエ(191pt)
5:エイドリアン・フルモー(162pt)
6:勝田貴元(116pt)
7:カッレ・ロバンペラ(114pt)
8:グレゴワール・ミュンスター(46pt)
9:ダニ・ソルド(44pt)
10:サミ・パヤリ(44pt)

【WRC2024 マニュファクチャラーズランキング】
1:トヨタ(561pt)
2:ヒョンデ(558pt)
3:フォード(295pt)

三河湖の暫定表彰式でモリゾウは「残念なことですがタナックのリタイアで局面が変わりましたが、ヒョンデにもおめでとうと言いたい。苦しいシーズンでしたが、みな諦めないで戦いマニュファクチャラーズタイトルを継続して獲得できたことはすごいこと」とコメント。その様子は、43:45から。

トヨタイムズスポーツの生放送に駆けつけてくれた勝田貴元は「ラリーは最後まで何があるかわからない。僕もチームに支えられ苦しいシーズンを乗り越えることができた。その最後にチームタイトルチャンピオンが取れて良かったです」と、苦しい局面もあった今シーズンを振り返った。勝田選手のコメントは、1:01:39から。

こうして戦いが終わり、セレモニアルフィニッシュのためラリーカーは豊田スタジアムに帰投した。

延べ54万人を超えるファンに見守られ、劇的な最終日の逆転というドラマを見せてくれた2024年のラリージャパン。トヨタのマニュファクチャラーズタイトル4連覇は、ドライバーとコ・ドライバーだけでなく、マシンを仕上げたエンジニア、壊れたマシンを直し整備するメカニックなど、チーム全員が“ワントヨタ”の精神で勝ち取ったと言えるだろう。

WRCは今大会でハイブリッドシステムを搭載したRally1カーが最後になる。早くも1月23日に伝統のモンテカルロで2025年のシーズンをスタートさせるラリーの世界からますます目が離せなくなりそうだ。

そして、見ればもっとラリーを好きになる。“ワントヨタ”で勝利を掴んだTOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチームとラリージャパン2024の裏側を知ることができる関連動画はこちら!

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