ダカールラリーで11連覇を達成した三浦昂選手が、「間違いなく過去1番ハード」と語る驚くべき理由とは? 会長との約束を胸にその全貌を語り尽くした!
2月9日のトヨタイムズスポーツは、サウジアラビアで開催された「ダカールラリー2024」を特集した。市販車部門で11連覇を達成したチームランドクルーザー・トヨタオートボデーから、優勝ドライバーの三浦昂(あきら)選手が生出演。「間違いなく過去1番ハードでした」というランドクルーザー300 GR SPORTとの15日間を、現地の美しい写真と三浦選手の滑らかなトークで振り返った。
市販車はゴールするのも大変な過酷さ
「時計の針だけが進んでいくのに、景色は変わらないという、不思議な世界でした」
ナビゲーターとしてダカールラリーを2007年と09年に制覇し、ドライバーに転向後も18、21、22年と優勝を重ねてきた三浦選手でも、今回の過酷さは今まで経験しなかったレベルだという。
アラビア半島を東西に往復するコースは総距離が約8,000kmで、競技区間のスペシャルステージは約4,700km。数字は昨年までと差はないが、難易度が年々上がっており、実際に改造車部門と市販車とのタイム差は大きく広がっている。
最新技術を取り入れた改造車に合わせたコース設定で、市販車にとってハードルが上がっていると三浦選手は分析。「毎日ゴールすること自体が大変。だからこそ完全走破したいという夢ができたんですけどね」と語る。
砂丘が続く48時間クロノステージ
ハードさを象徴するのが、今年から新しく設けられた48時間のクロノステージ。今までは砂丘のエリアは1日に数カ所だったのが、550kmを延々と砂の世界が続いた。壁のようにそそりたつ砂の山などを乗り越え、「乗っている時間が12時間ぐらい。(集中力が)もつかな? と初めて思った」という。
ラリー中は、先行するクルマの轍(わだち)がコースの目印になるが、市販車部門のトップを走る三浦選手にとって、先を行く改造車の轍を追っても市販車が走破できるとは限らない。自分たちが通れる場所を開拓しなければならず、三浦選手は「今回、全競技者の中で1番距離を走った選手だと思います」と自負する。
ステージの1日目は、キャンプで食事を終えると、寝落ちしてしまったそうだ。クロノステージ終了後、どことなくぼうぜんとした表情の三浦選手の現地インタビューと、クロノステージの本人解説は17:43から。
クルマづくりの最前線での進化
過酷なラリーを克服するための工夫の一つが、昨年から導入されたサスペンションシステムの「E-KDSS」。 固い路面と悪路でセッティングを切り替えることができる。詳細は前回のダカールラリー特集を見ていただきたい。
今回、三浦選手ともう1人のドライバーでは走行スタイルの違いにより「E-KDSS」のセッティングが異なっていた。「両パターンを試したことによって、新たに分かってくることがあるんです。ランクルはいろんなユーザーさんがいろんな使われ方をする中で、分析にも使えるデータになるんじゃないかな」と三浦選手。
タイヤも、ブロック(表面の突起)を浅くすることで、砂をしっかりつかむ効果があったそうだ。「タイヤメーカーのエンジニアさんも、ショック(アブソーバー)のエンジニアさんも、みんなすごい。クルマ全体で最も効率良くエネルギーを吸収できて、かつパンクしないラインがどこかというのを、お互いに情報交換しながらベストチョイスを見つけていってくれたんですよ」と振り返る。
亡きパートナーから学んだこと
今年のダカールラリーは、三浦選手にとって大きな変化があった。ずっとナビゲーターを務めてきたローラン・リシトロイシターさんが昨年4月に事故で亡くなったのだ。パートナーへの想いをこう語る。
「いろんな悲しさやつらさもあったんですけども、彼から学んだことを自分1人でちゃんと形にできなきゃっていう気持ちがすごくあったんです。彼って、苦しいことがあったり難しいときがあったりトラブルがあっても、いつも毎日を同じ気持ち同じテンションでということをやってたんで。それがプロフェッショナルなんだということを改めて感じたので、自分がそれをやるんだという気持ちが大きかったですね」
ローランさんとの約束、新たに相棒となったマイヨール・バルべ選手との交流などを三浦選手が語る場面は39:43から。
豊田会長との約束、12連覇へ向けて
レーシングスーツが似合う三浦選手は、実はトヨタ車体の広報室に所属する社員ドライバーでもある。ダカールラリーの模様を現地から発信する役割や、ドライバーとして得た経験や気づきなどを直接関係者に伝える役割も担う。帰国後はさっそくランクル開発陣への報告を行い、来年のダカールラリーや未来のクルマづくりに向けて動き出している。
そして来年のダカールラリーは、チームが豊田章男会長との約束を果たす年だ。12連覇が約束であることを、三浦選手は「1日たりとも忘れたことないですよ」。その約束の経緯を三浦選手が話す、過去の放送のプレイバックは46:42から。
当の豊田会長からは、生放送中に「11連覇おめでとう」「いいクルマ作り、ダカールでも、やっている、、ありがとう」などのコメントが寄せられ、三浦選手は12連覇へのプレッシャーをいい意味で感じていた。
今年のダカールラリーの大変さに「もうおなかいっぱいです」と言っていた三浦選手だが、12連覇を達成したら「また20連覇まで頑張ります」と、やる気十分。過酷な大自然に挑み続ける選手たちとクルマの進化に、これからも期待したい!
毎週金曜日11:50からYouTubeで生配信しているトヨタイムズスポーツ。次回(2024年2月16日)は、パラアルペンスキーを特集する。7年ぶりの日本開催となるワールドカップを、札幌で現地取材。大回転と回転に出場の森井大輝選手や、海外のトヨタアスリートの結果をお届けする。ぜひ、お見逃しなく!